良一は美也子のスマホから達治に直接電話をかけ、毅然とした態度で対応します。元カレの暴走から家族を守る夫の姿に、美也子も思うところがあったようで―――。
夫が元カレと直接対決
良一は私のスマホの通話ボタンを押し、そのまま達治との電話に出ました。彼の声は低く、しかし驚くほど冷静でした。隣にいる私にも、達治の戸惑ったような声が小さく聞こえてくる。
「達治? 俺だけど」
良一は達治が何かを言う隙を与えません。まるで、店でトラブル対応をする時のように、理路整然と、しかし有無を言わせない口調で話を切り出します。
「お前が美也子に何を言ったか、全部聞いた。まず、美也子のおなかにいるのは俺の子だから、冗談でもお前の子とか言うな」
達治が何か言いわけをしようとしているのが聞こえたように思えましたが、良一はそれを遮ります。
「次に20万のことだけど、それは受け取れない。当時のことは今清算すべきものじゃない。今後は俺が美也子を養うわけだから、お前から金をもらう義理はない」
「いや、でも…」
達治が食い下がろうとすると、良一は少し声を大きくして制しました。
「今更の20万円だなんて、お前の自己満足でしかない。悪いけど、もう美也子に連絡しないでくれ」
良一の言葉には、強い意志と、私を守ろうとする愛情があふれていました。
「二度と連絡するな」夫の愛情を感じる
達治からの反論はだんだんと弱々しくなり、最後は蚊の鳴くような声で「わかりました」とつぶやいていたそうです。
「二度と連絡してこないでほしい」と告げた後、良一は通話をきりました。隣で話を聞いていた私は、スマホを受け取ると達治をブロックし、この話はようやく決着がついたのです。
達治からの連絡のことも、20万円のことも、黙っていなくてよかったと心から思いました。隠し事にしていたら、今ごろさらに悩みは深まっていたと思います。

