明日が来ることは当たり前ではない
編集部
病気になって学んだことなどあれば教えてください。
マリンさん
今日が終われば明日が来ると当たり前のように信じていましたが、病気に限らず、明日が来ることは当たり前ではないのだと実感しました。病気は誰でもなる。だからこそ、定期的に検査を受けて進行する前に対処する。「ならないだろう」ではなく、「なるかもしれない」というマインドセッティングが大切だと学びました。
編集部
普段の生活で気をつけていることはありますか?
マリンさん
腸に負担をかけないように「一度に30回噛みなさい」と主治医に言われています。もともと体に悪い生活はしていなかったので、発症後も特に生活スタイルは変わりません。あえて言えば、疲れて免疫を下げることがないように残業は控えめにしています。そして、定期検査だけは言われた日に必ず受けています。
編集部
治療するうえでのマリンさんの原動力は何でしょうか?
マリンさん
治療中、ふと保護犬の里親募集サイトを開いたところ、最初に見た写真が亡くなった愛犬ルピアにそっくりで一瞬息をのみました。「犬は自分が生きている間、幸せに暮らした飼い主のところに次の子を連れてくる」という言葉を思い出しました。2回目の入院の数日前で手術が成功するかもわからないので悩みましたが、急いで保護主さんに連絡を取り、入院前日に会いに行きました。そこからは、早く元気になってこの子を迎えに行きたいという一心で、手術翌日から一生懸命リハビリに励みました。幸い合併症も起こさず予定通り2週間で退院でき、その翌日から今日までずっと一緒に暮らしています。今思えば、私を心配したルピアが与えてくれた子だったのかもしれません。
編集部
お母さまの存在も心の支えとなったようですね。
マリンさん
はい。不器用で普段あまり気持ちを表現しない母が、電話で「ずっとそばにいるから大丈夫よ」と言ってくれたときには深い愛情を感じました。手術前に母に会いに実家へ帰ったのですが、神戸に戻る日にお弁当を作って持たせてくれました。母は手があまり動かず、握力がないので、うまくおにぎりを握れないのですが、一生懸命作ってくれました(写真)。その写真を病室に飾って、毎日それを見ながら自分を励ましていました。やはり母親は偉大です。普段連絡を取らない姉も頻繁に連絡をくれて、家族ってすごいなと感じました。
編集部
今後の目標などあれば教えてください。
マリンさん
病気の面では、完治と言われる5年を無事にクリアすることです。毎日一生懸命仕事をして、職場にも恩返しをしたいです。プライベートでは、以前大学で講師をしていたので、そのときからの書きかけの論文を研究仲間の先生と共著で仕上げること、絵本を一冊自費出版することです。文章は完成しているのですが、イメージに合う挿絵を描いてくれる人が見つかっていないので探しています。
編集部
医療従事者に期待することはありますか?
マリンさん
私は本当に人に恵まれていて、出会った医師や看護師さん、PTさんも素敵な人たちばかりでした。みんな優しくて一生懸命で大好きな病院でした。医療に携わるというのは、責任が重く心身共にハードで大変な仕事ですが変わらずにいてほしいです。そして、自分の生活も大切にして、幸せでいてほしいですね。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
マリンさん
大切な存在がいるのであれば、まずは自分が元気でいないと守ってあげることはできません。また、「もしも」のときには残された人が困らないように、十分な準備をしてあげてください。自分がこの世界に存在しなくなることを想像するのは容易ではありませんが、目をそらして後悔するより真っ直ぐに向き合って考えたほうがよいと思います。 病気と闘うことが「善」のような空気感がありますが、闘いたくない人もきっといます。本人が望む治療方針を受け止めてあげることが重要だと感じます。
編集部まとめ
「もう少し早く検査をしていれば…」と、マリンさんが言うように、1日でも早い病気の発見がその後の生活に大きな影響を及ぼします。特に大腸がんのような症状が出にくい病気は、定期的な検診が大切です。そして、マリンさんの経験談から、周りの対応がいかに闘病者に影響するのかということも学ばせてもらいました。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

