
わさびを醤油に溶かして食べる人は少なくない。一方で、日本料理の作法としては「わさびは素材にのせて食べる」とされており、そこにこだわる人がいるのも事実だ。そんな食事マナーをテーマに描かれたのが、ゐ(@irk_hrk)さんの漫画「箸の持ち方」である。ゐさんはこれまでも、高級レストランで無料の水を頼む男性を描いた「あ、水でいいです」など、日常に潜む“ちょっとした違和感”を切り取った作品で注目を集めてきた。今回は、食べ方そのものよりも「指摘の仕方」が大きな議論を呼んでいる。
■「親に教わらなかったの?」食べ方よりも気になった、その言い方



とある食事の席で、女性が醤油皿にわさびを溶かしていると、同席していた男性が「それマナー違反だよ」と指摘する。さらに「親に教わらなかったの?」と、わざわざ一言を付け足す。その瞬間、女性の視線は男性の手元へ向かう。そこには、見事にクロスした箸があった。
女性は「教えてくれてどうも」と大人な対応を見せるが、その目は雄弁だ。マナーを語る前に、まず自分の振る舞いを見直してほしい。そう感じた読者は多かっただろう。
■正しさだけを振りかざすより、伝え方も大切に
本作には3.7万件を超えるいいねとともに、200件以上のコメントが寄せられた。なかには「わさびは素材にのせた方が風味が立つ」という知識を共有する声もあったが、それ以上に目立ったのは男性の“言い方”への違和感だった。
「マナー違反だ」と断じるのではなく、「こうするともっとおいしいよ」と伝える選択肢もあったはずだ、という意見である。正しさそのものより、相手への思いやりが問われている場面だと受け取られたのだ。
■注意する行為そのものがマナー違反になることも
そもそも、食事の場で相手の食べ方を指摘すること自体が、場の空気を壊す行為になりかねない。楽しく食べるはずの時間に、上下関係や価値観を持ち込む必要はあるのだろうか。クロス箸の人物から「親に教わらなかったの?」と言われれば、反発を覚えるのも無理はない。本作は、マナーの正誤よりも「人と食事をするとはどういうことか」を静かに問いかけている。
■ギャンギャン、ネチネチ、笑顔で去る…怒り方にも、性格がにじみ出る
ゐさんの作品でもうひとつ話題を呼んだのが「1番怖い怒り方」を描いた投稿だ。感情をぶつける「ギャンギャン型」、理詰めで追い込む「ねちねち型」、そして笑顔のまま距離を切る「菩薩型」。
とくに菩薩型に共感する声は多く、「怒らない=許しているわけではない」というリアルな体験談も相次いだ。怒りを表に出さないからこそ、関係が終わっていることに後から気づく。その静かな怖さが、多くの読者の記憶と重なったようだ。
ゐさんは現在、noteの限定漫画や、LINEマンガで「本当にあった裏バイト ~マッチングアプリのメッセージ代行~」を無料公開している。日常の一コマに潜む“言葉の引っかかり”を描く作風は、今後も多くの共感を集めそうだ。
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