赤坂サウナ火災、ジローラモ氏「監修」表示に法的問題は?「 景品表示法に抵触するおそれ」弁護士が指摘

赤坂サウナ火災、ジローラモ氏「監修」表示に法的問題は?「 景品表示法に抵触するおそれ」弁護士が指摘

東京赤坂の高級個室サウナ店「SAUNATIGER(サウナタイガー)」で12月15日、火災が発生し、利用していた夫婦が死亡した。

この出来事をめぐり、タレントのパンツェッタ・ジローラモ氏との関係について、運営会社は「ジローラモ氏は店舗の運営管理に関与していたわけではございません」とするコメントを発表した。

運営会社によると、同社のホームページでは、同店について「パンツェッタ・ジローラモ氏による『監修』との表記をして」いたという。

この「監修」という表現について、運営会社は「オープン当初の2022年9月から2024年2月までの期間、ジローラモ氏よりサウナタイガーのPRのご支援をいただき、その後も掲載が継続していたもの」と説明。そのうえで、今回の火災事故とジローラモ氏との間に関係はないとした。

一方、店の公式サイトには、ジローラモ氏が「サウナタイガー ゼネラルマネジャー」と紹介されていたことも、ウェブアーカイブ上で確認できた(現在では削除されている)。

仮に実際の監修がなかったにもかかわらず「監修」と表示していたとすれば、著名人をいわば「広告塔」にして利用していたことにならないのか。景品表示法上の「優良誤認表示」の問題が生じうると、清水勇希弁護士は指摘する。

●商品やサービスの「監修」としてタレント名を表記する法的な問題点

──実際には監修していないにもかかわらず、商品やサービスについて「監修」としてタレントの名前を示す行為には、どのような問題が考えられるでしょうか。

実際には運営管理や監修にまったく関与していないにもかかわらず、「監修」としてタレント名を表示することは、優良誤認表示に該当しうるとして景品表示法に抵触するおそれがあります。

優良誤認表示とは、商品やサービスの品質、規格、その他の内容について、一般消費者に対し、実際よりも著しく優良であると誤認させる表示のことです。

ジローラモ氏は知名度の高いタレントです。その名前が「監修」として表示されていれば、消費者は「著名人がお墨付きを与えた、質の高い施設なのだ」と受け取る可能性があります。

その結果、優良誤認表示に該当すると判断され、景品表示法に抵触するおそれがあります。ただし、その場合に責任を負うのは原則として事業者であり、ジローラモ氏個人に法的責任が及ぶ可能性は低いと考えられます。

●ケガや死亡事故について「監修」として名前の記載があるタレントにまで責任が及ぶか

──監修として名前が表示されたタレントを理由に施設を利用し、そこで事故が起きてケガや死亡に至った場合、利用者や遺族がタレントにも責任を求めることはできるのでしょうか。

そもそも、ジローラモ氏に責任を問うためには、今回の事故の発生について、何らかの過失、つまり注意義務違反が認められる必要があります。

しかし、今回の火災との関係で、ジローラモ氏に過失があったとは考えにくく、ジローラモ氏が責任を負う可能性は極めて低いといえます。

「監修」と表示されていたとしても、ジローラモ氏がサウナの設計や安全管理といった専門的な部分について、実際に関与していたとは考えにくいでしょう。

仮に何らかの関与をしていたとしても、事故原因が、設計以外の運営上の問題に起因する場合まで、タレントが関与していたとは考えにくく、やはり責任を負う可能性は極めて低いと考えられます。

【取材協力弁護士】
清水 勇希(しみず・ゆうき)弁護士
弁護士登録以降、相続法務、不動産法務、刑事事件等に注力。リット法律事務所は、元裁判官の弁護士も在籍する等、民事・刑事事件問わず、多数の紛争案件の解決実績を誇る。「クライアントの未来を灯す」という理念のもと、クライアントのために、迅速な案件解決に力を入れている。
事務所名:弁護士法人リット法律事務所
事務所URL:https://lit-law-office.com/

提供元

プロフィール画像

弁護士ドットコム

「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。