「古い差し歯や銀歯の見た目が気になる……」。このような悩みの解決策として、自然で美しい口元を取り戻せる「セラミック」という選択肢があります。一方で、セラミックに関しては「歯にダメージはない?」「費用や期間はどの程度かかるの?」など気になる点も少なくありません。そこで、セラミックへ切り替えるメリット・デメリットや費用・期間、注意点などを、さくらぎファミリー歯科の櫻木先生に聞きました。
※2025年10月取材。
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監修歯科医師:
櫻木 慎也(さくらぎファミリー歯科)
所属は日本歯周病学会、日本先進医療機関JIADS(The Japan Institute for Advanced Dental Studies)ほか多数
古い差し歯・銀歯をセラミックに替えるメリット・デメリット
編集部
はじめに、セラミック治療とはどのような治療なのか、簡単に教えてください。
櫻木先生
セラミック治療とは、陶器と同じ白い素材でつくられた詰め物・被せ物を入れる治療の総称です。代表的な素材に、100%セラミックでつくる「オールセラミック」、人工ダイヤモンド並みの強さをもつ「ジルコニア」などがあります。また、昔からある金属にセラミックを焼き付けた「メタルボンド」や、ジルコニアの表面にセラミックを焼き付けたものなど、その構造もさまざまです。これらを総じてセラミック治療と呼び、見た目の希望や噛み合わせにあわせて最適な素材を選んでいきます。
編集部
実際に「古い差し歯や銀歯をセラミックに替えたい」という患者さんは、どのような理由で治療を希望することが多いですか?
櫻木先生
やはり、見た目を気にされて治療を希望する人が多いです。「口を開けたときに金属が目立つ」「差し歯と歯ぐきの境目が黒ずんできた」という相談をよく受けます。こうした見た目の変化をきっかけに、セラミックへの交換を希望する人が多い印象です。
編集部
「見た目(審美性)」のほかに、差し歯や銀歯をセラミックにするメリットはあるのでしょうか?
櫻木先生
適合性が高い点も、セラミックの大きな利点です。修復物と歯の境目にできる段差を限りなく少なくできるため、食べかすやプラークなどの汚れが溜まりにくくなります。さらに、表面が滑らかでブラッシングがしやすく、傷もつきにくいため清潔な状態を保ちやすいのもメリットです。
編集部
一方で、古い被せ物や銀歯をセラミックに替える際に、デメリットやリスクはないのでしょうか?
櫻木先生
まず、費用面が挙げられます。セラミック治療は保険が適用されないため、どうしても費用が高額になります。また、セラミックは丈夫な素材ですが、絶対に割れないわけではありません。とくに、複数の歯をつなげるブリッジや、歯ぎしりが強い人は、過度な力がかかることで割れてしまう可能性があります。
編集部
セラミック治療については、「歯を多く削る」という話もよく聞きますが、こちらについてはいかがですか?
櫻木先生
かつてはそのように言われていましたが、近年はジルコニアなど物性のよい素材も登場したため、多く削らなくても十分な強度が保てるようになっています。したがって、削る量に関しては銀歯とそれほど大きな違いはありません。
自分に合っている? セラミックが向いている人と注意が必要な人
編集部
以上の特徴をふまえると、どのような人がセラミックの交換に向いているといえますか?
櫻木先生
やはり、一番は「見た目の美しさ」を重視される人だと思います。くわえて、お口の中に金属が入っていること自体に抵抗がある人にもセラミックはおすすめです。金属については医学的な観点からも、将来的にむし歯の再発リスクが高くなる可能性や身体に影響を与える可能性などが報告されています。そのため、長い目で見て体に優しい素材を選びたいという人は、積極的にセラミックを選ばれている人が多い印象です。
編集部
反対に、セラミックへの交換をおすすめしにくい、あるいは注意が必要なケースはありますか?
櫻木先生
歯ぎしりの習慣のある人や、食いしばる力が極端に強い人は注意が必要です。1本の被せ物・詰め物であればそれほど大きな問題はありませんが、複数の歯をつなぐブリッジにセラミックを使用する場合、強い力がかかると割れてしまう可能性があります。
編集部
そうすると、歯ぎしりや食いしばりをしている場合はセラミックを選ばないほうがよいのでしょうか?
櫻木先生
たしかに、セラミックのブリッジに関してはリスクがありますが、だからといって「金属のブリッジなら安心か」というと、そうではありません。むしろ金属は硬すぎて割れない分、ご自身の歯が割れてしまうリスクがあります。つまり、セラミックが割れるということは、ブリッジを支えている歯に大きな負担がかかっているサインでもあるわけです。したがって、そのようなケースについては、入れ歯やインプラントなどほかの治療法を検討してもらう場合もあります。

