同じ悩みを持つ方も多いのかなと思い、今回はこんなテーマにしてみました。
冬は、気管支喘息を持つ歌手にとって、少し怖い季節です。
喉だけではなく、息そのものが冷たい空気に触れた瞬間、
思い通りにいかなくなることがあります。
普段は忘れていられるほど落ち着いていても、
冬の乾いた空気や、急に冷え込んだ空気によって、
呼吸が「自分のものじゃない」ように暴れ出すことがあるのです。すると歌うどころではなくなってしまいます。
冬の喘息を悪化させやすい“あるある”
私の場合、引き金になりやすいのはこの3つです。
・冷たく乾いた空気
外に出た瞬間の「ヒュッ」とする感じ。外でのライブもあるので重要!
・室内の乾燥とホコリ
暖房で空気がカサカサになり、舞い上がる。リハーサルスタジオやツアーの滞在ホテルも要注意!
・感染症
風邪・インフルエンザなどの呼吸器感染で一気に崩れる
私が冬にやっている(やるようにしている)対策
※ここからは“生活の工夫”としての話です。薬の使い方については、必ず主治医の指示に従っています。
1)外の空気を「そのまま吸わない」
寒い日は、できるだけ鼻で呼吸し、口呼吸を減らします。
それだけでも、鼻が空気を少し温めてくれて、刺激が和らぐ感覚があります。
さらに、外に出るときはマスクで鼻と口を覆い、
冷気の直接侵入を防ぎ、吸う空気を少し湿らせるようにしています。
2)室内は「乾燥しすぎ」も「加湿しすぎ」も避ける
暖房の季節は空気が乾きやすいため、加湿はとても大切です。
一方で、加湿しすぎると喘息の天敵でもあるカビなどの問題が出てくるため、
湿度は50%前後を目安に過ごしています。
また、加湿器を清潔に保つことも重要ですね。
ツアーなどで移動が多い時期は、移動中やホテルもかなり乾燥します。
携帯用の加湿器や濡れマスクを持参し、
ホテルも事前に加湿器を借りられるか確認して選ぶようにしています。
鼻うがいとうがい薬の使用は毎日行っています。粘膜を乾燥させずウィルス撃退!!
3)“家の中のトリガー”を減らす
冬は外より室内で過ごす時間が増え、セーターなど衣類も多くなるため、
ホコリ・ダニ・カビ・ペットなどの刺激にも注意が必要です。
換気やフィルター管理、こまめな掃除に加え、
空気清浄などで「吸う空気の質」を整える意識を高めています。
スタジオでのリハーサル時も、楽器の運搬などでホコリが立ちやすいため、
マスクをしたり、なるべく換気をしたりと気をつけています。
4)「アクションプラン」を作って、悪化の芽で止める
喘息は、気合ではどうにもならない日があります。
だからこそ、「悪くなり始めたときに、早めにどう対処するか」を
主治医と相談しながら、事前に決めておくようにしています。
何か症状が出始めた時、なるべく早く対策ができると悪化を防ぐことができます。
それは風邪対策も同様です。風邪は喘息悪化の引き金になるので、私は呼吸器科と耳鼻咽喉科の主治医を決めています。
5)運動・リハ・ダンス前は「ウォームアップ」と「冷気対策」
体を動かしたり、リハーサルで息が上がる場面では、
喘息のある人にとって事前の準備がとても大切です。
いきなり動いたり、急な空気の温度変化があると、
発作の引き金になることがあるため、特に注意しています。
歌手として、冬に気をつけたい“やりがち”
ここは、私自身への戒めでもあります。
・「ちょっと苦しいけど、今日だけ」は後から響く
・乾燥した環境での長時間リハは、気管が荒れやすい
・香りの強いもの(スプレーやアロマなど)は、刺激になることがあるため慎重に
そして何より、然るべきタイミングで「休む決断」をすることが大切です。
無理は禁物。
しっかり息を守り、歌声をキープしなければなりません。
私のステージ上には、酸素缶と吸入器を置いてあります。
それは不安のためではなく、万が一に備えるための、私なりの準備です。
気管が整うようにセットリストを組み、
演出の中でうまくブレイクを取り、息を整え、良いタイミングでMCを挟みます。
万が一の事態に備えた別パターンの対策も、スタッフと共有し、
事前にプランBを立てておきます。
自分が悪くなるパターンを知り、日頃から体を整え、
主治医と相談しながら対策を重ねていけば、
気管支喘息があっても、2時間以上のライブで踊って走って歌うことはできます。
私は、決して重度の喘息というわけではありませんが、
検査では平均より気道が狭いと言われています。
それでも、問題なくライブを続けることができています。
もし、喘息を持ちながら歌手を目指している方がいらっしゃれば、
この経験が少しでも参考になれば嬉しいです。

