《老後ひとり難民》にならないために 知っておくべき「介護保険制度」の基礎知識|沢村香苗

《老後ひとり難民》にならないために 知っておくべき「介護保険制度」の基礎知識|沢村香苗

介護保険を使うと、こんなサービスが受けられる

では、介護保険では具体的にどのような給付が受けられるのでしょうか。

実は、制度が設計された当時はさまざまな議論がありました。たとえば、年金保険で年金が給付されるように、介護が必要になった際に介護費用を現金で給付するというのも一つの考え方でしょう。

実際の日本の介護保険では、現金を給付するのではなく、民間事業者による介護サービスを給付する仕組みが採用されました。利用者は、所得にもよりますが、原則として1割負担で介護サービスを利用できるのです。

介護保険で受けられる給付には、大きく分けて(1)居宅サービス、(2)地域密着型サービス、(3)施設サービス、(4)介護予防サービスがあります。

 

(1)の居宅サービスには、福祉用具の貸与・購入、訪問介護(ホームヘルプ)、訪問入浴介護、訪問看護、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)、短期入所生活介護(ショートステイ)などがあります。

たとえば訪問介護では、ヘルパーが自宅を訪問し、食事や入浴、排せつなどの身体介護や、掃除、洗濯、調理などの生活援助を行います。

通所介護では、デイサービスセンターなどの施設に通い、入浴、食事、レクリエーションなどのサービスを受けられます。

 

(2)の地域密着型サービスには、「小規模多機能型居宅介護」や「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」などがあります。小規模多機能型居宅介護は、通い、訪問、泊まりを組み合わせたサービスを、住み慣れた地域で受けられるのが特徴です。

認知症対応型共同生活介護は、認知症の方が少人数で共同生活をしながら、家庭的な環境のなかで介護サービスを受けられます。

 

(3)の施設サービスには、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」や「介護老人保健施設(老健)」、「介護医療院」などがあります。

特別養護老人ホームは、常時介護が必要で、自宅では介護が難しい方が入所する施設です。介護老人保健施設は、病状が安定し、リハビリに重点を置いたケアが必要な方が入所する施設です。介護医療院は、長期の医療と介護が必要な方が入所し、日常的な医学管理や看取り・ターミナルケア(緩和ケア)を受けられる施設です。

 

(4)の介護予防サービスは、要支援1、2と認定された方を対象に、居宅サービスや地域密着型サービスの“介護予防版”が提供されます。たとえば、介護予防訪問介護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防小規模多機能型居宅介護などがあります。

これらのサービスが1割の費用負担で受けられるというのは、介護が必要な方にとって大きな支えになります。

「1割負担といっても、頻繁に使うようになったら払えるだろうか」という心配もあるかもしれませんが、利用者負担には上限が設けられています。これを「高額介護サービス費」といい、所得に応じて上限額が設定されています。上限額を超えた分は、あとで払い戻されます。

また、施設サービスを利用する場合は食費と居住費(滞在費)は自己負担となりますが、低所得者に対しては食費・居住費の補助制度もあります。

介護保険サービスの利用者負担は、利用者の負担能力に応じて設定されており、過度な負担にならないよう配慮されているのです。

配信元: 幻冬舎plus

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