「幸せは他人が決めるものじゃない」あのが全編書き下ろし哲学書に込めた、不器用で真っすぐな生存戦略

「幸せは他人が決めるものじゃない」あのが全編書き下ろし哲学書に込めた、不器用で真っすぐな生存戦略

あのにインタビューを実施
あのにインタビューを実施 / 撮影=山田大輔

アーティスト、タレント、俳優、モデルなど多岐にわたる活動をしているあのが、全編本人書き下ろしの“哲学書”「哲学なんていらない哲学」を12月24日(水)に発売する。本作の誕生秘話や、書籍に込めた思い、そして胸に秘めた感情をたっぷり語ってもらった。

■書籍作りは「音楽を作るときと似ている」

――今回書籍化に至ったきっかけを教えてください。

素直に本を書きたい、と思ったんです。きっかけはよく分からないし、これまで本を書きたいと思ったことがなかったけど、でも初めて書きたい思いが芽生えました。きっとその感情が一定ではなくて、どんどん変わっていくものだから、今書いておこうという感じです。

──発売間近となりましたが、今の心境はいかがですか?

結構短期間で書いたから「これでいいのかな?」みたいな…ちょっとドキドキ感はあります。

──本の執筆はどのように進められましたか?

音楽を作るときと似ていて、夜中に書いたりして進めました。書き方とかがやっぱり難しくて詰まることもあったけど、自分の経験とか、自分が何を吸収してきたのかを書こうと思って。

今まで持っていた考えを書いているつもりだったんだけど、書いているうちに「自分はこういう考えなんだな」って整理されたり、気づきになったりすることは結構ありました。

■本を書いた理由は「誰かに刺さる可能性があれば…」

──タイトル「哲学なんていらない哲学」にはどんな思いが込められていますか?

「◯◯なんて」っていう否定的な言葉だけど、それを言っちゃうこと自体がもう哲学だなって。別に僕の言葉を人生の道しるべにしなくていいし、分からなくてもいい。みんながこれを読んでどう解釈してもいい。道に迷った時のお守りみたいにしてくれてもいいし、どんな意見もうれしいです。

──執筆した内容を、今は「読んでほしくない」という気持ちもある?

当たり前のこととか、どうでもいいようなことをあえて書いたんだけど、改めて読むとちょっと恥ずかしい。でも、僕にとっての当たり前が、誰かにとっては当たり前じゃないかもしれないし、それが誰かの新しい思考や感情になる可能性が少しでもあるなら…まあ、出す意味があるかなって感じです。

──写真家の松岡一哲さんが撮影されていますが、どんな撮影でしたか?

特に「こうしてほしい」とかはなくて、作り込まない自然な流れで撮ってもらいました。松岡さんの写真は、ピントが合ってなかったり、ぼやけていたりするんだけど、それが逆に僕の中にある柔らかい光とか、内面を鋭く引き出してくれているなって思います。


■あの、中学生で作った「復讐ルール」に言及

──本の中で「自分らしさは流動的でいい」と書かれていますが、ご自身の変化についてどう感じていますか?

あまりにも自分らしさに縛られないためには、もっと自分を知って「気分が変わることもある」ってことを知ったほうがいいかなって。それが一番、自分っていうもののバリエーションが増えることだと思うし。

書く前と後でも気持ちは変わっていくし、書き終わって全部出し切った感覚はあるけど、やっぱり日々考え方は変わるかなと。

──中学生の時に作ったという「復讐ルール」の中に、「蹴落とさない」という項目があります。なぜそう思ったのですか?

頑固なんです(笑)。普通なら先に蹴落としてやるって思っちゃうかもしれないけど、僕はあんまり人のことを蹴落として何かを得ても、それはすごくないなっていうか。自分なりの戦い方で勝つほうがいいと思ったし、そういう育てられ方をしたのもあるかも。そこは真っ向勝負でやってきました。

■ライブをやると自身が「整う」

──仕事中の自分とプライベートの自分にギャップを感じることはありますか?

ライブだとお客さんもたくさんいて、いろんな人のエネルギーを浴びるけど、家帰ったら一人だし。そのギャップは結構メンタルに来るというか、落ち込みやすいかな。みんなが想像しているより一人の時間が多い。

テレビとかメディアではそれを面白おかしく言ったり、あえてマイナスに映るような見え方を選んでやっている部分もあるから「本当はもうちょいこうなんだけどな」って思う時もあって…そういう時にギャップが生まれることはありますね。

──他人から否定的な言葉を投げかけられて傷つくこともあると思います。あのさん流の「心の癒やし方」やケアの方法はありますか?

癒やす方法ってあんまりないんだけど…でも結局、音楽が一番心地よくて。ライブをやるとすごく自分が「整う」というか。荒ぶることもあるけど、ライブっていう場が一番僕らしく慰めてくれるなって思う。

嫌な言葉とかも気にしないっていうか、それを覆すようなパワーを出せる場所だなって思うし。ファンの人からの声援とか、チェックしてくれている反応とかが本当に励みになっています。

──SNSなどで他人と自分を比べてしまう人も多いです。あのさんは、幸せそうな人を見た時どう対処していますか?

僕も友達少ないけど、唯一の友達とかみんな幸せそうで。それこそヤバT(ヤバイTシャツ屋さん)のありぼぼちゃんとか昔から仲良いけど、結婚もしてバンドもずっと安定して人気で…「めっちゃ幸せ者だな」って思うし、祝福もちゃんとしている。

でも、そこで「あ、自分は…」って比べた時点で、自分も幸せになれないなって思っちゃうから。幸せな人を遠ざけるっていうよりは、他人と比べないように。「自分は自分だから」って、自分なりの幸せをしっかり見つめないとダメだなって、いつも軌道修正している感じです。

■幸せの定義は「他人が決めるものではない」

──あのさんにとって「幸せ」とは何ですか?

他人が決めるものではなくて、自身で幸せは決めるんじゃないかな。誰かと付き合うとか、ケーキを食べるとか、北海道に行くとか。そういう他人から見て「幸せそう」なものじゃなくて、他人と比べずに自分が「楽しい」って思えること。これが全てです。

──最後に、これから本を手に取る方へメッセージをお願いします。

本をあまり読んだことない人や「哲学って何だろう?」「哲学なんて…」って思っている人にこそ、ぜひ読んでほしいなって思います。気になった人は読んでみてほしいです。

◆スタイリスト=神田百実/ヘア&メーク=夕紀

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