
コミックの映像化や、小説のコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、ヤングキングで読切掲載された南賀なんさんが描く『東京アネクメネ』をピックアップ。
南賀なんさんが11月25日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、7.2万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、南賀なんさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
■マッチングアプリを使う理由

失恋した女性は、そのショックから自ら命を絶とうと決意する。しかし、処女のまま死ねない、と勢いで出会い系のマッチングアプリに登録。短期間で100人以上とマッチングしている男性・樋下とすぐに会うことになった。
実際に樋下に会ってみると、アプリの写真より真面目そうな男性で、とり天の美味しい居酒屋へ連れて行ってくれる。その後2軒目へ行っても始終礼儀正しい彼は、一向にホテルには行こうとしない。
ようやくホテルの前を通るも「駅までお送りしますね」と全くその気を見せない樋下に、思わず本音を叫んでしまう。涙ながらに想いをぶつけてくる彼女に、樋下は冷静に「死ぬのをやめたらいいんじゃないでしょうか」と言う。
妙にしっくりときた彼女は冷静さを取り戻し、彼がなぜマッチングアプリを使っているのかを聞くことになる…。
作品を読んだ読者からは、「妙なスッキリ感のあるいい漫画でした」「ショートストーリーで映像化してほしい」「オシャレ短編小説見てる気分だった」「良作すぎて心にきた」など、反響の声が多く寄せられている。
■作者・南賀なんさん「私の漫画が少しでも生き抜く糧になればいいなと思います」

――『東京アネクメネ』は、どのようにして生まれた作品ですか?きっかけや理由などをお教えください。
当時自分は地元に住んでいまして、東京の友人達に会いにちょくちょく東京に遊びに来ていました。その時に感じた”東京”という街の異質さ、今まで住んできた地方の町との何か決定的な違いみたいなものが出発点だったような気がします。あとは終盤に男性(樋下)が語る人生観は自分自身が考えていた事でして、それを何らの形で出力したいという目的もありました。あとは途中に出てくるぼったくりのお店は実際に入った店でして….その時の飲み代を原稿料に変換したい気持ちもありました。
――本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
ちょうど本作の原稿に入るタイミングで上京しまして、ちゃんと実物の東京で資料撮影をして執筆しました。舞台描写にリアリティ、生々しさ、湿度感などがないとかなり嘘っぱちになってしまうなと思っていたので、そこがしっかり描けてよかったなと思っています。あと序盤は渋谷なのに途中から新宿の街並みに変わっている作者の適当さ加減にも注目です。
――今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
「セックスわい!!!」ですかね…こんなド直球なセリフを書く機会はあまりないので面白かったです。あとそのあとの「死ぬのやめたらいいんじゃないでしょうか」もだいぶおとぼけたセリフでいいなと思います。余談ですが、自分はプロットをあまり細かく書かずにいきなりネームを描き始めるので、死のうとしている女性に対してかける言葉に困った記憶があります。こういう時に変に理屈っぽい答えを出すのではなく、死角からの不意打ちのような気の抜けた言葉が出てきたのはよかったなと。
あと本当にツイッターがなくなったのはびっくりしました。
――本作は7万件以上のいいねを獲得しています。多くの反響を呼んだことについて率直な感想をお聞かせください。
本来は今度始まる連載『999号室』(現在は連載開始しています)の宣伝目的で過去作を載せていっていたのですが、そっちがまさかここまで伸びると思っておらず、「こんなん連載の1話載せた時に全然伸びなくて落ち込むやつやん…」と複雑な気持ちになったのを覚えています。結果として連載作の方も爆伸びしたのでよかったです。
内容の話で言うと、思ったより人生に絶望を抱えた人からのリプや引用RTが多く、作品というものが人の心や思考に与える影響の強さ、危うさを感じました。
――南賀なんさんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。
とりあえず初連載作の『999号室』がうまくいけばいいなと思っています。売れるとか売れないとか以前に、寄せられた期待を裏切らぬように描ければ、と。
――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
私からのメッセージは漫画の中だけで十分かなと思います。強いて言うなら、私の漫画が少しでも生き抜く糧になればいいなと思います。

