血球系検査や生化学検査以外にも、特定の疾患の診断や評価に有用な検査が存在します。症状や疑われる疾患に応じて、炎症マーカーやホルモン検査、腫瘍マーカーなどが追加されることがあります。これらの検査により、感染症の種類や内分泌疾患、がんの可能性などをより詳しく評価することが可能です。ここでは炎症マーカーと感染症の関係、ホルモン検査と内分泌疾患について、それぞれの役割と意義を解説します。

監修医師:
濱木 珠恵(ナビタスクリニック新宿)
北海道大学医学部を卒業後、国立国際医療センターにて研修。
虎の門病院、国立がんセンター中央病院で造血幹細胞移植の臨床研究に従事。都立府中病院、都立墨東病院での血液疾患診療を経て、2012年にナビタスクリニック東中野院長、2016年よりナビタスクリニック新宿院長に就任。
貧血外来や女性内科などで女性の健康をサポート。
【専門・資格・所属】
血液内科、貧血、女性内科、内科一般
日本血液学会 専門医
日本内科学会 認定医
その他の重要な血液検査
血球系検査や生化学検査以外にも、特定の疾患の診断や評価に有用な検査があります。症状や疑われる疾患に応じて、これらの検査が追加されることがあります。
炎症マーカーと感染症
CRP(C反応性タンパク)は身体内に炎症があると上昇する物質で、感染症、自己免疫疾患、がんなどで高値を示すことがあります。通常は0.3mg/dL未満ですが、炎症の程度に応じて上昇します。細菌感染では急激に上昇することが多く、ウイルス感染では軽度の上昇にとどまることが一般的です。
赤血球沈降速度(血沈、ESR)も炎症の指標ですが、CRPより反応が緩やかです。慢性的な炎症性疾患の評価に用いられます。プロカルシトニンは重症の細菌感染症で上昇するマーカーで、敗血症の診断に有用とされています。
感染症が疑われる場合は、血液培養検査も重要です。血液中に細菌が存在するかを調べ、存在する場合は菌の種類と有効な抗菌薬を特定できます。ウイルス感染の診断では、抗体検査やウイルス遺伝子検査が実施されることもあります。これらの検査により、適切な治療方針を決定することが可能になります。
ホルモン検査と内分泌疾患
甲状腺機能検査では、TSH(甲状腺刺激ホルモン)、FT3、FT4などを測定します。甲状腺ホルモンは代謝を調節する重要なホルモンで、過剰(甲状腺機能亢進症)では動悸、体重減少、発汗増加などが起こり、不足(甲状腺機能低下症)では疲労感、体重増加、寒がりなどの症状が現れることがあります。
副腎皮質ホルモン(コルチゾール)、性ホルモン(エストロゲン、テストステロンなど)、成長ホルモン、副甲状腺ホルモンなど、目的に応じてさまざまなホルモンを測定できます。ホルモン異常は多様な症状を引き起こすため、原因不明の体調不良がある場合は内分泌検査が有用なことがあります。
腫瘍マーカーは、血液や体液中に存在する物質で、がんの有無を直接診断するものではなく、あくまで補助的な指標として利用されます。主に治療の効果判定や再発の早期発見に役立てられますが、単独でがんの有無を確定することはできません。CEA、CA19-9、AFP、PSAなど多くの種類がありますが、がん以外の良性疾患でも上昇することがあるため、診断には画像検査や病理検査が必要です。腫瘍マーカーは主に既にがんと診断された方の経過観察に用いられます。腫瘍マーカーの値だけでがんの有無を判断することはできないため、総合的な評価が重要です。
まとめ
血液検査は全身の健康状態を把握できる有用な検査です。血球系検査、生化学検査、その他の特殊検査により、貧血、感染症、肝臓・腎臓の機能異常、糖尿病、脂質異常症など多様な疾患の早期発見が可能となります。定期的な検査により症状が現れる前の段階で異常を捉え、適切な対処を行うことで、重篤な合併症を予防できる可能性があります。検査結果を正しく理解し、医師の指導のもとで生活習慣の改善や必要な治療を行うことが大切です。年に1回は血液検査を受け、ご自身の健康管理に役立ててください。
参考文献
厚生労働省 – 特定健康診査・特定保健指導について
日本糖尿病学会 – 糖尿病診療ガイドライン2024
日本動脈硬化学会 – 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
国立がん研究センター – がん情報サービス

