●「男性同士の入店は禁止」の店舗もあるが…
──一方で、「男性同士での入店は禁止」とする店舗もあります。ナンパや女性客への声かけなどのトラブルを防ぐ目的が多いようですが、女性同士・子ども連れを断るケースと比べて、法的な評価は同じになるのでしょうか。
結論から言えば、法的な評価の枠組みは共通ですが、正当性の判断においては結論が分かれる可能性があります。
いずれの場合も、「属性による一律排除が、社会的に合理的か」「目的と手段が釣り合っているか」が判断のポイントとなります。その意味では、女性同士・子ども連れを断る場合も、男性グループを断る場合も、同じ基準で評価されます。
ただし、「男性同士不可」とする店舗については、評価が異なり得る理由もあります。多くの場合、「過去に実際にナンパや女性客への執拗な声かけが頻発した」「女性客が安心して利用できなくなった」といった、比較的具体的で切迫した被害防止を目的としているからです。
このように、他の客の安全や利用環境を守るという正当な目的があり、かつ個別対応が難しい事情があれば、一定の合理性が認められる余地はあります。
一方で、「女性は長居する」「子どもは騒ぐ」といった理由は、行動ではなく属性そのものに基づく一般化であり、被害の具体性や切迫性が乏しいと評価されやすい傾向があります。
そのため、同じ一律排除であっても、女性や子どもを理由とした入店拒否のほうが、違法性が認められるリスクは相対的に高くなります。
ただし、「男性グループ不可」が無条件に許されるわけではありません。時間制限や注意喚起など、より緩やかな手段で対応できる場合には、一律排除は行き過ぎと判断される可能性もあります。
結局のところ、属性そのものではなく、具体的な行為に着目したルール設計かどうかが、法的評価を分ける決定的なポイントになるといえるでしょう。
【取材協力弁護士】
寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。
事務所名:てらばやし法律事務所
事務所URL:https://www.attorneyterabayashi.com/

