冬季うつの受診サインと病院での治療

どのような症状があるときに受診を検討すべきですか?
日常生活に支障が出るほど症状が重い場合や、2週間以上抑うつ状態が続く場合は、心療内科や精神科の受診を検討してください。具体的な症状は、冬になると、気分の落ち込みや過眠、過食がみられる、朝起きられない、仕事や学業、家事などに集中できない、外出がつらい、などです。さらに、消えてしまいたい、自分は価値がない、などの考えが浮かぶ場合は緊急性があります。このほかにも自殺に関係する言動がみられる場合は、すぐに心療内科や精神科に相談してください。
病院で行われる冬季うつの診察や検査の内容を教えてください
冬季うつが疑われる場合、病院ではまず医師の診察と問診が行われます。問診では、症状がいつから始まったか、どのような症状があるか、毎年同じ時期に繰り返しているか、日常生活への影響はどの程度か、家族歴はあるか、といった内容について医師が詳しく聞き取りを行います。また、ほかの病気の可能性を除外するために血液検査などが実施されることもあります。医療機関によっては、心理検査やうつ病の質問票が用いられることもあります。そのほかに脳の病気などが疑われる場合にはMRI検査などの画像検査が実施されるケースもあります。
病院では冬季うつに対してどのような治療を行いますか?
冬季うつの治療法の第一選択は、高照度光療法とされています。これは毎日1~2時間程度、2,500から10,000ルクスの強い光を照射する治療法です。早期に効果が出るとされ、1週間程度で症状の改善を認める方も多いといわれています。中止すると再発する可能性があります。
高照度光療法だけでは十分な効果が得られない場合や、症状が重い場合には、薬物療法が併用されます。主に使用されるのは、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬です。SSRIは、脳内のセロトニンと呼ばれる神経伝達物質の働きを調整することで、気分や不安をコントロールする作用があります。冬季うつの場合、抗うつ薬は春になったら減量・中止するのが一般的です。これは春になると症状が自然に改善しやすいためです。もう一つの理由として、双極性障害の季節型である場合、抗うつ薬によって躁状態が誘発されるリスクがあることが挙げられます。
このほかに、認知行動療法などの心理療法が有効な場合もあります。いずれの治療法を選択するかは、症状の程度や患者さんの状況に応じて医師が判断します。
冬季うつと診断された場合の注意点を教えてください
冬季うつと診断されたら、症状が軽快しても自己判断で治療を中断しないことが大切です。医師の指示なく高照度光療法や抗うつ薬をやめると、再発などリスクがあるため、治療方針は必ず医師と相談して決定します。また、意識的な生活管理が必要です。炭水化物に偏らずバランスの取れた食事を心がけ、毎日決まった時刻に起床します。冬季うつは毎年繰り返す可能性があるため、症状が治った後も、翌年の再発を防ぐために、予防的な生活習慣の継続と早期の医師への相談が大切です。
編集部まとめ

冬季うつは適切な治療とセルフケアによって症状を軽減できる可能性があります。冬季うつの症状が当てはまるかどうかを確認し、心配な症状がある場合は医療機関への相談を検討します。冬季うつと診断されたら、生活習慣の改善や高照度光療法などの治療に取り組みます。冬になると気分が落ち込む、過眠や過食がみられるなどの症状の変化を見逃さず、早めに対処することが重要です。冬季うつは毎年繰り返す可能性があります。症状が改善した後も、予防的に規則正しい生活習慣を続け、体調の変化に気付いたときは無理をせずに早めに専門家の判断を仰ぎましょう。
参考文献
『季節性情動障害に対する補完療法について知っておくべき6つのこと[コミュニケーション]』(厚生労働省「統合医療」に係る情報発信等推進事業)
『Overview – Seasonal affective disorder (SAD) 』(NHS)
『連載 ICD-11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ 各論④ 気分症群』(精神神経学雑誌)
『季節性感情障害(SAD) (きせつせいかんじょうしょうがい)とは』(恩賜財団済生会)
『季節性情動障害に対する補完療法について知っておくべき6つのこと』(厚生労働省)

