●労基署の判断が覆ったワケ
業務遂行性を判断する際には、その飲み会があらかじめ予定された一次会なのか、それとも飲み足りない一部のメンバーが流れで参加した二次会、三次会なのか、といった点も考慮されます。
今回のケースでは、労基署は「三次会への参加は個人の意思」、つまり事業主の支配下での出来事とはいえないと判断したようです。裁判所は、これを改めて検討しました。
毎日新聞などによると、裁判所は、東京出張前に西日本支社長が女性に対して「業務後の日程を空けておくように」と指示していた事実をとらえて、「三次会への出席は東京出張の行程に組み込まれていた」と指摘しました。
また、女性社員は有期雇用であり、正社員登用について西日本支社長が強い影響力を持っていたとし、「三次会へ参加を断ることは困難だった」と判断しています。
これらを踏まえて、裁判所は、女性が事業主の支配下にあったと認めて、(1)の業務遂行性を肯定したのです。
●セクハラ防止で「業務後の飲み会も配慮すべき」
次に(2)の業務起因性についてです。
セクハラとは、労働者の意に反する性的言動によって不快感を与える行為を指します。
セクハラ防止については、厚労省の指針でも、必ずしも業務時間中に限られるものではなく、業務後の飲み会などの場にも配慮すべきとされています。
毎日新聞によると、今回のケースでは、ガールズバーで支社長から女性店員とのキスや身体接触を強要されて、その結果として適応障害を発症したとされています。
女性に持病があったり、私生活上に別の明確な発症原因があったりしない場合には、このような事情から(2)の業務起因性が認められる可能性は十分にあります。

