メラノーマは早期に発見できれば治療の選択肢が広がり、良好な経過が期待できる皮膚がんです。初期段階では普通のほくろやしみと見分けがつきにくいことがありますが、注意深く観察することで特徴的な変化を捉えることができます。ここでは色や形に現れる初期サインと、自覚症状が乏しい理由について解説していきます。

監修医師:
本木 智輝(医師)
新潟大学卒業
日本医科大学皮膚科助教
メラノーマの初期段階で現れる皮膚の変化
初期のメラノーマは一見すると普通のほくろやしみと区別がつきにくい外観を示すことがあります。しかし、注意深く観察すると特徴的な変化が認められる場合があり、これらのサインを見逃さないことが早期発見につながります。
初期に気づきやすい色や形の特徴
メラノーマの初期段階では、色や形に特徴的な変化が現れることがあります。良性のほくろは通常、均一な茶色や黒色をしていますが、メラノーマでは一つの病変の中に茶色、黒色、青色、赤色、白色など複数の色が混在することがあります。また、境界が不明瞭でにじんだような輪郭を示したり、形が左右非対称になったりする傾向が見られます。
大きさについても注意が必要です。直径6mm以上の色素斑は注意深く観察する必要があるといわれていますが、6mm未満であってもメラノーマの可能性は否定できません。小さくても形や色に変化が見られる場合は専門医への相談をおすすめします。
自覚症状が乏しい理由と注意点
メラノーマの初期段階では、痛みやかゆみといった自覚症状がほとんど現れないことが多く、これが発見の遅れにつながる要因の一つです。皮膚の表層で発生するメラノーマは、神経を刺激する物質を放出しにくいため、不快感を伴わずに静かに進行していきます。
このため、見た目の変化だけが唯一の手がかりとなることが少なくありません。日常生活の中で皮膚の変化に気づきにくい背中や頭皮、足の裏といった部位は特に注意が必要です。家族やパートナーに見えにくい場所を確認してもらうことも有効な方法といえるでしょう。
また、稀に初期段階でもかゆみや違和感を訴える患者さんもいらっしゃいますが、これらの症状だけではメラノーマと断定することはできません。いずれにしても、皮膚の変化を感じたときは自己判断せず、皮膚科の専門医による診察を受けることが大切です。早期発見できれば治療の選択肢も広がり、予後も良好になる傾向があります。
まとめ
メラノーマは早期に発見できれば治療可能な疾患です。自覚症状に乏しく見逃されやすいという特徴を持つメラノーマですが、皮膚の変化を注意深く観察し、少しでも気になる点があれば専門医に相談することで、早期発見につなげることができます。爪の縦線や皮膚のほくろの変化、特に短期間での急速な変化や出血といった症状は重要なサインです。ABCDEルールを参考にしながら定期的に自己観察を行い、見えにくい部位は家族の協力を得て確認することが推奨されます。紫外線対策などの予防とともに、リスク因子を持つ方は定期的な専門医による検診を受けることで、メラノーマの早期発見と適切な治療につなげていきましょう。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス「皮膚がん」
日本皮膚科学会「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン」
日本皮膚悪性腫瘍学会
慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト「メラノーマ(悪性黒色腫)」

