スイーツ専門の移動販売車で高齢者施設と地域住民が交流

スイーツ専門の移動販売車で高齢者施設と地域住民が交流

最近では「移動販売車が定期的にやってくる」という高齢者施設が増えて来ています。

本人の健康状態などにもよりますが施設入居者の中にも、お菓子などの嗜好品、肌着やティッシュなどの日用品の購入を希望する人がいます。

こうしたニーズに対しては
①施設側で予め購入しておく
②要望に応じて施設のスタッフが買い物にいく
③ネットで購入する
という方法が考えられます。

しかし、
①の場合は個人の趣味や嗜好に応じたものを用意できない。
②の場合はスタッフの負担が大きい、という難点があります。
③の場合も、入居者が1人でネットを使って決済まで行えるケースは少ないでしょうから、スタッフのサポートが必要になるという点で②と同様の課題があります。

移動販売車は、こうした課題を解決できるだけでなく「自分で好きな商品を選んで買い物をする」ということ自体が、施設で生活をする高齢者にとって刺激的であり、自立支援や認知機能低下防止などに効果があるという点でメリットがあります。

こうした点からレクリエーションの一環として来てもらっているケースが多くなっています。

移動販売車はもともと物販店の少ない過疎地などでは古くから見られたサービスです。

しかし、近年では住民の高齢化や車社会の進行などに伴う店舗の閉鎖などで都市部でも「買い物難民」が増えていることを受けて、全国的に珍しい存在ではなくなってきています。

ちなみに、農林水産省では
①店舗までの直線距離が500メートル以上
②65歳以上で自動車の利用が困難
の2つの条件を満たす人を買い物難民と定義しており、2020年の推計で全国に約904万人いるとされています。

高齢者施設で移動販売車を活用するケースが増えている背景には、このような「移動販売車自体のニーズの増加」という事情もあると言えます。

ただし、移動販売車は積載量の関係から「販売する商品がどうしても実用性の高いものに限定されてしまう」という難点がありました。

その課題を解決するものとして、大阪の老舗デパートが取り組んでいるのが、実際にデパートの地下で販売しているクッキーやチョコレートなどのスイーツ専門移動販売車です。

2023年7月に開始したこのサービス、約400の高齢者施設に定期訪問をするほどにまで成長しています。

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高齢者施設がこのサービスを利用するメリットとしては、単に「入居者に買い物を楽しんでもらうだけでなく、地域住民に施設に足を運んでもらうきっかけづくりになる」という点が挙げられます。

「スーパーマーケットまでは車で苦も無く行けても、大阪の都心部まで行くのは時間的にも肉体的にも一苦労」という地域は少なくありません。

こうした地域の人たちにとって「デパートと同じものが買える」というのは特別な機会でもあります。

高齢者施設でこの移動販売を利用する頻度は、平均して年に3~4回程度で「特別なイベント扱い」というのが一般的だそうです。

それに合わせて近隣にチラシなどで告知をすれば、当日はデパートの味を求めて住民が施設に集まります。

自然にスタッフや入居者との交流が生まれますし、それを機に将来の入居や就労につながることも期待できます。

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これまで施設が地域とつながる方法としては、祭りやセミナーなどのイベント開催が一般的でした。

しかし、イベントの企画・運営は時間も費用も掛かります。どこの施設も人手不足が深刻な中で大きな負担になっていました。

それに対して、移動販売車の誘致に際しては施設の費用負担はなく、駐車・販売のスペース(車2台分程度でいいそうです)を確保するだけで済みます。

今後は、施設と地域住民をつなぐ手軽な手段として移動販売車の活用が進むことも考えられます。


介護の三ツ星コンシェルジュ

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介護の三ツ星コンシェルジュ

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