会社の懇親会に参加したところ、三次会で入ったガールズバーで上司からセクハラを受けた──。
毎日新聞によると、ITエンジニアの女性が労災認定を求めた訴訟で、大阪地裁は12月15日、不支給とした国の処分を取り消したという。
業務終了後の二次会、三次会で起きたセクハラが、労災と認められるケースは多くないようだ。
一方で、裁判や社内手続きの場面では、こうした行為が「セクハラ」と判断される例は少なくない。
すでに忘年会シーズンに入っているが、今回の大阪地裁判決のポイントについて、労働問題にくわしい今井俊裕弁護士に聞いた。
●三次会でガールズバーに入った
毎日新聞や関西労働者安全センターなどによると、女性は有期雇用で、IT関連企業の西日本支社に勤務していた。
2019年6月、東京出張で社内発表会に出席した後、会社主催の懇親会に参加。さらに西日本支社長らとともに二次会、三次会にも出席した。
三次会として入ったガールズバーでは、西日本支社長の指示で、女性店員とのキスや身体接触を強いられたという。
その後、女性は適応障害を発症し、休職を余儀なくされたという。
女性は労災申請をしたが、労基署は2020年、「三次会への参加は個人の意思によるもの」として不支給の処分を下していた。
今井俊裕弁護士は次のように解説する。
●業務終了後の飲み会は「業務遂行性が否定されがち」
発症した病気が労災と認められるためには、主に次の2つの要件を満たす必要があります。
(1)病気の原因となる出来事が生じたときに、労働者が事業主の支配下にあったこと(業務遂行性) (2)その支配下で生じた出来事が、病気の原因であること(業務起因性)
(1)の業務遂行性については、業務終了後の懇親会や飲み会が問題となることが少なくありません。こうした場は、自由参加であることも多く、必ずしも上司や管理職全員が出席するとは限りません。
そのため、業務終了後の飲み会は「事業主の支配下にあった」と評価されず、業務遂行性が否定されるケースが多いのが実情です。

