一度の摂取で殺人や自殺の衝動も。「覚醒剤」が理性をハッキングする危険なメカニズム

一度の摂取で殺人や自殺の衝動も。「覚醒剤」が理性をハッキングする危険なメカニズム

覚醒剤は身体だけでなく、精神面にも極めて深刻な影響を及ぼします。使用直後に現れる幻覚や妄想といった急性症状から、長期使用によって生じる人格の変化や感情調節の障害まで、その影響は多岐にわたります。これらの精神症状は、本人の苦しみだけでなく周囲の方々にも大きな影響を与えるため、早期の理解と対応が求められます。

杉山 太一

監修医師:
杉山 太一(医師)

【経歴】
東京大学整形外科学教室
社会保険中央総合病院 整形外科
立正校正病院 整形外科
東京大学医学部附属病院 精神科
国立精神神経センターレジデント
東京大学医学部 精神科教室助手
葛飾橋病院精神科
ゆうメンタルクリニック 池袋院院長
葛飾橋病院(東京都葛飾区) 副院長
ワシン坂病院精神科(神奈川県横浜市) 勤務

【専門・資格・所属】
精神科・整形外科

精神保健指定医
日本精神神経学会 精神科専門医

覚醒剤がもたらす精神的な影響—幻覚・妄想から人格変化まで

覚醒剤の使用は、精神面においても深刻な影響を及ぼす可能性があります。幻覚や妄想といった急性の精神症状から、長期的な人格変化まで、その影響は多岐にわたります。

急性期に現れる幻覚・妄想・興奮状態

覚醒剤を使用した際には、急性期の精神症状として幻覚や妄想が現れることがあります。特に視覚的な幻覚や聴覚的な幻覚が多く、実際には存在しないものが見えたり、声が聞こえたりする体験をすることがあります。「殺すぞ」「死ね」などといった恐ろしい内容が突然聞こえてくるため極度の恐怖から錯乱状態となり他害行為の原因になったり、逆に抑うつポジションにいると自殺の衝動性が起きる時もあります。これらの症状は使用量が多い場合や、連続して使用した場合に出現しやすくなる傾向があります。しかしながら、単回の使用でもそうした幻覚や妄想が現れることもあります。
妄想としては、被害妄想や関係妄想が典型的です。誰かに監視されている、追われているといった被害的な内容の妄想を抱き、極度の不安や恐怖を感じることがあります。こうした精神症状は、攻撃的な行動や自傷行為につながる危険性があり、周囲の方々にも多大な影響を及ぼす可能性があります。また、極度の興奮状態に陥り、衝動的な行動を取ることで社会的逸脱行為や触法行為を起こしてしまうこともあります。

慢性使用による人格変化と感情調節の障害

覚醒剤を長期間使用すると、人格面での変化が徐々に顕在化してくる場合があります。脳の器質的な変化と脳の伝達物質の異常を背景に、感情のコントロールが難しくなり、些細なことで怒りを爆発させたり、逆に無気力で何にも関心を示さなくなったりといった変化が見られます。対人関係において適切な距離感を保つことが困難になり、社会的な孤立が進行することもあります。家族や社会的な役割を失うことも多いです。
感情調節の障害は、日常生活におけるストレス対処能力の低下につながります。うつ状態と躁状態が交互に現れる不安定な精神状態が持続し、家族や職場での人間関係に深刻な影響を及ぼします。また、薬物を体に取り込みドーパミンをフラッシュするだけが目的となり、自分に実際に役立つ本来の目的である社会的および生物的目的が失われた、快楽のみの追求と耽溺が生活の中心になるため、社会の総意とずれてしまい共感性が失われ、覚醒剤を得るためなら犯罪も厭わないいわゆる「シャブ漬け」の状態になります。道徳的判断力も薬物第一主義の脳の状態では低下してしまいます。その結果、社会規範に反する行動を取りやすくなります。

まとめ

覚醒剤は心身に深刻な影響を及ぼす違法薬物であり、使用によって取り返しのつかない結果を招く危険性があります。しかし、依存症は適切な治療と支援によって回復可能な状態です。本記事で解説した覚醒剤の作用、身体的・精神的影響、依存性のメカニズムを正しく理解し、問題に直面した際には速やかに専門機関へ相談することが大切です。

参考文献

厚生労働省「薬物乱用防止に関する情報」

国立精神・神経医療研究センター「薬物依存症について」

厚生労働省「依存症対策」

警察庁「薬物乱用の現状と対策

配信元: Medical DOC

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