
乃木坂46の岩本蓮加と冨里奈央がW主演を務めるドラマ「ふたりエスケープ」の最終話がLeminoプレミアムで独占配信中。最終話では、先輩(岩本)がフラッと帰ってきて一見今まで通りの同居生活が始まったが、今度は後輩(冨里)が仕事を失うピンチに。そして最終話らしく、ほっこりできるラストが待っていた。(以下、ネタバレを含みます)
■“失う妄想”のはずが…本当に仕事を失う後輩
同作は、田口囁一の同名コミック(一迅社刊)を実写化したもので、かわいいだけが取り柄で、無職にして「現実逃避のプロ」の先輩と、日々原稿に追われている「限界漫画家」の後輩が繰り広げる“現実逃避”コメディードラマ。日常生活で疲弊している現代人に“癒やし”を与えてくれる作品だ。
最終話では、帰ってきた先輩に、「もうどこにも行かないでください、絶対」と後輩はいたずらっぽく念を押す。そんな後輩を見ていた先輩は「失う妄想をすることで、マンネリ化したモノに感謝していこう」と言いだす。部屋の中の愛着あるものがなくなったら…と想像して、今ある日常のありがたみをもっと知ろうというわけだ。
その効果はてきめんだった。後輩は10年以上漫画を描くのに愛用している机をもし捨ててしまったら…と想像して締切に苦戦した日々を思い出し、机を抱き締める。だが、このマンションも賃貸で、いつかは2人暮らしに終わりが来るかもしれない――。
そんなことにも思いをはせていく後輩だが、そこに先輩は「無職(自分)のことも大事にできるな」と一言。まんまと先輩のペースにのせられて機嫌がいい後輩のところに、担当編集からの電話が鳴った。それは連載打ちきりの連絡だったのだが、先輩と「失う妄想」トレーニングの最中だった後輩は、この電話も先輩が仕掛けたドッキリだと思って本気にしない。「私は編集さんに頼んでない」と真顔になった先輩を見てようやく事の重大さが分かり、後輩は目がうつろになる。
そんなわけで、かつて「先輩は私が養ってあげます」と言ったはずの後輩も突然無収入になってしまった。だがこんなときこそ、無職暮らしのプロである先輩の出番。とりあえず作戦会議と2人で昼から居酒屋に向かうが、何も決まらないまま夜になってしまった。「現実が襲ってきそうです」とこぼす後輩に、「現実を先延ばしにしてやろう」とコンビニ飯での食べ歩きに誘った。
■先輩、後輩に何げなく助言「現実逃避、漫画にしてみたら」
第1話で先輩が締切に追われていた後輩を夜のドライブに誘ったときと似ていて、当時の出来事を思い出す後輩。推し声優の伊集院あかり(田村真佑)のラジオにも連れられて、深夜の公園でカップラーメンを堪能する。石川・金沢旅行で食べたカップラーメンの味を思い出し、流れ星に願い事をしてみる。
第1話のような深夜の現実逃避は大成功。そして先輩は後輩に、「現実逃避、漫画にしてみたら」と提案してみる。後輩は「いけそうです」と即答し、朝まで放浪した勢いで漫画のタイトルも思いついた。
1カ月後、2人はマンションのバルコニーでフレンチトーストを味わっている。後輩は「砂糖のミルキーウェイや」と甘みにメロメロになっている。そこに編集から電話がかかってきて、先輩に勧められて描いたあの漫画の連載が実現したという。
早速昼間から祝杯を挙げつつ、「今日はどんな現実逃避を見せてくれるんですか?」という後輩だが、うれしいことがあったから先輩は「今日は何もしない」。そればかりか「現実逃避から現実逃避しようとしても、結局現実逃避になるのか?」と何だか哲学的なセリフも口にする。
それを後輩は「私に永久就職します?」「『おまえの役に立ってやんねえ』と言いながら役に立ってるじゃないですか」とイジッていく。高校時代に漫画家になると決意したのも、今新しい漫画を描いていられるのも先輩のふとした思いつきのおかげ、そんな後輩の本音が見え隠れする。
お金がなくても好きな物を食べ、行きたい所に行き、たっぷり遊ぶ。部屋には今までの放送回に登場した思い出の品もたくさんたまっている。2人のユニークな現実逃避ライフはこれからも続いていくが、この暮らしを漫画にした後輩の作品それこそが、「ふたりエスケープ」だった。
最終回だが、第1話を思わせる原点回帰のような展開に、先輩と後輩はこの先どんな現実逃避をしていくのか、と想像したくなる締めくくり。無職のプロだからこそ、先輩が日常を楽しむ秘訣(ひけつ)は至る所から湧いてくる。2人で旅行に行けば予想外の出来事も楽しみ、コンビニ飯も上質なディナーになれるし、何より何を食べても岩本と冨里の食べっぷりがかわいらしい。
視聴者も2人と一緒に現実逃避したくなる週末の夜にピッタリのドラマだった。SNS上には「ずっとニコニコヘラヘラニヤニヤしてた」「ちょうどいい感じのユルさが好きだった」「来週からないのが信じられない」「作風が好き過ぎて、毎週めっちゃ楽しみにしてたから終わるのが寂しい」「続編希望」と、惜しむ感想も続々と寄せられている。
金沢や福井にはドラマの聖地になる場所もでき、ファンもドラマや漫画の中の2人と一緒にしばらく“現実逃避”していけそうだ。
◆文=大宮高史

