
飼っていたペットを突然失った喪失感は、簡単に癒えるものではない。しろやぎ秋吾(@siroyagishugo)さんが描く「フォロワーさんの本当にあった怖い話」シリーズの中でも、「猫のヤマト」は、亡くなった愛猫を想う気持ちが思わぬ形で現れた実体験として大きな反響を呼んだ。2022年8月9日に投稿されるや否や、2.3万いいねと3000件超のリポストを獲得し、「怖いのに優しい」「最後で泣いた」と多くの声が寄せられている。
■突然の別れから始まった、会いたいという願い



元気だったはずの猫・ヤマトは、ある日突然、飼い主のベッドの上で息を引き取っていた。病気の兆候もなく、あまりに急な別れに、残された飼い主は理由もわからないまま涙を流す日々を送る。せめて夢の中でいいから会いたい、そう願う気持ちは日に日に強くなっていった。
■夢で会えたものの、身の回りに次々と異変が起こるようになる
やがて夢の中にヤマトが現れるようになる。再会できた喜びに救われる一方で、ある日を境にヤマトは夢の中で威嚇するようになった。さらに現実世界でも、誰もいないはずの場所で声が聞こえたり、黒い影が視界をよぎったりと、不安を煽る出来事が重なっていく。恐怖に耐えきれず、霊感の強い知人に相談したとき、思いもよらない言葉をかけられることになる。
■愛猫が伝えたかった本当の気持ちとは
「怒っているんじゃなくて、お願いしているんだと思う」。その言葉をきっかけに、主人公は“会いたい”と願い続けていた自分の気持ちに気づく。願うのをやめた途端、不思議な出来事は嘘のように消えていった。恐怖として現れた一連の現象は、ヤマトなりの「警告」であり、「いつもそばにいるから大丈夫」という愛情の裏返しだったのかもしれない。この結末に、読者からは「怖い話だと思ったのに、最後は優しさしか残らなかった」と感動の声が相次いだ。
■日常の違和感をすくい取る、しろやぎ秋吾のホラー表現
実体験をもとにしたホラー漫画を描き続けるしろやぎさんは、フォロワーから寄せられた体験談を丁寧にすくい取り、「その人が何を感じ、何を怖いと思ったのか」を想像しながら作品に落とし込んでいるという。根拠のない説明をあえて加えず、日常に潜む違和感として描くからこそ、身近でどこか切実な怖さが生まれるのだろう。
現在刊行されている単行本第2巻には、描き下ろしエピソードも収録されており、紙面に仕込まれたQRコードから“動く怖さ”を体験できる仕掛けも用意されている。可愛らしい絵柄と、後を引く余韻を残す物語。そのギャップこそが、本作の大きな魅力だ。
取材協力:しろやぎ秋吾(@siroyagishugo)
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