子煩悩で家族思いの夫との結婚生活を楽しんでいた主人公。親になった自覚からパチンコをやめた夫ですが、ほんの暇つぶしのために始めたスマホゲームに熱中してしまいます。
「この人と結婚してよかった」と思っていた
私はえみ、31歳。専業主婦として、夫の亘と5歳の娘・みずほ、2歳の息子・そらと穏やかな日々を送っている。夫は33歳。子煩悩で、子どもたちの笑顔のためなら何でもする人。家事は全く手伝ってくれないけれど、子どもたちを心から愛してくれている。
その姿を見るだけで、私は「この人と結婚してよかった」と何度も思ってきた。
実は、結婚前は少し困った癖があった。週末になるとパチンコ屋に入り浸り、時折「ごめん、今月ちょっとピンチで」と頭を下げてくる。でも、みずほが生まれてからは一切やらなくなった。
「もう子どもができたんだから俺は変わるよ。家族のために頑張る」と宣言した通り、本当にギャンブルをやめてくれた。仕事にもより一層熱心になったし、子どもと遊ぶときは時間を忘れるほどだった。だから、私は安心してこの人に人生を預けられたんだ。
「ちょっとした暇つぶし」それが始まり
でも、今年の春から、そのバランスは少しずつ崩れ始めた。きっかけは、夫が同僚に勧められて始めたスマホアプリ。最初は「ちょっとした暇つぶし」だったはずなのに、いつしかそれは彼にとって生活の一部になっていた。
リビングで遊ぶどもたちに「遊ぼう」と無邪気に話しかけられても、「ちょっと待って」と言いながら画面から目を離さない。食卓でも、携帯が手放せない。夜中にふと目を覚ますと、隣には夫の姿はなく、リビングのソファーでゲームに夢中になっていた。
最初は、そこまで気にしていなかった。またいつものように飽きてくれるだろう、と軽く考えていた。
「ねぇ、そのゲーム、そんなに面白いの?」
私が尋ねると、彼は顔を上げずに「うん、結構。やり込み要素が多くて」と答えた。その声は、どこか夢中になっている子どものようで、私は微笑ましくさえ感じていた。ところが、夫は徐々に課金まで始めた。最初は数百円、次に数千円。そして、あっという間にその額は膨らんでいった。
「ガチャを引かないと先に進めないんだ」
「この強いキャラがいないと、イベントで勝てないからさ。みんなもどんどん課金してるし」
夫が少額だから大丈夫というけれど、私の胸中にははっきりとした不安が生まれていた。そしてしばらくしたある日、ふとネット銀行の残高を見ていて驚愕した。なんと、子どもたちの将来のために貯めていた貯金にまで課金のために手を付けていたのだ。私は頭が真っ白になった。

