怒鳴って勉強させるとIQが下がる…? 脳科学が証明した「教育熱心」の代償

2.無自覚に行われている教育虐待の例

体罰を用いて子どもに勉強をさせる行為は、軽かろうと弱かろうと、痕が残らない程度であろうと、教育虐待にあたります。

これは線引きとしてわかりやすいのではないでしょうか。

線引きが難しいのは、体力的な限界を超えて勉強することを要求してしまう場合です。

先述のような「夜遅くまで勉強させる」場合もそうですし、他にも「塾・習い事のスケジュールを詰めすぎ」で、休む時間が無いような場合も虐待に至っていないか注意が必要です。

もっと難しいのが、子どもの心を傷つける場合です。

先述の罵倒したり脅したりするのはまだわかりやすい例ですが、他にも、わかりにくい例として「子どもの自己肯定感を傷つけることを言う」というものがあります。

例えば、よく言われる自己肯定感を傷つける内容は「人と比べる」です。

あなたも人と比べることが良くないということは様々なところで見聞きすることが多いと思います。

友達やきょうだいと比較して、「○○ちゃんはできているのにあなたはなぜできないの?」といった責め方をすると、子どもの心は大きく傷つくことになります。

また、「失敗を責める」のも、子どもの自己肯定感を傷つけやすいので注意が必要です。

なぜなら、失敗を責められたときに、「○○をした(しなかった)のがいけないから次からは□□しよう」と改善策を考えられる子は少なく、多くの子は「失敗をしたのは自分はダメな子だからだ」と受け取ってしまうからです。

「なんでまた計算ミスをしたんだ!」

「勉強が足りないからいつまでも偏差値が上がらないんじゃないか!?」

「この前もこの問題をやったのになんでまた忘れてるんだ!」

こうした言葉の数々は、形式としては「疑問文」ですが、実態としてはただの叱責です。

考えてみてください。

子どもは「なんで」の理由を答えられそうですか?

むしろ、言っている大人の側も、答えを期待せずに怒りに任せて言っているだけの場合も多そうです。

こうした言葉の数々は、私たち大人がもっと良い成績が取れるように子どもを導くつもりで言ったとしても、子どもの心を傷つけるだけで終わってしまいます。

そうならないためには、私たち大人が正しい伝え方・導き方を学ぶ必要があります。

さらに、「子どもの自己決定を奪う関わり方」も子どもの自己肯定感を傷つけます。

例えば、

「子どものスケジュールを親が決定し、その通りに行動しているか細かく管理する」

「友達と遊ぶときにもいつ誰と遊ぶか伝えて許可を取ることが必要」

「志望校や職業といった将来について親が勝手に決める」

といったものが挙げられます。

想像してみてください。

ご自身のスケジュールをパートナーや舅・姑に決められて事細かに管理されたらどのように感じますか?

友人と遊ぶことにも許可が必要で、束縛されたら?

自分の将来のキャリアプランについて、パートナーや舅・姑が干渉し、勝手に決められたら?

けっこうなストレスを感じるのではないでしょうか。

自分は尊重されていないと感じて自己肯定感が傷つき、心が病みそうですよね。

そして、気付きにくい心理的虐待としては、「夫婦ゲンカ」もあります。

中学受験の方針をめぐって両親がケンカをしていると、多くの場合、子どもは自分が原因であると感じて罪悪感を持ちます。

その罪悪感もまたトラウマとなって、子どもの心を蝕んでいきます。

3.虐待を受けて育った子はどうなる?

身体的虐待か心理的虐待かといった虐待の種類によって違いがありますが、総じて言えるのは、虐待を受けると「脳が傷つく」ということです。

これはMRIなどで計測することができる物理的・肉体的な変質です。

小児神経科医で福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美教授の著書『子どもの脳を傷つける親たち』(NHK出版)によると、親から暴言を浴びせられるなどの経験を持つ人たちは、脳の「聴覚野」が肥大化していたそうです。

こうした変化により、人の話を聞き取ったり会話をしたりする際に、よけいな負荷が脳にかかり、心因性難聴となって情緒不安を起こしたり、対人コミュニケーションに困難が生じたりするそうです。

また、身体的虐待を受けた経験を持つ人たちは、感情や思考をコントロールし、行動を制御する役割をする「前頭前野」や、集中力や意思決定、共感などに関係する「右前帯状回」が萎縮していたそうです。

これらの部分が損なわれると、うつ病の一種である気分障害や、非行を繰り返す素行障害に繋がることが明らかになっています。

虐待を受けた子たちには「万引きやいじめや家出などの非行に走る」「うつ病や無気力といった状態になる」「学校や仕事に行けず引きこもりになる」といった傾向がありますが、それらは脳が傷つき正常な働きを失うことで引き起こされた結果なのかもしれません。

また、そうした深刻な状態に至らなかったとしても、虐待を受けた子たちには「IQが低い」「成績が低い」といった傾向があるそうです。

脳が傷つけばIQも成績も下がるのは想像しやすいことではないでしょうか。

「我が子の成績を上げる」「受験に合格させる」というそもそもの目的も、教育虐待という手段では果たすことはできないのです。

ですから、教育虐待に陥ることは避けなければいけません。

配信元: マイナビ子育て

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