
エンタメ好きとしてチェックしておきたい旬なマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、WEB漫画サイト「カドコミ」の最新情報や世間的に注目を集めている作品トピックスを発信する「カドコミュ」のスペシャル出張版として、現在秋アニメ放送中の『顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君』の東ふゆさんにインタビュー。原作者でしか語れないアニメの見どころや、同作品がアニメ化に至るまでのストーリーを前後編に分けて根掘り葉掘り聞いた。
ちなみにまだ本作品を全く知らない方々に、「顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君」とは…
どんなにちょっかいを出されても、まったく顔に出ない女子中学生・柏田さん。
そんな柏田さんのことが気になって、ついついちょっかいを出してしまう太田くんは、逆にめちゃくちゃ顔に出る――!?
正反対な2人が競い合う(?)ほのぼのラブコメ♪
(カドコミより)
という、無表情中学生女子・柏田さんと表情が分かりやすすぎるオラつき系中学生男子・太田くんのラブコメディ。無表情ながら太田くんに好意を隠さない柏田さんと、そのアタックにほぼ小学生男子的な反発をしてしまう太田くん。それを取り囲む同級生やら家族たちの…おかしくも優しい世界を描いた思春期ニヤニヤ感強めの作品だ。
では、インタビュー始めさせていただきます!
■最初に影響を受けた漫画は「カードキャプターさくら」
――東先生、宜しくお願いします。本日は「顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君」という作品の立ち上げからアニメ化までを中心にお話を伺って行ければと思うんですが、いったんその大分前の話として…東先生って幼少期にどんな感じで、どんな絵を描いていたのか、記憶にある範囲でお聞かせ願えますか?
東先生:宜しくお願いします。そうですね…。ずっと絵を描くのが好きでしたし、5歳くらいから描いていたと思います。ウチは結構アニメが流れている家庭だったので、それを見ていて、気付いたら話も考えていたりして…。
――おぉ。幼少期にもう話を考え始めるんですね。めちゃくちゃ早いんじゃないですか?
東先生:もうすごく雑で下手だったんですけど(笑)。子供の頃は『星のカービィ』を主人公にしたものとかを自由に描いていました。まだ、コマを割ったりとかでは無いですが、漫画を描くことは多分そこから始まっていると思います。ただ、「柏田さん―」の原型などは全然そこには無いですね(笑)。
――カービィですか、可愛いですね。そこからコマを割って描くようになるのは…多分、小学生の頃でしょうか?その頃はどんな漫画を描いてたんです?
東先生:そうですね、小学生あたりでノートに描いて、クラスの友達に見せたりしてました。どんな漫画だったかは、正直あんまり覚えてないんですが…なんか…オリジナルのギャク漫画でしたね。
――ちなみに、その頃出会った作品で「これが超好きだった。今も影響を受けていると思う」みたいな漫画ってありますか?
東先生:その時期に影響を受けた漫画はもちろんいっぱいあるんですが…まずは、小さい頃に初めて買ってもらった漫画で「カードキャプターさくら」ですかね。なんというか…「悪者がいない優しい世界観」っていうのがいいなぁと思いまして、その世界観はちょっと今の「柏田さん―」にも通じているのかなとは思います。
――素晴らしい。ちなみに追加で2番目に買ってもらった漫画も聞いていいですか?
東先生:それは「だぁ!だぁ!だぁ!」っていう『なかよし』に掲載されていた漫画ですね。宇宙人の赤ちゃんを中学生男女が育てるっていうラブコメなんですけど、そのギャグセンスとかが大好きで、単行本がボロボロになるまで読んでました。
■連載塩漬け状態からのX投稿で大逆転
――そんな時期を経て大人になり、漫画を描き続けた東先生は2017年にSNSで「柏田さん―」の投稿を始めます。それが連載、アニメ化へと繋がっていくのですが、最初はどんな思いといきさつで「投稿しよう」ってなったんですか?
東先生:当時、自分は色々な漫画賞に投稿していて、出版社の担当さんには付いてもらえていたんですけど、作品は全然媒体に載せてもらえなかったんですよね。で、結構そんな時代が長くて…そんな頃、X、当時はTwitterでしたが、そこで素人の方も含めてたくさんの人たちが漫画をあげていたので「私もやってみよう」って思ったのが始まりですね。
――初めての投稿は、ちょっと楽しかったりドキドキしたりすると思うんですけども…手応えはどうでした?
東先生:そうですね。Twitterに作品をアップしたのは、「柏田さん―」が初めてだったので、本当に予想以上に反響をいただいたことにかなり驚いたのを憶えています。もちろん運もあったと思うんですけど、「あ…自分は描いて、Twitterにあげれば良かったんだ」って、その時に思いました。
――多分すごい褒めてもらえて、いろんなコメントが来ると思うんですけど、「これ嬉しい!」って思った読者からの褒め書き込みとかはあったりしました?
東先生:ええ、なんだろう……でも、みんな嬉しかったですよ。「好き」とか「可愛い」って言ってもらえるのが本当にうれしくて。
――結果「柏田さん―」は大人気となり、複数の出版社から注目を集める結果になります。それまでのことも考えると…東先生的には「見たか、オラァァ!」な感じですか?
東先生:いやいやいや!そんなことは無いです!本当にちょっと信じられない感じでしたね。それまで、出版社にこちらからいっぱい漫画を送っていたんですけど、それが出版社側から「描いてくれ」って言ってもらえて。そんな依頼が来るようになったのが信じられなくて………そんな中で、1番最初に連絡してくださったのが担当編集のドラドラしゃーぷ#・Mさんだったんですよね。
■早いけどやや塩かった、担当編集M氏
――おっと、では東先生と担当M氏、二人のファーストコンタクトについて深掘らせていただきたいんですが…ここからM氏にもちょっと交ざっていただいていいですか?M氏はどんなラブコールを送ったんですか?
担当編集M:多分その…普通になんかTwitterにあがっていた作品の感想と、「こういう媒体があるので、連載してみませんか?」っていう連絡をすぐ送ったって記憶ですね。
――東先生、その作品の感想ってどんな感じでした?
東先生:結構業務的な感じでしたね(笑)。他の編集さんは「ここがいい!」とかなんかもうちょっと熱のある感じで書いてくれていたんですけど、「いいと思ったので(描いてみませんか?)」ぐらいの…。
――何かドライですね。
東先生:ただMさんは連絡をくれるのがすごく早かったです。圧倒的な速さで1番最初に連絡をいただいたので。
担当編集M:この時はまだ、現掲載レーベルの「ドラドラしゃーぷ#」じゃなくて、その前身の「ドラドラドラゴンエイジ」だったんですよ。当時そこには作品が3つぐらいしかなかったんですけど、「柏田さん―」はその媒体と親和性があるなと思いまして…すぐに連絡したって感じです。
――なるほど。そのスピードが功を奏した、と。それからすぐ「じゃあ会ってみましょう」、と?
東先生:いえ、その頃はまだ地元の秋田にいましたので、何度か電話をして、そして他の漫画で賞をいただいた時に、受賞式のために東京へ来たので、そのタイミングで初めて会って打ち合わせした…感じでしたね。
――最初は「読み切りで載せてみよう」とかだったんですか?
担当編集M:いえ。最初の段階としては、3話分ぐらい載せてみて、そのニコニコ漫画での数字が良ければ…みたいな話をしてはいたんですけど、まあでも自分的には「大丈夫だろう」と思ってたんで、正直連載の気分で考えていましたね。
――もう作品のベースはTwitterでの投稿で出来上がっていた状態ですし、打ち合わせといっても「これをやり続けていこうじゃないか」くらいだったんですかね?
東先生:そうですね。「柏田さん―」の設定や方向性はTwitterで1番最初に書いた4ページでもう出来上がっていたので、あとはもう膨らませるだけという感じでした。ただ、その膨らませるのが大変そうだなという心配はありましたね。
――その時にM氏からなんかエモい一言もらったりしなかったんですか?
東先生:エモ……い?Mさん、何か言ってくれましたっけ?あんまりそういうことは言わないから。ただ意外と熱いところがあったりして、言葉というよりは作品のために頑張ってくださっている姿に感動したことはありますが…。
担当編集M:連載当初は、僕も東先生も全然アニメ化みたいなことは考えたこともなかったですから「続けられるように頑張ろう!」くらいだったかと思います。
――「柏田さん―」の商業連載が始まって、ファンの方々から「おめでとうございます」などと言ってもらったりすると思うんですが、東先生の周囲からも嬉しい反響とかありました?
東先生:やっぱり親は喜んでくれました。ただ、父親が評価とかダメ出しをしてくるようになり、それが結構うるさかったりしましたね(笑)。
――後に秋田を離れて、東京にいらっしゃったのはそこら辺が影響していたり…?
東先生:いやいや、そんなことは無いですよ!
■太田のモデルは小学生時代の男子たち
――ここからは「柏田さん―」の内容、特に登場キャラクターたちについてもろもろ聞かせていただければと思うんですが、まず柏田さんの無表情キャラっていつ、どんな時に思いついたんですか?
東先生:それはただ家にいるときに浮かんできた…だけですね。これに関しては特別なエピソードとかは本当に無くて、フッて浮かんで、描いてみようと。
――なるほど…また「柏田さん―」といえば、単行本のカバーでも必ずその表現を使っていますけれども、無表情な柏田さんに“※驚いている”“※照れている”“※張り切っている”とかの「※注釈」を付けた見せ方がとても可愛いですよね。あの表現ってどう生まれたんですか?
東先生:ありがとうございます。「カバーイラストにまでアレ(※注釈)をやるとは思わなかった」というのは、知り合いたちにもよく言われましたね(笑)。無表情な柏田さんは、たまに背景で明るかったり暗かったりとかでニュアンスが分かったりもするんですけど、それでも説明が無いとさすがに分かりづらかったので…それを解消するために「※注釈」を入れただけなんです。
――そうしたら、思っていたより「お?これ…いいぞ?楽しいぞ?」だったと?
東先生:そうですね(笑)、みなさんのウケも良かったので。
――ちなみに、もう一人の主人公・太田くんは……あの素直になれない感じとか、当たりが強い感じは…多分中学2、3年生と言うより、結構小学生入ってますよね?誰かモデルがいたりするんでしょうか?
東先生:この人がというモデルは無いですが、太田は自分が小学生の頃に見ていた「悪ガキ男子たち」の感じを入れています。太田に関しては、読者の方々から「うるさい」と言われることもあるんですが…でも、普通の中学生だと柏田さんとやり合えないんですよね…。
――太田くんを見ていると、男性としては思春期序盤を顧みて恥ずかしくなったりもするんですが…東先生ってよくその小学生男子の感じを憶えてますよね。めちゃくちゃ造詣が深いな…と。
東先生:いえいえいえ、そんなことは全然無いですよ(笑)。
――「柏田さん―」は、二人を取り巻く面々も魅力的ですよね。僕は田所くん(太田君の友人。やや不遇展開も多いお調子者)&田淵さん(熱狂的な柏田ファン。ときどき男子にもデレる委員長)が好きで、ファン人気の高い小田島さん(柏田さんの表情を読めるが、恋心だけはあまり察せない陽キャ)も……そろそろアニメにも出てくると思うので楽しみです。
東先生:脇役キャラを好きになってもらえるのは嬉しいですね。ちなみに、小田島さんはとても人気で…Mさんの推しキャラでもありますね。「小田島×太田のifストーリーを描いてほしい!」って言われているくらいですから(笑)。彼女に関しては漫画本編の終盤で重要な展開があるのですが、人気キャラクターだったので、ファンの方々の気持ちを考えて、そこを描くにあたっては大分気を付けた記憶があります。
※前編は一旦ここまで。次回、アニメ化決定の舞台裏や、東先生の「初恋アニメ」を聞かせてもらったインタビュー後編(12/20更新予定)に続きます

