
本人が悪いわけではない“脳の特性”
本書による「大人のADHD特徴」を抜粋すると、<ADHD(注意欠如多動症)は注意を続けるのが苦手・忘れっぽい・落ち着きがない・感情のコントロールが難しいなどの特性がある>(< >内は同書からの引用、以下同)。さらに<子どもの頃から見られますが、大人になってから気づくことも多く、「やる気がない」「だらしない」ではなく、脳の特性によるもの>だといいます。本人が気づいていない場合もあるので、そうなると周囲も困惑してしまうのでしょう。
今回の主人公は妻の結衣。夫の翔太は、本人は無自覚ですがADHDの特性があります。結衣の悩みによりそうのは、ADHD探偵事務所を営む精神科医ブル先生と、ADHDの行動パターンを読み解く探偵です。ふたりは結衣をどのように導くのでしょうか。






















「やりっぱなし、忘れる」の理由と対処法
昨日食べたもの、食器、服、すべて出しっぱなし。家のカギも差しっぱなし。さらに、物の場所を忘れて常に探している状態。特性を持つ翔太の場合、これらはすべて日常。それがADHDなのです。なぜ?と思ってしまいますが、そこは脳の仕組みのせい。ブル先生いわく<ADHDのワーキングメモリーはカーリング思考>。
通常のワーキングメモリーは<今ある情報と共に順次処理される>、いわば<ベルトコンベア型>。ADHDはワーキングメモリーが通常より少なく、<今ある情報が新しい情報によって押し出される>、つまりひとつの情報が入るともともとあった情報が押し出されてしまうという<カーリング型>です。
これは脳の特性なので、本人の努力ではどうにもならないといいます。だからといって、妻の結衣がいちいち夫の翔太に付き合っていたらストレスで押しつぶされてしまいます。
対策としては<境界線を決める>。余裕がある時は夫を手伝う、余裕がない時はしっかり断る。ここをはっきりさせて、相手に任せてしまうことです。
そうすることで、妻側の結衣は心の平穏を、夫側の翔太は自力でやろうという気持ちを、それぞれ持てるからです。

