膵臓がんは「沈黙のがん」と呼ばれ、早期発見がとても難しいがんと言われています。膵臓はおなかの奥深くにあり、食べ物の消化や血糖値の調整という大切な働きをしています。しかし、がんができても痛みなどの症状がほとんど無く、体の異変に気づいたときにはすでに進行していることも多くあります。そこで今回は、なぜ膵臓がんは見つかりにくいのか、その理由と早期発見のために知っておきたいことについてAIC八重洲クリニックの澤野先生に聞きました。
≫【1分動画でわかる】膵臓がんにできると、体に現れる影響

監修医師:
澤野 誠志(AIC八重洲クリニック)
日本医科大学を卒業後、放射線治療・がん診療に従事。日本医科大学付属病院において放射線医局長を務め、癌研究会付属病院(現・がん研究会有明病院)放射線診断科副部長を歴任。現在は 「AIC八重洲クリニック」院長・理事長。AIC画像検査センター理事長を兼任し、先進画像診断技術の臨床応用と普及に寄与している。MRI、CT、PET-CT、マンモグラフィなどのモダリティを用いたがんの早期発見、とりわけ膵臓・肝臓領域の画像診断に注力している。日本医学放射線学会放射線診断専門医の資格を有する。
膵臓の働きを知る
編集部
膵臓は体のどこにあり、どんな役割を担っているのでしょうか?
澤野先生
膵臓はおなかの奥、胃のうしろにある細長い臓器です。胃や腸などの消化管に囲まれ、外からは見えにくい位置にあります。主な役割は、食べ物を分解する消化酵素をつくることと、血糖値を調整するホルモン(インスリンなど)を分泌することです。私たちが食べたものをエネルギーに変えるうえで欠かせない臓器であり、体の代謝の司令塔ともいえる存在です。
編集部
膵臓が“消化”と“血糖コントロール”の両方に関わるといわれるのはなぜですか?
澤野先生
膵臓は、外分泌腺と内分泌腺という二つの働きをもっています。外分泌腺は、膵液という消化液を分泌して、食べ物の消化を助けます。一方の内分泌腺では、血糖値を下げるインスリンや血糖値を上げるグルカゴンといったホルモンを分泌し、血糖値を一定に保っています。このように「消化」と「血糖コントロール」という異なる働きを同時に担っていることが、膵臓の大きな特徴です。
編集部
膵臓がんができると、体にどのような影響を及ぼすのか教えてください。
澤野先生
膵臓がんができると、消化酵素の分泌が減って食べ物をうまく吸収できなくなったり、血糖値のコントロールが乱れたりします。これにより、体重減少や倦怠感、糖尿病の悪化などの症状が出ることがあります。膵臓は多くの臓器に囲まれているため、腫瘍が周囲の血管や胆管を圧迫し、皮膚や目が黄色くなる黄疸(おうだん)を起こす場合もあります。
「沈黙のがん」と呼ばれる理由とは
編集部
膵臓がんはなぜ自覚症状が出にくいのか教えてください。
澤野先生
膵臓はおなかの奥深くにあり、がんができてもほかの臓器に比べて痛みを感じにくい場所です。しかも、初期の段階では臓器の働きがある程度保たれているため、体調の変化が目立ちません。食欲不振や軽い腹部の違和感といった症状が出ても、多くの人は「疲れ」や「加齢のせい」と思ってしまうことが多く、発見が遅れやすいのが実情です。
編集部
症状が出たときには進行しているケースが多いのはなぜでしょうか?
澤野先生
膵臓がんは、がんがある程度大きくなるまで周囲の臓器や神経を刺激しません。そのため、痛みや黄疸などの明確な症状が現れるころには、がんが膵臓の外へ広がっていることが多いのです。また、膵臓の周りには重要な血管が多く、早い段階で浸潤してしまうことも進行が早いとされる理由の一つです。
編集部
膵臓がんの早期発見が難しいことには、どのような背景がありますか?
澤野先生
膵臓がんは初期症状が乏しく、一般的な健康診断でおこなう血液検査や腹部エコー検査では見つけにくい病気です。膵臓が胃や腸の影に隠れているため、超音波が届きにくいのです。加えて、早期がんを確実に見つける腫瘍マーカーもまだありません。MRI検査や造影CT検査であれば発見できる可能性が高まりますが、費用や検査時間の問題から、症状のない方全員におこなうのは難しいのが現状です。その結果、無症状のうちに進行してしまうケースが多く、「沈黙のがん」と呼ばれる理由の一つになっています。

