
2PMのジュノであり、全話配信となったばかりの最新作「テプン商事」も話題のイ・ジュノ。そんな彼が実在の王イ・サンの若かりし頃を演じ、アジア中に空前の“袖先”シンドロームを巻き起こした歴史ラブロマンス「赤い袖先」(2021年)ノーカット版が、「Jテレ」で12月24日(水)から30日(火)まで一挙放送される。放送終了後はロスに陥るファンが続出し、「MBC演技大賞」8冠を獲得した大ヒット作のイッキ見チャンスに、その見どころをチェックしてみよう。
■“カリスマ”イ・サンを繊細な一人の青年として描き直す
韓国のベストセラー小説「袖先赤いクットン」をドラマ化した「赤い袖先」。ジュノが演じるイ・サンは、幼くして父を暗殺され25歳の若さで王位を継いだ実在の朝鮮王朝第22代国王だ。韓国時代劇でも圧倒的な知名度と人気を誇る名君で、ドラマ「イ・サン」(2007年)のイ・ソジンや映画「王の涙 -イ・サンの決断-」(2014年)のヒョンビンをはじめ、ドラマや映画でも幾度となく人気俳優によって演じられてきた。
「赤い袖先」で描かれるのは、そんなイ・サンの若かりし日々の物語。筋骨隆々で威厳たっぷり、何事にも動じないカリスマとして描かれることが多いサンを、王の責務とヒロインへの思いのはざまで苦悩する繊細なキャラクターとして描き直し、全く新しいイ・サン像を生み出した。
まだ世孫だったサンは、宮中の書庫で聡明だが勝ち気な宮女ドギム(イ・セヨン)と運命的な出会いを果たす。世孫の重圧に苦しんでいたサンは言いたい放題のドギムに癒され、ドギムもそんなサンに引かれていく。
だが、没落した一族の娘であるドギムにとって“王の女人”となることは、“ドギム自身の人生”の喪失を意味していた。それでもドギムは側室となることを決断し、宮女の正装である赤い袖先の衣を身にまとう。それは2人の幸せな日々の始まりであり、同時に孤独と苦しみの始まりでもあった――。

■ジュノ、16キロ減量&利き腕を変えて“イ・サン”を体現
そんな本作の大きな魅力の一つがまさに、ジュノが努力と集中力で作り上げたイ・サン像だ。バラエティーで「オン・オフの切り替えが難しくて、出演中は日常生活にも役の影響が出てしまう」と話すジュノは、その分すさまじい努力と集中力で演じるキャラクターを体現してきた。
2008年に“野獣アイドル”2PMのメンバーとしてデビュー後、2013年に本格的に俳優として活動を開始。時代劇初挑戦だった映画「メモリーズ 追憶の剣」(2015年)ではイ・ビョンホンと共演し、激しい殺陣やワイヤーアクションをスタントなしで実演。初めてのキスシーンもこの作品で経験し、大きな話題を呼んだ。
「色男ホ・セク」(2019年)では朝鮮時代の伝統的な琴や舞踊をマスターし、爪の先まで色気たっぷりの男妓生(キーセン)を魅力的に演じた。対してオフィスコメディードラマ「キム課長とソ理事~Bravo! Your Life~」(2017年)では“悪役キャラ”に初挑戦。コミカルなやりとりの中で芽生えるキム課長(ナムグン・ミン)とのブロマンスにハマるファンが続出し、「KBS演技大賞」ではミンとジュノが「ベストカップル賞」を受賞。ドラマ界をおおいに沸かせた。

その努力と集中力は「赤い袖先」でも健在で、カリスマあふれる王の繊細な面を引き出すため、16キロ減量して役作り。もともと左利きだが食事のシーンでは箸を右手で使うなど、細部までイ・サンとして生きることにこだわった。
特に視聴者の心をとらえたのは、ドギムの本心が分からないサンが恋心に振り回される姿。若くして王になり、国政を最優先にしながらもドギムのことが頭から離れないサンが、思わず護衛に恋のアドバイスを求める場面も…。威厳あふれる王としての姿と、ドギムにだけ見せ“恋する男”のギャップこそ、本作ならではのサンの魅力だ。
■好感度抜群!イ・セヨンが体現した明るく元気なヒロイン像
対するドギムを演じたのは、透明感ある美貌と芯の強そうな瞳が印象的な俳優イ・セヨン。10歳にして「宮廷女官チャングムの誓い」(2003年)で主人公チャングムのライバル・クミョンの幼少期を演じて注目を集め、天才子役として名を馳せると、その後も数々の作品に出演。「王になった男」(2019年)ではヨ・ジング演じる王の影武者に引かれる王妃を演じて“時代劇クイーン”と呼ばれた。
最近では、運命的に引かれ合う日韓カップルの出会いと別れ、再会を描いたラブストーリー「愛のあとにくるもの」(2024年)に出演。相手役・坂口健太郎とのロマンス演技に加え日本語のせりふにも挑戦し、おおいに話題を集めた。
「赤い袖先」では、勝ち気で聡明、元気いっぱいのドギムがストーリー前半を明るく引っ張っていく。序盤、書庫で働くドギムがサンと顔を合わせるシーンでは、上質だが質素な服装で現れたサンがまさか世孫とは思わず、「誰ですか?」と強めに質問。「私は…知らずともよい!」と名乗らないサンを不審者と誤解し、ほうきでたたいて追い出そうとするくだりに彼女のハツラツとした魅力が詰まっている。「無礼者!私が…私が…!」“世孫である!”と言う前にサンを追い出し、「身なりはいいのに変な人ね」と訝しがる姿がなんともヒロイン然としてチャーミングだ。
そんな元気いっぱいの前半があるからこそ、後半、サンへの愛情と“王の女人”という立場への恐怖の間で揺れ動くドギムの心情が胸に迫る。
■「台本100冊受け取りました」ジュノの熱演に大反響!
そんな2人が体現した、ときに甘くときに苦しいロマンスが視聴者の心を捕らえた。2021年の韓国放送時、初回5.7%だった視聴率はぐんぐん上昇し、最高視聴率は17.4%を記録。2人のロマンスだけでなく、サンと祖父・英祖との複雑な関係や、窮屈な暮らしの中でも恋バナで盛り上がる宮女たちの日常までを繊細な演出で描き、華やかな映像美も注目を集めた。
あまりの人気ぶりに1話延長も決まり、最終回前に行われた「MBC演技大賞」ではジュノとセヨンがそろって最優秀演技賞&ベストカップル賞を獲得したのをはじめ8冠という席巻ぶり。切ないエンディングの余韻も相まって、最終回終了後はロスに陥るファンが続出し、空前の“袖先シンドローム”を巻き起こした。
この作品で一躍トップ俳優の座を獲得したジュノ。放送後は「全てのドラマのオファーがまずジュノに舞い込む」と言われたほどで、「赤い袖先」放送終了の半年後にバラエティー「ユ・クイズ ON THE BLOCK」に出演した際には「台本100冊受け取りました。ゆっくり検討しているので時間がかかりました」と驚きの反響を打ち明けた。
それほどまでの大反響を呼んだ2021年の大ヒットロマンス時代劇「赤い袖先」。本作のノーカット版が、Jテレにて12月24日から30日の間、毎日夜8時~深夜0時に放送される(※12月24日[水]、25日[木]は夜11:00まで、12月29日[月]は夜11:15まで、12月30日[火]は夜11:45まで)。このイッキ見チャンスに、王としての立場とドギムへの思いのはざまで揺れるジュノのイ・サン、そして全てを捨ててサンの思いを受け入れるドギムの短くも幸福な愛の物語にどっぷり浸かりたい傑作だ。
◆文=酒寄美智子


