背景の「くすんだ色」が語るもの
ブルーナカラーは6色と紹介しましたが、目をこらしてみると、ミッフィーたちを彩る色と背景の色とでは若干トーンが異なることがわかるでしょう。例えば、背景の空はややくすんだ、穏やかな表情の青色が使われるなど、背景はくすんだ色が使われています。
もし、背景にも鮮やかな色を使ってしまうとどうなるでしょうか。それぞれが主張することで、絵全体が硬い印象になり、刺激が強くなります。ブルーナは、子どもの視覚的な感受性を深く意識していたといわれており、背景にはくすんで穏やかな色を使いました。
少しトーンを落とした背景色は、主役であるミッフィーの鮮やかな服の色を美しく引き立てます。このやさしい色調もブルーナの子どもたちへの配慮といえるでしょう。
色に込められたメッセージ
『くんくんとかじ』、ディック・ブルーナぶん/え、まつおかきょうこやく、福音館書店
絵本では登場人物の表情やセリフなどで子どもたちに感情を伝えますが、ブルーナカラーは色そのものが子どもたちに語りかけます。6色それぞれにメッセージが込められており、赤色は喜び、黄色は温かさや楽しい気持ち、緑は安心感や安らかな気持ち、青色は悲しみや静けさをそれぞれ表しているのです。
残りの茶とグレーは、ブルーナがどうしても必要になって加えた2色です。子犬のスナッフィーを描く際は茶が使われ、グレーはゾウやネズミなどの動物を描くときに使われています。
メッセージと聞くとなにか教訓めいたものを連想してしまいますが、ブルーナは生前「私は教えようとしていない。感じてもらいたい」と語っていたそうです。ブルーナカラーを通して、子どもが「うれしい」「かなしい」「安心した」といった感情を自分自身の心の中に発見します。
ミッフィーの表情がいつも同じように見えるのも、子どもたちの感受性に委ねたいという彼のポリシーと深く関わっています。ミッフィーが多くを語らないのは、その物語を完成させるのがページをめくる読者自身だからです。
読者はミッフィーの心に自分の気持ちを重ね合わせ、自分だけの物語を紡いでいきます。この「伝えすぎない」という哲学もまた彼の作品の特徴といえます。
