スマホの落とし物「謝礼」はいくら?拾った人から「1〜2割」要求に戸惑いの声

スマホの落とし物「謝礼」はいくら?拾った人から「1〜2割」要求に戸惑いの声

うっかり物を落としてしまったとき、拾って警察に届けてもらえるのは、とてもありがたいことです。

一方で、予想外に「高額な謝礼」を求められ、モヤモヤしたり、トラブルになったりしたという体験談がSNSに投稿されています。

ある投稿者は、子どもが携帯電話を落としてしまったところ、通りかかった人が拾って警察に届けてくれたそうです。しかし、その後、拾得者から「携帯価格の1〜2割」を謝礼として求められ、困惑したといいます。

カメラは故障しており、買い替えも検討していたため、現在の価値はかなり低いはずだと説明したものの、納得してもらえなかったそうです。

また別の投稿者は、銀行のキャッシュカードが入った財布を落としたケースについて投稿しています。警察からは「口座に入っている金額の10%を謝礼として渡すことになる」と説明されたといい、時間や交通費の負担も考えた結果、最終的には受け取り自体を放棄したといいます。

たしかに落とし物を拾った人には、法律上「謝礼(報労金)を請求する権利」が認められています。しかし、落とした物が現金ではない場合や、価値の算定が難しい場合、どのように考えればよいのでしょうか。池田誠弁護士に聞きました。

●「買った時の価格」ではなく「返還時の価格」で考える

──現金以外だった場合や、高価と考えられる物について、謝礼の算定基準はどのように考えられるのでしょうか。携帯販売時の価格や、口座の残高などを基準に請求されることはあるのでしょうか。

落とし物をした人は、遺失物法28条1項に基づき、「物件の価格」の5〜20%の謝礼を支払う義務があるとされています。

ただし、ここで「物件の価格」とは、「買った時の価格」ではなく、返還される時点でその物がどの程度の市場価値を持っているかを指します(遺失物法等の解釈運用基準第35第1項)。

たとえば携帯電話をなくして、故障した状態で発見・返還された場合は、あくまで「故障した中古携帯電話」としての価格を基準に5〜20%の謝礼を支払えばよいことになります。

また、銀行のキャッシュカードについては、カード自体に財産的価値があるわけではありません。そのため、無価値もしくはカードの再発行手数料程度を「物件の価格」と見るべきであり、口座にいくら預金があるかを基準に謝礼を算定する考え方は誤りといえるでしょう。

なお、解釈運用基準35第3項では、警察や施設占有者が、謝礼の具体的な額について助言などをおこなうべきでないと定められています。仮にキャッシュカードを拾った人に対し、警察が口座残高を基準に「その10%程度を謝礼として渡す」と助言していたとすれば、この基準を二重に誤った対応だったと考えられます。

●謝礼の金額でもめたらどうなる?

──謝礼の金額をめぐり、落とし物をした人と拾った人の意見が対立してしまった場合、どのような対応や選択肢が考えられるのでしょうか。

先ほどの解釈運用基準は、落とし物をした人が返還を求めた場合、謝礼の支払いの有無にかかわらず、物件を返還すべきと定めています。つまり、謝礼の支払いと物の返還は、法的には別問題です。

そのため、謝礼の金額について対立があったとしても、落とした人は落とし物を返してもらうことができます。

また、謝礼の額については、大正時代の大審院(当時の最上級の裁判所)判決により、落とした人が「物件の価格」の5〜20%の範囲内で自由に決めることができるとされました。

もし、拾った人がその金額に納得できない場合は、裁判所に判断を求めることも可能です。ただし、謝礼の請求は、落とし物が返還されてから1カ月以内という期限があるため、注意が必要です。

なお、落とした人が未成年者である場合、原則として、親が法定代理人として対応することになります。

【取材協力弁護士】
池田 誠(いけだ・まこと)弁護士
証券会社、商品先物業者、銀行などが扱う先進的な投資商品による被害救済を含む消費者被害救済や企業や個人間の債権回収分野に注力している下町の弁護士です。債権回収特設ページURL(https://nippori-law-saikenkanri.com/)
事務所名:にっぽり総合法律事務所
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