爪に発生するメラノーマは他の部位に比べて発見が遅れやすく、患者さん自身だけでなく医療従事者にとっても診断が難しい場合があります。マニキュアやジェルネイルで覆われていることや、外傷による変色と勘違いしてしまうことが、見逃される要因となっています。ここでは発見が遅れる理由と適切な受診タイミングについて説明します。

監修医師:
本木 智輝(医師)
新潟大学卒業
日本医科大学皮膚科助教
爪のメラノーマが見逃されやすい理由
爪に発生するメラノーマは、他の部位に比べて発見が遅れやすい傾向があります。これにはいくつかの理由があり、患者さん自身だけでなく医療従事者にとっても診断が難しい場合があることが知られています。
マニキュアや外傷との混同
爪のメラノーマが見逃されやすい理由のひとつに、日常的な習慣や軽い外傷と勘違いしてしまうことがあります。特に女性はマニキュアやジェルネイルで爪を覆っていることが多いため、色や形の変化に気づきにくくなりがちです。
ジェルネイルの場合、数週間〜1ヶ月つけっぱなしにする人も多いため、付け替えのタイミング(3〜4週間に一度)で必ずネイルを外して爪の状態をチェックすることが大切です。
自爪の色・筋・変形など、いつもと違う点がないか定期的に確認する習慣を持つことで、早期発見につながります。
また、手足の爪は日常生活の中で外傷を受けやすい部位でもあります。ドアに挟んだ、重いものを落とした、靴が当たったといった経験は誰にでもあるでしょう。このような外傷の記憶があると、爪の変色を打撲による内出血と考えてしまい、医療機関への受診が遅れることがあります。
さらに、爪の変化が緩やかに進行する場合、見慣れてしまって異常に気づかないこともあります。毎日見ている自分の爪の変化は、他者から指摘されて初めて気づくケースも少なくありません。家族や友人から爪の変色を指摘された場合は、軽く考えずに専門医の診察を受けることをおすすめします。
受診すべきタイミングの見極め
爪の変化に気づいたとき、どのタイミングで医療機関を受診すべきか迷うことがあるかもしれません。基本的には、原因不明の爪の変色や変形を認めた場合、特に以下のような特徴がある場合は早めの受診が推奨されます。
幅が3mm以上の黒褐色の縦線が現れた場合、時間とともに線の幅が広がったり色が濃くなったりする場合、線の境界が不明瞭でぼやけている場合、爪の周囲の皮膚にも色素沈着が及んでいる場合などは、特に注意が必要なサインです。
また、明らかな外傷の記憶がないにもかかわらず爪に変色が現れた場合、あるいは外傷後の変色が3ヶ月以上経過しても改善せず、爪が伸びても変色部分が移動しない場合も受診の目安となります。
一本の爪だけに変化が現れている場合は、複数の爪に変化がある場合よりも注意が必要とされています。年齢的には、成人以降、特に50歳以上で新たに爪の色素線条が出現した場合は、より慎重な評価が必要になります。
まとめ
メラノーマは早期に発見できれば治療可能な疾患です。自覚症状に乏しく見逃されやすいという特徴を持つメラノーマですが、皮膚の変化を注意深く観察し、少しでも気になる点があれば専門医に相談することで、早期発見につなげることができます。爪の縦線や皮膚のほくろの変化、特に短期間での急速な変化や出血といった症状は重要なサインです。ABCDEルールを参考にしながら定期的に自己観察を行い、見えにくい部位は家族の協力を得て確認することが推奨されます。紫外線対策などの予防とともに、リスク因子を持つ方は定期的な専門医による検診を受けることで、メラノーマの早期発見と適切な治療につなげていきましょう。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス「皮膚がん」
日本皮膚科学会「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン」
日本皮膚悪性腫瘍学会
慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト「メラノーマ(悪性黒色腫)」

