尾形光琳と俵屋宗達の関係
俵屋宗達《松図襖》17世紀初め、養源院, Public domain, via Wikimedia Commons.
琳派の祖である俵屋宗達(たわらやそうたつ)は、光琳より約半世紀前に活躍した人物であり、両者の間には直接の師弟関係や血縁関係はありません。
光琳は宗達の作品を熱心に模写し、その美意識と技法を深く研究しました。光琳は宗達の美の継承者であり、その画風を独自に発展させた完成者と位置づけられます。
尾形光琳による宗達の画風の継承
尾形光琳と俵屋宗達の共通点は、宗達が確立した大胆な装飾表現と、独自の技法です。宗達は金銀箔を多用し、画面に豪華さと輝きを与えました。光琳はさらにそれを洗練させ、意匠性を高めています。
また、先に塗った絵の具が乾ききらないうちに、別の色の絵の具を垂らして滲ませ、独特のにじみや濃淡を生み出す「たらし込み技法」も宗達に学んだ技術です。光琳はこれを効果的に用いて、木の幹や花などの質感を豊かに表現しました。
《風神雷神図屏風》の競演
風神雷神図 東京国立博物館, Public domain, via Wikimedia Commons.
《風神雷神図屏風》は、両者の関係性を象徴する作品の一つです。
俵屋宗達が描いた国宝《風神雷神図屏風》は、風と雷の神をユーモラスかつ躍動的に描いた傑作です。現在は京都の建仁寺が所蔵し、京都国立博物館に寄託されています。
光琳が模写した重要文化財《風神雷神図屏風》は、宗達とほぼ同じ構図を取りながらも、細部の表現に違いが見られ、自らの様式を構築した過程が見られる作品です。現在は東京国立博物館が所蔵しています。
尾形光琳の芸術作品
尾形光琳の残した作品の多くは、絵画や工芸の分野で国宝に指定されました。その中でも代表的な作品を3点ご紹介します。
尾形光琳作品①:国宝《紅白梅図屏風》
紙本金地著色 紅白梅図 尾形光琳筆 二曲屏風, Public domain, via Wikimedia Commons.
静岡県のMOA美術館が所蔵する《紅白梅図屏風》は、中央を流れる水を銀箔で表現し、画面を左右に分断した大胆な構図が特徴的です。左隻に白梅、右隻に紅梅が描かれ、全体として静と動、紅白の鮮やかなコントラストを生み出しています。
尾形光琳作品②:国宝《燕子花図屏風》
紙本金地著色 燕子花図 右隻, Public domain, via Wikimedia Commons.
東京都の根津美術館が所蔵する《燕子花図屏風》は、『伊勢物語』の八橋の場面に題材を取りながらも、具体的な人物や橋の描写を排し、金箔の上に燕子花(かきつばた)の群生のみがパターン化して描かれています。
金地に青と緑の鮮やかな色面が際立ち、様式化と平面化が極限まで推し進められている点が特徴的です。
尾形光琳作品③:国宝《八橋蒔絵螺鈿硯箱》
国宝 八橋蒔絵螺鈿硯箱 尾形光琳作, Public domain, via Wikimedia Commons.
光琳の才能は絵画に留まらず、江戸時代・18世紀に制作された《八橋蒔絵螺鈿硯箱》のような工芸分野でも発揮されました。
《燕子花図屏風》と同様に『伊勢物語』の八橋をモチーフとしており、硯箱の曲面に螺鈿や蒔絵の技法を用いて、花と橋を大胆かつ優美に表現しています。
