「東九歌舞伎町タワーアンダーグラウンド」歌舞伎町・半地下の裏カジノ。 要人たちも通い詰める“闇の社交場”|Z李

「東九歌舞伎町タワーアンダーグラウンド」歌舞伎町・半地下の裏カジノ。 要人たちも通い詰める“闇の社交場”|Z李

SNS総フォロワー100万人超のインフルエンサーであり作家のZ李さんの新刊『君が面会に来たあとで』が11月19日に発売されました。

歌舞伎町を生きる人々の葛藤や、人情味あふれる人間模様などを恋愛、ホラー、SFなど様々なタッチで描いたショートショート集。本作から、試し読みをお届けします。

 

どんな世界にも、どんな人間にも、表と裏があるものです。

歌舞伎町の地下にある「裏カジノ」そこには一体、どんな人たちが集まっているのでしょうか。

*   *   *

 

東急歌舞伎町タワーアンダーグラウンド

先輩に連れられて「東九歌舞伎町タワー」のエンターテインメント&レストランフロアに来ていた。

もちろん目的は飯を食う事でもなければ、人混みの中で酒を飲む事でもない。あの『ブレードランナー』みたいな世界観は嫌いではないけど、そいつを味わいに来た訳でもない。

目的はジェンダーレストイレ。いや、その一番奥の個室にある隠し扉を抜けた先、と言うのが正しいか。

にやにやしながら、先輩は人混みを掻き分けてトイレの方へと向かう。

「なんかよ、最近はちょっとシステムが変わっちまったんだよな」

目的のトイレへと到着するとガードマンの男が立っており、大便か小便かを質問してきた。

先輩によると、オープンから数日はガードマンなど常駐しておらず、隠し扉を知る者は質問もされずにその先へ進めたそうだが、いたずらなどもあったようでこの方式になってしまったとのことだった。

「中だ」

大便か小便かの質問への先輩の回答はこれだった。

中便ってなんだよって話になるけど、ガードマンは何かを察したかのように俺たちを案内する。

「今、他のお客様もいらっしゃいますので、捌けてからの入場をお願いします」

そう言うとガードマンは入口の方へと戻り、新たにジェンダーレストイレに入ってこようとする酔客を入場規制し始めた。

一人、二人、トイレの中にいた男女、もしくはLGBTの連中が捌けていく。最後に残った大便の客が糞を流すのを待って、一番奥の個室へと二人で入っていった。

「男二人でトイレ入ってよお、人に見られたらゲイかなんかだと思われるんだろうな?」

そんなことを言いながら、先輩はウォシュレットの流すボタンとビデのボタンを交互に小刻みに押し始める。

すると、壁にしか見えなかった右手のパーテーションが、自動ドアのように上に開いた。

下りの階段がある。

「あれ? 地下って事は、クラブに行っちゃうんじゃないですか? なんだっけ? 『ZENO TOKYO』だかなんだかって」

俺がそう聞くと、先輩はどこかの映画で見たような仕草で、ひとさし指を目の前に突き出して左右に振る。

「違うんだな、それが。ZENOとレストランフロアの間に、半地下みてえに隠しフロアがあるんだよ。まあ黙ってついて来いって」

階段を下りていくと、分厚い鉄板のドアの前にインターフォンがあり、先輩は手慣れた様子でそれを押した。

「こんちは。会員番号13242です。新規一名連れてきました」

ドアが開く。ついに目的の場所に入れることに俺は高揚感を隠せなかった。

 

そう、ここは欲望の街、歌舞伎町。

その象徴たる歌舞伎タワーの半地下に堂々と作られたのが、二千台規模の闇スロなのだ。

黒服に通りいっぺんのシステムの説明をされ、偽名でも構わないからと一応会員登録を済ませた。

ホールを見回すと、4号機は当たり前にあるし、3号機もあれば、最近の物だとスマスロ北斗まで置いてある。

レートは二十円から二百円がメイン。奥の一段床が高くなっているエリアには一枚二千円という高レート台のシマがあった。

「1枚二千円って百倍じゃないですか。えっ? じゃああの五千枚突破の札が差してある獣王って」

「そうだよ。一千万ってことになるな。あのホストは客から裏っ引きしてこの一週間ずっとあの台座ってた『グルダム』のやつだな。昨日台にしがみついて泣いてたからよく覚えてるよ」

「マジですか。でも一回転六千円ってなるとなあ。十万円で千円札一枚分しか回せないなんてなかなかきついですね」

さすがに初日でそんな大勝負をする訳にもいかない。何より設定状況すら分からないし、手堅くAタイプでも打つべきか。

初代HANABIがあった。これなら設定判別も利くんだけど、あの何枚手入れとかいう手法をすっかり忘れている。携帯は入口で預かられてしまったし、ネットで調べることもできない。

 

バカでかいホールを徘徊すると、なんと吉宗のボーナス後0Gやめの台を発見。しかし対面から俺と同じくそれを発見したであろう男が歩いてくる。

その刹那、まるであの頃を思い出すかのように素早くポケットからライターを取り出すと、アンダースローで下皿に投げ込んだ。

「悪いな兄さん」

舌打ちした男にそう伝えると、俺は天国に期待してレバーを叩き始めた。

久しぶりだな、この感覚。

吉宗がなくなったのはもう十七年も前だ。それなのにゾーンだけは覚えてるっていうんだから俺もどうにかしてるよな。

モード3であるならば、193Gまでに放出されるはず。

ここを超えちまったら次は400G~565G、その次が800G~965G、その先は1200Gからのゾーンもあるけど、4桁ハマったらもう大体天井なんだよな。

あの時もそうだった。遠征して6確定のアンコウ札が刺さった吉宗で天井まで連れていかれてさ。

ツレもパンクしてて次に音鳴らすか天国に入ってなかったらもう6捨てて帰るか、かなり久しぶりにカツアゲでもするかって、そんなピンチに追い込まれてたんだ。

懐かしい。そんなどうでもいいいくつもの思い出が頭の中を通り過ぎていく。目の前を忍者が走るたびに、障子がガタガタ動くたびに古い記憶が蘇っていた。

撤去以降、もちろん他の闇スロで吉宗を打ったことだってあるし、別にこいつに触るのが十七年ぶりってわけでもない。

でも、この東九歌舞伎タワーにある闇スロは、コインレスではないってところがポイント。

下皿で寂しくなった指をメダルに絡ませてカチャカチャしながら打っていると、どうしてもあの頃を思い出してしまう。

隣のおっさんはギシギシの木の葉積みで頭上にドル箱を積み上げている。まるでエスパーみたいに爆釣の二択を当て続けていて、ATが十回くらい継続していた。

爆釣やイレグイにそんなゴトはなかったはず。

あるのは、目の前のこいつのレバーにソレノイドの糸引っ掛けて俵を取るゴトだ。

羨ましそうにおっさんを見ながら回していると146Gに高確率演出。おそらくこれが駄目なら193Gもスルーだろう。

デカい家紋なんかも出てこないし、しばらくすると悪代官追っかけ演出へ。二連続で捕まえられず、復活演出で久しぶりにハーレーでも見たかったがそんな甘い話はなかった。ゾーン抜けでヤメ。

席を立つと、どこかのシマから歩いてきた先輩が俺の背後へと現れた。

「抜けたか。まあそんな簡単な台じゃねえからなそいつ」

「はい。でも思ったんですけど、この悪代官って一体何したんですかね? こんなに追っかけられて」

「そりゃおめえあれだろ? 千両箱持ってコソコソしてんだから賄賂とか? 何かの密売かもな」

「そうなんですかね? なんか俺、いきなりアヤつけられて追っかけ回されてたように見えて、あの二人が」

「バカだなあお前。パチスロの中の設定になんかいちいちケチつけてよ。ほら、息抜きにいいとこ連れてってやるよ」

 

先輩に連れられて、例の二千円台のコーナーを通り過ぎると、ドアの前に黒服が立っている曇りガラスの個室へと辿り着いた。

「なんすか? ここ。喫煙所?」

「まあ入れば分かるって。あ、13242です。これカードね」

黒服がリーダーのような物でそれを確認するとドアが開く。二重になっていたが二つ目のドアが開く前にすぐに気づいた。

ここが大麻のスモークルームだってことは、染み付いた甘い匂いから、経験者ならすぐに分かる。

「マジすか? こんな大がかりに賭場開くのもすごいけど、まさか草まで吸えるなんて」

「おいおい、コーヒーショップって言えよ。そっちのが、なんだかお洒落だろ?」

ホワイトウィドウ、ブルーベリー、少し懐かしいあの頃の銘柄から、ゴリラグルーにガールスカウトクッキー、まるでアムステルダムかカリフォルニアかってくらいに瓶に入れられた美しいバッズが陳列されている。

ベタにOGクッシュを先輩と一緒に巻いてもらおうと思ったが、カウンターの端で赤紫の細い髭が目立つ見たこともない品種を見つけた。

 

“東九・スカイウォーカー・OG”と書いてある。

 

「え? 先輩、東九って、マリファナも作ってるんですか?」

先輩はもう咳込んでいて、そんなのどうでもいい様子だった。東九って書いてあるならそうなんだろと興味も示さずに上部モニターのミュージックビデオを眺めていた。

「あ、あの。この“東九・スカイウォーカー・OG”ってやつください。いくらですか?」

そう聞くとスタッフから、店内の飲食や嗜好品は全て無料だと告げられる。マジかよ。確かにバカラ屋は酒タバコに飯は無料だけど、まさか草まで無料で出てくるとは。

一服、二服、深く肺に溜めて吐き出す。

これを繰り返してすっかりハイになった俺たちは、またホールへと繰り出す。

先輩は大花火のシマに向かった。俺は久しぶりに旋風の用心棒でも打ちたいなってね。さっき二百円のコーナーで見かけたんだ。

 

意気揚々と歩いていたその矢先に、事件が起きた。

「ぶっ殺すぞコラア」

椅子を振り回して、周辺の台どころかプレイヤーまで傷つけていたのは、先ほどまで二千円の獣王で五千枚出していたあのホストだった。

俺が吉宗でゾーンまで回して、それからあそこの部屋でチルして、長く見積もっても一時間半くらいか。

どう考えてもあの枚数は飲まれないのに、何考えてんだ?

「見りゃわかるだろ! このサバ連が終われば全部返せるんだ。ちょっと待て……触るな! うわあ!」

なんだあれ? 黒服と同じスーツは着ているが、どう考えても不良のツケウマみてえなツラしたのと押し問答をしている。

トラブルを聞き付けたのか、背後にはまた先輩がいた。

「あれ見たことあんだろ? 昔さくら通りの『セブン』って箱のケツモチしてたほら」

「あっ、○○組のYさんの舎弟の人?」

意味がわからない。なんでちょっと前までゴリゴリのヤクザやってたやつが、七三分けにして黒服やってんだ?

結局グルダムのホストは、その見たことがある不良と他数名に連行されていった。

俺は恥ずかしながらそのタイミングでその獣王の席に座り、店員を大声で呼んだんだ。

「なあ、あいつもう打てないんだろ? この台どうなんの? やりてえんだけどよ」

無理があるか。サバチャンの最中なんだもんな。でもダメ押しのクレジット精算ボタンは押した。

そして、下皿の全てをドル箱にカチ盛りしたんだ。

「さっきのやつ精算するなら、新規でこのまま打てるんでしょ?」

会員登録の際のルール説明、まあ、説明書なんかきっちり読み込むようなやつはここにはいないんだけど、たしか二ページ目の上の方に、当店には台の故障を除き打ち止め制度はありませんってのがあったんだ。

 

ホストがなんで連れていかれたのかは知らない。いや、気付かないようにしていたというのが正解か。

だって俺のデイトナの針はちょうどてっぺんを過ぎた頃なんだもんな。

そうしたらあれよ。ホストは早い金を摘まんでいて、その日付が過ぎたと同時に取り立てに囲まれたってことだ。その連中がこの歌舞伎タワーの裏フロアで堂々としているということは、東九と地場の組織は少なからず関係があるってところか。

獣王は、引き継いで打たせてもらえた。

絶対に潜伏してるって分かってたから、十万円のズクをバラしてサンドにぶちこんで五十枚。

マングースがちらちら出てくると思ったら、案の定すぐにサバチャンだ。

早押しすると1G増えるってのは分かってたけど、今の俺には無理だった。

諦めて、ゆっくりとあの頃を懐かしむようにリールを目押ししていると、先輩が肩を叩いてきた。

「なあ、あいつ覚えてるか?」

先輩が指をクイと指した先。コンチ4で、万枚出してる。しかも二百円の台。

そいつは新宿署のデカだった。万年巡査長だか警部補だかのやつで、北新宿で闇金やってた時に封筒渡してたあいつだ。

「うわ、デコも来てるんですね?」

そう言った俺に、またしてもどこかの映画で見たような素振りで、指を左右に振る先輩。

「バカだなあお前、その隣の隣のおばさん見てみろよ」

俺は目を疑った。

スーパービンゴでやたらと箱積んでる女が都知事だったんだからな。

焦りの中、残りゲーム数を確認しにいくと今863、ドル箱の数から考えても“4桁ふぅあ”したとしか思えない。

 

サバ連中の俺の台は、びっくりするくらいに順調に、出玉が伸びていく。ATも30Gにやけに片寄ってさ、このままずっと時間が過ぎればって、俺はそう思ってたんだ。気付けばもう五千枚。

1枚二千円の百倍レートだからもう一千万だぜ?

連れ去られたホストのカマ掘っただけなのに出来過ぎもいいところだよな。

さすがにもう終わるかなってところでBIGを引いては高確中に純ハズレを引いてしまう。

これ、ATあといくつ残ってるんだろう。

いつしかそんな状態に入っていた。あの頃もこういうことはあったな。数えられる程度しか経験しかないが、ゴルゴ13やコンチ、そしてこの獣王で、こういう閉店まで終わらないんじゃないか状態に入ったことはあった。

「うわ、すげえ出てんじゃねえかよ? 俺のアステカなんか八連続でCT入らねえってのによ」

先輩はCT機に行ってたんだな。アステカは当時衝撃的だったが、サボテンを目押しして現状維持する打法が疲れるもんで俺はそんなに打たなかった記憶がある。

「はい、でもハズレは引けてますが全部乗ってるわけもないと思うんで。まあ控えめに考えるとあと十個でもあればいいなってとこですかね」

「てかよお、なんかおかしいんだよな。あのデコのコンチ6だぜあれ。RUSH突入率でバレバレだもんよ」

「それって、あのデコが偶然6をツモったんじゃないってことです?」

「そうよ。都知事が4桁BCはヒキだと思うんだけど、あのデコいっつもドル箱積んでて、さすがにおかしいだろ」

聞くと、警察関係者、夜の街でのヒエラルキーが上の人間、座布団が上のヤクザなんかが高設定らしき台に座っていることが多いらしい。

裏カジノにありがちな、店のスタッフと客がレツになって所謂ヨコの仕事で店から抜いている雰囲気もないと先輩は言っていた。接待の類いなんじゃないかってね。

まああってもおかしくはないんだろうけど、コンチの6なんか分かりやすすぎる。そんなのに新宿署のやつが座ってたら先輩がそう勘繰るのも仕方のない話なのかもしれない。

「でもほら、俺の裏の南国もあれ6ですよ。単発か3連しかしないんだから鉄板です。あのガキは偶然座ったってことなんですかね?」

「そっか、お前知らねえもんな。あいつ『三径ビル』のオーナーの実子か何かよ。隣のおっさんも『ガリアン』とか『バソラ』やってる会社のお偉いさん」

まあこの大規模ホールだ。いくつかの高設定で枝客を流してくれそうなVIPだからなあ。

 

十年前くらいか。

もうやめたけど、先輩は一年くらいだけハードなポン中だった時期があって、あれから猜疑心が強くなった気がする。

隣でスマホをいじりだした先輩をちらっと見たらだよ、その夜に「お前今日俺が打ってたLINE見てただろ? 誰に見るように指示されたのか言え」なんてダルい電話を受けたこともあった。

 

「なんか、色々あるんでしょうね。こんな歌舞伎町の象徴みたいな場所で堂々とデカ箱できるんだから。さらにコーヒーショップもでしょ? 負けたやつがチンコロしたりとかありそうなのに」

そう聞くと、にやにやしながら先輩は語りだした。

絶対に言うなよ、と言いながら。

 

物は試しに、一度悪ふざけで通報してみたことがあるらしいのよ。そうしたら警察の出動なし。軽くいなされて終わったらしい。

次に、わざわざ署まで行って告発してみようとしたらしいんだけど、人がぞろぞろ出てきて、逆に身分証出せだの、人定のために写真撮らせろだのなって、嫌な予感がして撤収してきたそうだ。

 

「そんなこと言ってもなあ。どこまで対策しても今の時代、隠しカメラで撮影してXやインスタにあげるやつとかいません? 隠しきれるもんじゃないような」

「それがよ、ここの写真、アップするとネットからはすぐ消されるんだよ。十秒とかだぜ? さらにそれをやったやつは街から消えてる」
またか、先輩の陰謀論。ずっと前にもあったんだよな。ファニチキは遺伝子操作された六本足の鶏から取れてるとかそういうの。

 

マングースが走り、ライオンが出てくる。

肉を食べつくしてA、それが出る前に俺はボタンを叩いて、当然の如く始まるサバンナチャンスを消化していた。

そろそろ七千枚。

いつしか昔の勘が戻ってきて、俺はサバチャンを高速消化するようになっていた。

そうだった、中・右と色押しして最後に左を目押しするのが俺のスタイルだった。

BIGが適度に絡んで万枚を過ぎたあたりでストックはついになくなった。

これ、本当に換金できるのかな? だとしたら、マジかよ。こんなことあっていいのか?

先輩に報告に行かないとと思って席を立つと、ちょうどこちらに向かっていた先輩と目が合った。

しかしどうにも様子がおかしい。

「なあ、言ってくれよ! この店を邪魔する気なんて俺はなかったよなあ?」

「あの、なんの話ですか?」

「だから、さっきよお、この店のことをSNSにあげるとすぐ投稿が消されるって言ったろ? あれをお前に見せてやりたかっただけなんだって! お前からも言ってくれよ」

冷たい目をした黒服が、腕を掴む。

「さあ、他のお客様の迷惑になります」

「離せ! いなくなったやつら知ってんだぞ!」

 

じゃあなんで規約を守らなかった――

 

誰かが小声で言った。

腕を振りほどいて走って逃げた先輩はマングースのようだった。そして、黒い服を着たライオンは、すぐにそれを捕獲して別室へと連れ去っていった。

 

「あの、俺のメダル、換金お願いしてもいいですか?」

「もちろんです。秘密を守る限り、あなたはお客様なのですから」

 

紙袋に詰めた二千万は、一週間くらいでなくなった。ビギナーズラックで得た金なんて、そうそう残らない。

先輩の携帯は解約されていた。

俺に残ったのは、ポケットに隠して持って帰ってきた、東九・スカイウォーカー・OGの燃えかけのジョイントだけ。

 

「まあ、結局こんなもんだよな」

焚こうとしてるとチャイムが鳴る。

「はい。あれ、宅急便?」

「お客様、持ち出し禁止品を持ち帰っていますね?」

 

黒服たちは、冷たい目でモニターを覗きこんでいる。

パチンコ、パチスロを遊戯する人々 96908246

配信元: 幻冬舎plus

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