「周辺症状」とは?
中核症状を土台として、ご本人の性格や環境、心理状態などが影響して現れる二次的な症状です。「行動・心理症状(BPSD)」とも呼ばれます。
重要なのは、BPSDの背景には、ご本人の不安だけでなく、身体的な苦痛(痛み、かゆみ、便秘など)や、環境への不満、不適切なケアなどが隠れていることが多いという点です。
なので周辺症状が見られたら、必ず原因を考えて見てください。
認知症の中核症状
では、具体的にどのような中核症状があるのか見ていきましょう。
①記憶障害
認知症で最もよく知られる症状です。
特に、「新しい出来事を覚えられない」のが特徴で、「さっき食べた朝ごはんの内容」ではなく、「食べたこと自体」を忘れてしまいます。
ご本人に忘れた自覚がないことも多いため、忘れていることを強く指摘すると、ご本人を傷つけ、不安にさせてしまいます。「そうだったのね」と一度受け止め、さりげなく手助けする姿勢が大切です。
② 見当識(けんとうしき)障害
時間、場所、人物などが分からなくなる症状です。
最初は「今日の日付が分からない」といった時間の混乱から始まり、進行すると「慣れた道で迷う」「家族の顔が分からない」といった場所や人物の混乱へと広がります。
ご本人が混乱している時は、まず安心させることが第一です。目立つ場所に大きなカレンダーを置くなど、視覚的に分かりやすい環境を整えることが助けになります。
③ 理解・判断力の障害
物事を筋道を立てて考えたり、状況に応じて判断したりすることが難しくなります。
「一度に複数のことを頼まれると混乱する」「季節に合わない服装をする」といった様子が見られます。
話しかける際は、「ゆっくり、はっきりと、短い言葉で」、一度に伝える情報は一つに絞ると、ご本人も理解しやすくなります。
④ 実行機能障害
計画を立て、段取りよく物事を進めることができなくなる症状です。
長年続けてきた料理の手順が分からなくなったり、電化製品の操作に戸惑ったりするのが典型的な例となります。
一つの作業に集中できるよう、周りの環境をシンプルに整え、隣で一緒に作業するなど、ご本人の不安を和らげる工夫が有効です。
⑤ 失行・失認・失語
これらは特定の脳機能の低下によって起こる症状です。
・失行(しっこう):体の機能は正常なのに、お箸の使い方や服の着方など、日常的な動作ができなくなります。
・失認(しつにん):目や耳は正常なのに、見たものが何か、聞いた音が何かを認識できなくなります。
・失語(しつご):言葉を「話す・聞く・読む・書く」ことが難しくなります 。
ご本人が伝えようとしていることを急かさず、ジェスチャーを交えるなど、コミュニケーションの工夫が大切になります。

