元カレ・達治からの20万円を受け取ることに強い罪悪感を覚えた美也子は、妹のかなに相談。かなは「良一さんに隠す方がかえって傷つける」と正直に話すよう助言してくれて―――。
「20万円」に気持ちが揺らぐ
達治とのやり取りを終えてから、私はずっと落ち着きませんでした。強引に振り込まれる20万円をもし受け取ったとしても、手をつけずに置いておくか、出産や育児の急な出費に備えようか…そんな考えが頭をよぎります。
でも、そのお金は「元カレ」からのもの。その事実が、私の心を重く、暗くさせるのです。良一に隠して大金を手にすることへの、強い罪悪感。それが何よりも忍びなく思いました。
「どうして、今さら…」
リビングで1人、達治とのLINEの履歴を見返す。彼の行動は、私への未練なのか、それとも、過去の自分への清算なのか。どちらにせよ、私の平穏を乱していることに変わりはありません。
「振り込み先、教えなければよかった…」
付き合っていたころ、貸したお金を返してほしくて教えた口座を、今でもメモしてあったのかもしれません。それが大きな後悔でした。
妹に意見を求める
モヤモヤした気持ちを1人で抱え込めなくなった私は、妹のかなに電話をかけました。かなは私より4歳年下ですが、相談を持ち掛けると何でもハッキリとした物言いで答えてくれます。
ある日、かなとカフェで待ち合わせして、ことの経緯を全て話しました。元カレからの「俺の子?」という勘違い発言から、強引な20万円の申し出まで。かなは黙って聞いてくれます。
「…で、お姉ちゃんはどうしたいの? お金、受け取りたいってこと?」
かなは、いつものように冷静です。
「受け取りたくないよ。それに、もし勝手に振り込んできちゃっても、良一には言いたくない…きっと何か誤解されちゃうし…」
私が弱音を吐くと、かなは一呼吸置いて、はっきりと告げました。
「お姉ちゃん、黙っていていいことなんて何もないよ」
その言葉は、私の胸に深く突き刺さった。
かな「良一さんが後から知ったらどうなると思う? 勘違いだって言っても、隠した事実は残っちゃうよね。それに、良一さんはお姉ちゃんの元カレのことも知ってるんでしょ? 変に隠す方が傷つけることになるよ」
美也子「でも、良一は怒ると思うよ…」
かな「もしかしたら一瞬は怒らせるかもしれないけど、あとあとになれば『話してくれて良かった』って思われると思うよ。夫婦なんだから、20万円のことも2人で決めるべきだと思う」
かなの言葉は、私の凝り固まった心を解きほぐしてくれました。そうだ、私と良一は夫婦なのだから、何でも話し合うべきだと、素直にそう思えたのです。
「…わかった、ありがとう、かな。勇気出して、話してみるよ」

