在宅医療は、通院が難しい患者さんが自宅で安心して診察や治療を受けられる仕組みです。近年は認知症を理由に、在宅医療を導入するケースが増えているそうですが、「いつから始めたらいいのか?」を迷う家族も少なくありません。そこで、認知症と在宅医療の関係について、内田先生(医療法人社団貞栄会)に解説してもらいました。
≫【1分動画でわかる】「認知症」の人が在宅医療を始めるタイミングは?
監修医師:
内田 貞輔(医療法人社団貞栄会)
2015年、32歳の若さで静岡市に静岡ホームクリニックを開院。翌年、医療法人社団貞栄会を設立し理事長に就任後、東京・千葉・名古屋・横浜にもクリニックを開設。著書に、『家族のための在宅医療読本』など。医学博士。日本在宅医療連合学会評議員・在宅専門医・指導医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医、日本リウマチ学会リウマチ専門医・指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本緩和医療学会緩和医療認定医、日本抗加齢医学会専門医、難病指定医師、肢体不自由指定医師。
在宅医療の基礎を医師が解説!
編集部
在宅医療とはどのようなものですか?
内田先生
在宅医療は、病気やそのほかの理由で通院が難しい患者さんが、自宅で診察や治療を受けられる仕組みです。医師や看護師などが定期的に訪問し、診察や治療、ケアだけでなく、必要に応じて検査や薬の処方もおこないます。
編集部
在宅医療のメリットは何でしょうか?
内田先生
住み慣れた環境で安心して治療を続けられるため、患者さんのストレスが軽減されます。また、病院に行く必要がないので、介護する家族の身体的負担や時間的負担も少なくなります。さらに、病院だと、血液検査の結果や「歩けているか」「排泄はどうか」といったADL(日常生活動作)くらいしか診られないケースも、在宅医療だと実際に生活している家屋の状況や日頃の食生活を我々が把握できます。趣味活動が続けられているか、好きなものが食べられているかなど、IADL(手段的日常生活動作)も含めたサポートが可能になるのも大きなメリットです。
編集部
在宅医療を始める際に不安に思う人も多いと思います。
内田先生
初めて導入する際は、不安があって当然です。しかし、在宅医療は医師だけでなく看護師、介護スタッフも連携して支える仕組みが整っており、患者さんとご家族に合わせたサポートが可能なので安心してもらいたいです。
編集部
どのような人が在宅医療の対象になるのですか?
内田先生
通院が困難な人であれば、どんな疾患でも在宅医療の対象となります。骨折や脳卒中をきっかけに外出が難しくなった人、がんや慢性疾患で通院が難しい人、呼吸器が付いていて自由に動けない人、ありとあらゆる疾患の人が在宅医療を受けています。最近は、認知症のように身体は元気でも通院が難しいケースは増えており、幅広い人が対象となっています。
体は元気な認知症の人も在宅医療は受けられる
編集部
認知症の人も在宅医療の対象になるのですか?
内田先生
はい。高齢者が要介護になる原因の第1位が認知症です。身体の活動性は保たれていても、通院や治療を拒否するようなケースでは、在宅で診察を受けられることが大きな助けになると考えます。
編集部
在宅医療では認知症のどのような症状に対応できますか?
内田先生
強い興奮や不眠などがあれば薬で症状を和らげることもありますが、基本は生活支援です。実際の家屋環境や個々の生活を見て、困っている症状の対処法をアドバイスしたり、家事が難しい場合はヘルパーが入ってサポートしたりします。
編集部
「頑張って病院に連れて行かなければ」と思っている人も多い気がします。
内田先生
そういうご家族もいます。しかし、在宅医療は、自宅という慣れた環境で診察を受けられるため、本人の不安や混乱が少なく、リラックスして医療を受けることができるのはメリットだと思います。病院の受診を強く拒む人でも、自宅なら穏やかに診療を受けられるケースも多いです。さらに、本人だけでなく付き添いの人の負担や心理的ストレスも軽減されるでしょう。「外に出たほうがよい」という考えもわかりますが、在宅医療のよさも知ってもらいたいです。

