完璧だった彼はモラハラ夫に…“夫デスブック”にハマっていく主婦に「自分の話しかと思いました」【漫画】

完璧だった彼はモラハラ夫に…“夫デスブック”にハマっていく主婦に「自分の話しかと思いました」【漫画】

『夫の死を願ったらダメですか?』が話題
『夫の死を願ったらダメですか?』が話題 / (C)草餅よもぎ、まきりえこ/KADOKAWA

コミックの映像化や、小説のコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、原案:草餅よもぎさん、作画:まきりえこさんの作品『夫の死を願ったらダメですか?』(KADOKAWA)をピックアップ。

原案を手掛けた草餅よもぎさんがX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、多くの「いいね」と反響が寄せられた。本記事では、草餅よもぎさんとまきりえこさん、お二人にインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。

■モラハラ被害を受けた妻がハマった“#夫デスブック”
『夫の死を願ったらダメですか?』(33/79)
『夫の死を願ったらダメですか?』(33/79) / (C)草餅よもぎ、まきりえこ/KADOKAWA


主人公の雪村梨央は、エリートサラリーマンの夫・亮と結婚し、当初は幸せな日々を送っていた。家事も積極的に担ってくれる夫は、もったいないほど完璧な人だと思っていた。

結婚して2年、双子を妊娠していることがわかる。つわりがひどい時もサポートしてくれる夫だったが、無事に二人の娘を出産してから徐々に状況は変わっていく。

最初は育児にも協力的であった夫だったが、双子の育児で疲れ切っている中、3人目の話を持ち出す。さらに育児を手伝ってくれていた義母にまで「子どもは早く生んだ方がいい」と言われモヤモヤする梨央。

その後、娘が3歳になったころ再び妊活をすることに。なかなかうまくいかない妊活に夫はいら立ちを見せ始める。いつの間にか家事もやってくれなくなり、さらに梨央に身なりにもう少し気をつけろ、とまで言ってくるように。

その後、夫のモラハラ発言・態度は段々とエスカレートしていく。

「あんなに優しくて完璧だった夫は もういなくなってしまった」

そんな時、梨央はネットで「#夫デスブック」という投稿を見つける。そのハッシュタグに紐づく投稿は過激で、怖さを感じつつも共感してしまう梨央。そして、ついに梨央もSNSでアカウントを作り…?

作品を読んだ読者からは、「酷すぎ」「こんなヤツ本当にいるの?」「過去の自分と重なり共感出来ました」など、反響の声が多く寄せられている。

■原案・草餅よもぎさん「「言えない本音」を作品として形にしてみたい」、作画・まきりえこさん「多様な事情を抱えた彼女たちの立場に寄り添って描きたい」
『夫の死を願ったらダメですか?』(65/79)
『夫の死を願ったらダメですか?』(65/79) / (C)草餅よもぎ、まきりえこ/KADOKAWA


――『夫の死を願ったらダメですか?』を創作(作画)されたきっかけや理由などをお教えください。

草餅よもぎ:夫婦や家族など身近な関係の中では、心の中にしまい込んでしまう感情が少なくありません。

とくに「死を願う」という思いは誰にも打ち明けられないほど重く、口にすることすら難しいものだと思います。

だからこそ、そうした「言えない本音」を作品として形にしてみたいと考えたのが創作のきっかけでした。  

まきりえこ:草餅よもぎさんのアイデアを編集さんから持ち込まれまれたのがきっかけです。

「旦那デスノート」からの発想だというアイデアを聞いて「ぜひ描かせてください」と即答だったと思います。

社会的な現象となった「旦那デスノート」ですが、単に「妻の鬱憤の吐口」ではなく多様な人間模様が読み取れる場所でした。

憂さ晴らしで書き込む妻、ユーモアで書き込む妻、本気で夫に死んでほしい妻。本作にも温度差のある妻たちが描かれます。

これを読んでいらっしゃる方が既婚者だとして、自分の配偶者への温度感を再点検できるのではないでしょうか?

――今作を創作(作画)するうえで、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。

草餅よもぎ:どうして夫の死を願うことになってしまったのか、その理由や背景がきちんと伝わるように心がけました。

主人公も「夫の死を願うなんて最低だ」と自覚しながら、願わざるを得ない状況を読者さんにも伝わるように丁寧に表現できたと思います。

まきりえこ:夫を殺したいとまで思い詰め、webで集って日々の屈託を解消している妻たち。

「現実をどうにかすれば?」「憎しみをもっと前向きなエネルギーに変えれば?」など、外野はなんとでも言えると思いますが、多様な事情を抱えた彼女たちの立場に寄り添って描きたいと思いました。

彼女たちをジャッジする目線になったら間違うと思って描きました。

――『夫の死を願ったらダメですか?』のなかで、特に見てほしいシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

草餅よもぎ:選ぶのが難しいのですが、主人公が夫のモラハラ、不倫に気付いて怒りが爆発し、「#夫デスブック」に「絶対許さない!夫死ね!」と書き込むシーンです。

抑えられない感情をSNSという匿名性の高い場所に吐き出す、書く内容は違えど経験のある方の心を映す鏡のようなシーンではないかと思い、特に見てほしいシーンのひとつです。

まきりえこ:草餅よもぎさんのシナリオのセリフなのですが「モラ夫は脳をクラウド共有しているように言動が同じ」というセリフがあります。

だからこそ妻たちはお互いの状況が手に取るように共感できるのですが、毒母漫画をかつて上梓した私もモラハラな人物を考える時に同じ印象を持っていました。

彼らは生い立ちなどにより何らかの共通する精神的な問題を抱えていて、それが家庭という密室で弱いものと向き合った時に同じ出かたをする気がしています。

モラ夫に限らず自分より強い立場の人間に執拗なモラハラを受けた事のある人もない人も、全ての人にこの本で彼らの思考や卑劣な攻撃方法を辿ってほしいと思います。

次に彼らに出会った時に勇気を持って戦えるように。または、密室でターゲットにされている人たちに理解を持てるように。

また、主人公が「これまでの人生に嫌いな人、イヤな人はいたが、ここまで憎んだ相手はいない…私どうしちゃったのかな?」と呆然とするシーンがあります。

ここは重大なところで、家庭という密室で繰り返される嫁イジメの特殊性をよく表していると思います。

主人公は異常者ではなく、ごく普通に育ち、ごく普通の喜怒哀楽を持った人間だった。

その「ちょっと前までは普通だった女性」を、激しい憎悪や自己否定の世界に落とし込むのが、モラハラ夫の作った空間です。

私たちが普通に暮らす社会のすぐ隣に「密室化し、誰かが一日中叩きのめされている残酷な家庭」があることを想像してください。

誰にとっても他人事ではないんです。モラハラ夫は結婚するまでその正体がわかりにくいのですから。

――本作を通して伝えたいメッセージがあればお教えください。

草餅よもぎ:「#夫デスブック」はフィクションですが、実際に存在するタグから着想を得て書いています。

そこに寄せられる声の背景には、それぞれ複雑で簡単には語れない感情があると感じました。

そうした思いを抱くこと自体は決して悪ではなく、同じように苦しみを抱えている人が見えないところにたくさんいるということ。

そして「あなたには幸せになる権利がある、どうか自分の心を大切にしてほしい」という思いを作品を通して伝えたいです。

まきりえこ:一つ前の回答でも申し上げましたが、モラハラを行う人間には共通の特徴があります。

①弱い立場のターゲットを決めいじめ抜く。

②ターゲット以外には外面が良い。

③ターゲットは、モラハラを行う人間より劣った存在とは限らない。むしろ実は自信がないモラハラ主にとって、のびのびしてたりキラキラしてたりとコンプレックスを刺激する相手である。

④いじめや卑怯な行為は密室で行われ、被害者が外に実態を相談できないよう被害者の孤立を演出する(「お前みたいなやつに味方はいない」など)。

本作はそんな密室でいじめ抜かれていた妻が、勇気を出して外に味方を得てモラ夫に反撃する話です。

現実にモラハラに遭っている人は相手が巨大に見えて味方はいないように思っているかもしれませんが、それこそがモラハラ主たちの作った歪曲空間です。

あなたは延々とバカにされていい存在ではありません。負けないでください。密室を突き崩してください。

かつてモラハラ被害に遭った人は、この漫画でモラハラ主の弱くて惨めな実態を知って「自分に落ち度があるからあんな目に遭ったんじゃなかったんだ」と気づいて回復してほしいと思います。

――ご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。

草餅よもぎ:今後も家庭や家族をテーマにした作品を作り続けていけたらと思います。

日常に潜む小さな違和感や誰もが抱える心の葛藤を物語に落とし込み、読む人が「自分だけじゃなかった」と思えるような場所を作っていきたいです。

まきりえこ:今が苦しい人に寄り添う作品が描けたらと思います。ページを閉じた時にほんの少しの希望を持ってもらえる作品が描けたらなと思っています。

――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

草餅よもぎ:いつも応援してくださり本当にありがとうございます。

この作品は誰にも言えない気持ちを抱えたあなたに寄り添いたい気持ちで書いています。

読み終わった後、少しでも気持ちが軽くなっていたら嬉しいです。

まきりえこ:百まで漫画を描きたいので健康に留意し始めました。お酒もやめたしジョギングもしてますし(笑)。

読んでくださるあなたも、どうかいつまでも漫画で笑ったり怒ったりほろりとできる人でいてください。

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