
映画好きで知られるお笑い芸人・加藤浩次と映画ライター・よしひろまさみちが、おすすめ作品を語り合う「加藤浩次とよしひろのサタデーシネマ」(毎週土曜朝8:00-11:00、BS10)。12月20日(土)の放送では、2000年製作の超大作「パーフェクト ストーム」が取り上げられる。実話をもとにした海洋パニック映画として知られる本作だが、25年近い時を経た今、2人の視点から新たな側面が浮かび上がった。
■“ヒーローイズム”は時代の産物か?今だからこそ味わえる違和感
本作は製作費約150億円が投じられたアメリカ・ドイツ合作の映画で、ノンフィクション小説を原作とした実話ベースの物語だ。ジョージ・クルーニー演じる船長ビリーが、通称“パーフェクトストーム”と呼ばれる未曾有の自然災害に巻き込まれる姿を描く。
鑑賞後、加藤は「誰に感情移入しているかによって、随分この映画は変わるなと思う」と率直な感想を語る。一方、公開当時を振り返ったよしひろは当時の印象について「CGの顔見せ映画程度にしか捉えられなかった」と明かした。しかし今あらためて観直すと「人間ドラマがエグい」など評価が一変すると絶賛。加藤もこれに呼応するように「キャラクターがしっかり描かれており、役者さんも素晴らしい」と、ドラマ性の強さを評価した。
番組では、ジョージ・クルーニーのキャリアにも話題が及んだ。公開当時のクルーニーは映画出演こそあったものの、主戦場はテレビ。現在のように映画とテレビを俳優が自由に行き来する文化はまだ根付いておらず、“テレビ俳優”はどこか格下に見られる時代だったという。
その流れを大きく変えたのが、ドラマ「24」の世界的ヒットだ。お茶の間での人気を映画に持ち込めるのではないか、という思惑からクルーニーのキャスティングが決まった背景が語られた。またボビー役のマーク・ウォルバーグがもともとはアイドル的存在だったことや、クルーニーの推薦で起用が決まったという裏話も披露される。
これらのエピソードを受け、加藤は「ジョージ・クルーニーってプロデューサーの素質もあるんだよな」と感心しきり。さらにクルーニー作品で一番好きな映画として「フロム・ダスク・ティル・ドーン」を挙げてアウトローな雰囲気に言及すると、よしひろも「今のジョージ・クルーニーからは考えつかないですよね」と時代によるイメージの変化に話を弾ませた。
一方で加藤が本作に対して唯一疑問を呈したのが、ジョージ・クルーニー演じる船長の暴走だ。「たとえば指揮官の暴走を描いた戦争映画のように、人間って欲によってここまでなってしまう、教訓めいた映画だったらわかる。でも“パーフェクトストームと戦ったんだ感”というのが、今の時代とはズレてるなと感じた」と、その違和感を吐露した。
よしひろもこの意見に同意しつつ、「当時のトレンドですね。パニックものとか、自然災害ものは稼げるジャンルだった。でもヒーローイズムに浸り過ぎかな、と思う」と分析。当時は21世紀を目前に控え、映画界全体が前向きで力強い物語を求めていた時代背景があったという。
よしひろは、「今、作るんだとしたら中盤ぐらいで生残された人がトラウマに苦しむ、みたいなところまで描くと思う。でも、これは当時の映画のトレンドだったと思っていただければ」と補足。価値観や時代性の違いを咀嚼しながら観ること自体が、映画の新たな楽しみ方になるのではないかと締めくくった。
■「パーフェクト ストーム」ストーリー
1991年10月。マサチューセッツの港町グロースターから、ベテラン漁師のビリーを船長に、6名を乗せた漁船アンドレア・ゲイル号が出港。不漁続きだった彼らは、今度こそは大漁で帰港するという決意を胸に秘めていた。しかし、いつもの漁場では成果が上がらず、そのためビリーはクルーの反対を押し切り遠方の漁場まで遠征。結果、見事に大漁を成し遂げるが、喜びに勇んで帰路についた彼らの前に未曾有の大嵐が発生していた…。

