当たり前を守ってくれる
会社に戻ってくるといつも
そこにいてくれる仲間たち
会社を守る人がいること
僕らはそれを忘れないように

ときどき、会社でサラリーマンとして働いていない自分のことを考えることがあります。僕の周りには自分の腕一本でかっこよく生きているフリーランスの仲間や、個人事業主の友達がたくさんいるので、彼らから聞くその自由と責任の両方を背負った生き方や軽やかな言葉に、いつも憧れに似た気持ちを持っています。
たとえばどこかの街で小さな本屋さんをやりながら、今のように企画や編集の仕事をしている自分や、遠くの山あいの小さな村でその場所の課題を住む人と一緒に考えながら、休みには釣りをして暮らす自分を想像すると、心がぐんと広がっていくのを感じるのです。
それでも僕がサラリーマンを続けているのは、会社で働くことが好きだからです。そしていま働いているこの会社の仲間のことが好きだからだと思います。なにより「サラリーマンっておもしろい」と、僕自身も感じられているのだと思います。今回もたくさんの会社を訪ねて、その気持ちを新たにしました。

サラリーマン特集3回目のテーマは「総務部」です。たぶん会社のどの部署よりも多岐にわたる仕事を任されているにもかかわらず、総務はいつも静かに会社を守ってくれる存在です。たくさんの会社の取材をしながらあらためて彼らの偉大さを感じると同時に、自分のことを省みて少しの反省をしているところです。
と言うのは、紙面で作家の燃え殻さんも書いてくれていますが(素晴らしいエッセイなのでぜひ読んでください)、僕らはあまりにそれを「当たり前」ととらえていないかという反省です。
たぶん僕たちは少し自分に同情しすぎていて、仕事の忙しさを理由に自らを優先し、責任をまっとうしようとするあまり、その当たり前に心を砕く時間が少なくなっているように思います。でもそれってあまりカッコいいことじゃありませんよね。忙しいから機嫌を悪くして、思うようにいかないことにイライラして周りへの配慮や感謝を忘れてしまうことって、だいぶダサいことなんじゃないかなと感じます。だって会社の売上を積み上げることが仕事の真ん中にある人が、会社を守る仲間たちと比べて偉いのかというとそういうことではありませんから。会社を守ってくれる人がいてくれるからこそ安心して僕らはそれに邁進できる。自分も含めそういう側にいる人間が、その仕事を比べること自体がナンセンスな話です。みんなそれぞれの役割があり、自分でそれを(ある程度)選びとってそこにいるはずですから。

総務だけでなく、経理や人事も、僕が働いている会社の本部部署のメンバーはみんなやさしくて親切で、思えばこんなに恵まれた環境はないなぁとあらためて感謝の気持ちでいます。年末調整、経費精算、マイナンバーカードや期日の決まっている書類とか、そういう普通は誰でもできることが僕はうまくできません(堂々と言うことではない…)。でもそんな僕のことも置いていくことなく、仕事中も手を止めて助けてくれる仲間たちが会社の本部にいてくれることが、本当に嬉しいことだなと思います。願わくば僕も本部のみなさんに同じような気持ちを返せたらといつも思っています。
でも僕にできることはそんなにたくさんはありません。目の前の仕事を手を抜かずにがんばって、会社にいるときは笑顔で「ありがとう」を言えるようにすること。機嫌よく過ごして、誰かの機嫌のいいを肯定すること。たぶんそれくらいじゃないかなと思います。
社会を変えることも会社を変えることも、なかなかできません。戦争をしている国はどちらも自分が正しいと思っています。そんな世界で自分以外の誰かを変えるなんて本当に困難。でも僕たちは自分なら変えることができる。自分の置かれた環境を会社のせいにすることをやめて、自分の仕事を肯定できたら、きっと「サラリーンっておもしろい」って、今よりも少し思えるんじゃないかなと思います。そんなきっかけとかヒントにこの本がなれたら、それが何より嬉しいです。
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