
天井まで積み上がったゴミ、床下から現れる害虫の死骸。認知症の進行により不要な物を買い続ける祖母と、捨てることができない祖父。90歳を超えた二人が暮らす賃貸住宅は、いつしか足の踏み場もない「ゴミ屋敷」と化していた。漫画家の西園フミコさん(@fnishizono)は、この過酷な状況下での介護と片付けの記録を実録漫画『ゴミ屋敷住人の祖父母を介護した話』としてESSEonlineでスタートし大きな反響を集めた。
■「やらなくてよかったの?」壮絶な片付け体験を漫画にした理由



ゴミ屋敷と化した住居は、悪臭が漂い、わずかなスペースで祖父母が生活する異常な環境だった。西園さんが片付けを決行しようとしても、祖父母は「汚くない」と拒絶を繰り返す。実体験を漫画にしたきっかけについて、西園さんは「大変すぎて一周回っておもしろく感じたから」と語る。自らも泥だらけになって作業をした後、業者から「依頼主が一緒にやることは珍しい」と言われ、その苦労を昇華させるために描き始めたという。
■「強制」は解決にならない。介護の現場で得た教訓
屋敷が荒れた原因は、老いや孤独、認知症などが複雑に絡み合っている。西園さんは説得に苦労したが、最終的には時間の経過や医師の判断が解決の糸口となった。介護関係者から「強制的な片付けは関係を悪化させる」というアドバイスを受け、本人の意思を尊重しようと努めた。何を言っても否定で返ってくるコミュニケーションはしんどかったが、「祖父母への理解は深まった」と当時を振り返る。
■「老い支度は早めに」。同じ境遇の人へ贈るアドバイス
西園さんは本作を通して、「困ったらプロを頼ること」や「老い支度の話し合いを早めに始めること」の大切さを伝えている。現在は全国のおみやげを紹介する連載なども手がける西園さん。過酷な介護体験を綴った本作が、似た境遇にある読者の慰めや後押しになることを願っている。
取材協力:西園フミコ(@fnishizono)
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