黒い下痢を催した時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?メディカルドック監修医が解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
※この記事はメディカルドックにて『「下痢が黒い」原因はご存知ですか?考えられる病気や対処法を医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
「下痢が黒い」原因と対処法
黒い下痢は、見た目に驚くため、もしそのような症状が見られたら誰もが気になるはずです。通常、下痢というと消化不良や食中毒などを想像するかもしれませんが、「黒い下痢」の場合はそれだけではありません。
この色の変化は、消化管内の出血が原因であることが多く、深刻な健康問題を引き起こしているサインの場合もあります。
まずは、下痢が黒くなる原因と対処法について詳しく解説します。
下痢が黒い原因と対処法
ドロドロ・ねっとりした状態の黒い便は「タール便」と呼ばれており、食道や胃・十二指腸などの上部消化管から出血している可能性があります。下痢が黒くなる原因としては、血液に含まれるヘモグロビンという成分が、胃酸などの消化液に混ざり酸化されることで黒くなります。
リンパマッサージをおこなった後に、腸管運動が亢進し下痢が起こることもあるようです。しかし、黒い下痢が出る場合には、出血を考える必要があるため消化器内科を受診しましょう。
また、先程お伝えしたように、下痢が黒い原因は胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの消化管出血が一般的ですが、場合によっては食道や胃のがんの可能性もあります。
そのため、消化器内科を受診して、内視鏡検査で出血の原因を診断してもらいましょう。特に、黒い便が出ただけでなく、めまい・動悸・息切れなど他の症状がある場合は、緊急性が高いため、すぐに医療機関を受診してください。すぐに受診できない場合には、断食して水分やスポーツドリンクなどを摂取して胃腸を休ませ、早めの受診を検討してください。
また、便の色は黒色だけでなく、緑色に見えることもあります。食事の影響や、胆汁の流れの異常、下痢などの消化管運動の異常などが原因です。緑の便は、短期間で自然に良くなるようであれば様子を見ても良いですが、長引く時には検査が必要です。緑色の便が続くときは何か疾患にかかっている可能性があるため、その場合は黒色の便と同じように消化器内科を受診しましょう。
黒いカスのような下痢を催す原因と対処法
黒いカスのような下痢は、小さな粒状の黒い物質が見られることが特徴で、消化された食物が部分的に消化管で出血して、固まっている場合に発生することがあります。
このような症状がみられた場合は、まず脱水を避けるため、積極的に水分を摂取しましょう。それとともに、消化の良い食品を選び、刺激性のある食品やアルコールの摂取は避けることが重要です。
この症状は、消化管のどの部分に出血があるかによって病気が異なります。特に胃潰瘍や十二指腸潰瘍が原因であることが多い傾向ですが、消化管の炎症やがんの可能性もあるため注意が必要です。
黒いカスのような下痢がみられた場合は、消化器内科や一般内科を受診し、症状が発生した時の食事内容やその他の症状があれば、その内容も合わせて医師に伝えましょう。
下痢が黒く、粒のようなものがある原因と対処法
下痢が黒く、つぶつぶのような物質が混じる場合は、消化されなかった食物の残りや、小さな血の塊が原因である可能性があります。
海藻類・イカスミ・チョコレート・ココアなど黒っぽい色の食品を多く摂取した場合、消化されずに便が黒くなる場合があります。しかし、これらの食品による変色でない場合で便がタール状であれば、出血をおこしているのかもしれません。特に症状が長引く場合は、消化器系の炎症・感染症・ポリープや潰瘍が原因である可能性が高くなるため注意が必要です。
このような症状がみられた場合は、まず消化の良い柔らかい食事に切り替えるなど食事の調整をするとともに、消化器内科の専門医を受診しましょう。その際に、症状が現れた際の食事内容や、痛みや体重の減少など他に感じる症状を詳しく伝えることで原因を特定しやすくなります。
下痢が黒く、腹痛を伴う原因と対処法
下痢が黒いだけでなく、腹痛を伴う場合は、胃や小腸などの消化管で激しい出血をおこしている可能性があります。これらの症状がある場合は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の急性出血、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患が考えられます。また、その他にも胃がんの場合でも、初期では自覚症状が少ないものの、進行すると出血を伴うことがあるため注意が必要です。
強い腹痛がある場合、無理をせず体を休めることが重要です。また、下痢が黒く、腹痛を伴う症状と合わせて、吐き気・嘔吐・めまいなどの症状がある場合は緊急性が高いため、すぐに消化器内科を受診し、症状の発生時刻・持続時間・食事内容・過去の通院歴などの情報を詳細に伝えましょう。
下痢が黒くて臭い原因と対処法
下痢が黒くて特に臭い場合は消化管出血だけでなく、胃や腸の感染症である、感染性腸炎や炎症性腸疾患などの可能性があります。一般的に黒い下痢は消化された血が原因ですが、異臭がする場合は細菌感染や消化不良が原因かもしれません。
そのような場合は、腹部の負担を軽減するため、脂肪分の少ない、消化しやすい食事を摂取するようにしましょう。また、下痢が黒くて臭い症状がある場合は、緊急の医療対応が必要です。そのため、消化器内科や感染症内科を受診し、黒い下痢の発生時刻・持続時間だけでなく、発熱・体重減少など気になる症状を合わせて医師に伝えましょう。
コーヒーを飲むと下痢が黒くなる原因と対処法
コーヒーを飲むと下痢をする現象は、コーヒーの刺激性やその他の成分が消化器系に影響を与えるためです。コーヒーには、胃酸の分泌を促して、消化管の運動を活発にするカフェインやタンニンが含まれているため、それらの影響でコーヒーを飲むと下痢をする場合があります。
そのような場合は、コーヒーの摂取量を減らすか、カフェインレスのものに切り替えることを検討しましょう。コーヒーを飲んで下痢が黒くなった場合には、消化管出血の可能性があります。一般的に、コーヒーを飲むことで胃酸の分泌が促されます。このため、胃が弱い方やコーヒーを飲みすぎると、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因となるのです。胃の痛みがあり、下痢が黒くなる場合には、早めに消化器内科を受診して、医師の診察を受けることが重要です。
すぐに病院へ行くべき「下痢が黒い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
便が黒く腹痛を伴う症状の場合は、消化器内科へ
先程もお伝えしたように、「下痢が黒い」という症状は、食道や胃・十二指腸などの消化管から出血している可能性があるため、基本的には病院で受診することが重要です。その中でも、下痢が黒いだけでなく、下記の症状がある場合は緊急性が高いためすぐに病院へ行き、消化器内科を受診しましょう。
立ったりするとフラつく
目の前が真っ暗になる
強い腹痛を伴う
貧血の症状がみられる
吐き気や嘔吐が伴う
便の臭いが異常に感じられる
これらの症状がみられる場合は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がん・大腸がんなど、重大な病気の可能性があるため、自己判断せずに医師の診断を受けましょう。その他にも、下痢が1週間以上続く場合や、血便が見られる場合も、同じようにすぐに病院を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「下痢が黒い」のセルフチェック法
黒い下痢が複数回出る場合
腹痛を伴う場合
ふらつき、めまい、疲労感、息切れなどの症状がある場合

