
2025年も残りわずか。「年末の人気漫画振り返り」と題し、特に反響の大きかった話題作をピックアップ!
朝食のテーブルに並ぶトーストとバターは、明らかに2人分。にもかかわらず、夫はそのバターをすべて自分のパンに塗ってしまう。妻が何も言わずに見つめていると、夫は悪びれもせず「君は気にしなくていい」と一言。その言葉に、妻は心の中で静かに違和感を積み重ねていく。鳩ヶ森(@hatogamori)さんが描くSNSで連載中のミステリー漫画「犯人を予想する漫画『仮門』」は、こうした日常の一コマから始まる。だが、その空気はどこか不穏で、読者はすぐに気づかされる。これはただの夫婦の話ではない、と——。
■10年前の女児失踪事件が、すべての中心にある



本作の軸にあるのは、10年前に起きた女児失踪事件だ。物語は現在と過去を行き来しながら進み、登場人物それぞれの言動に小さな棘のような違和感が刺さっていく。
第1話では、妙に無関心で感情の読めない父親の姿が描かれ、第2話では母親の友人・杏美が登場。そして第3話では、失踪した少女の幼なじみである砂羽と圭樹に焦点が当たる。当時4歳だった2人は無関係にも思えるが、砂羽の発言にはどこか引っかかるものが残る。
■最新話で一気に深まる疑念
2024年7月25日に公開された第4話では、新キャラクターが登場し、物語はさらに緊張感を増す。誰もが何かを隠しているような表情を浮かべ、善悪の境界が曖昧になっていく展開に、読者の疑念は一気に膨らんでいく。「この人も怪しい」「いや、あの行動は…」と、読み進めるほどに考察が止まらなくなる構成は、本作ならではの魅力だ。
■“気が利かない夫”というリアルな恐怖
作者の鳩ヶ森さんは、作中の夫について「食いつくし系というより、徹底的に気が利かない男」と語る。妻の食事や感情に意識が向かないことを“悪意ではなく当然”として処理してしまう男性像は、多くの読者にとって他人事ではない。2人分のバターを使い切るという行為は、その象徴だ。
ささいでありながら、確実に人を追い詰める違和感。その積み重ねが、10年前の事件とどうつながっていくのか――。物語は静かに核心へ近づいていく。
■すべてがそろう、その瞬間を待て
物語には、まだ未登場の重要人物が控えているという。その人物が姿を現したとき、「仮門」は解決編へと突入する。登場人物の表情、言葉の端々、何気ない行動の違和感を拾いながら、犯人と動機を推理してほしい。読み終えたあと、「あの朝食シーンは、最初から伏線だったのか」と気づかされるはずだ。
取材協力:鳩ヶ森(@hatogamori)
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