「ペットボトルに含まれるマイクロプラスチック」は健康に影響するのか 研究の見解を医師が解説

「ペットボトルに含まれるマイクロプラスチック」は健康に影響するのか 研究の見解を医師が解説

コンコルディア大学の研究員らは、ペットボトルなどの使い捨てプラスチック製飲料ボトルに含まれるナノ・マイクロプラスチックの健康影響を検討したレビュー論文を発表しました。研究では、人々が年間に数万個のマイクロプラスチックを摂取しており、ペットボトル飲料水を日常的に飲む人では、その数が最大約9万個多くなる可能性が示されています。今回は、この研究内容について浅川先生にお話を伺いました。

浅川 貴介

監修医師:
浅川 貴介(医師)

【経歴】
2004年私立海城高等学校卒業
2010年私立東邦大学医学部卒業医師免許取得
2012年公益財団法人日産厚生会玉川病院
2016年東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科
2018年医療社団法人七福会ホリィマームクリニック
2022年浅川クリニック
【免許・資格】
・医学博士
・日本内科学会総合内科専門医
・日本腎臓学会腎臓専門医
・日本透析医学会透析専門医
・労働衛生コンサルタント(保健衛生)
・東京都福祉局認定難病指定医

研究グループが発表した内容とは?

編集部

コンコルディア大学の研究員らが発表した内容を教えてください。

浅川先生

今回紹介する論文は、有害物質および環境科学分野で国際的に評価の高い学術誌「Journal of Hazardous Materials」に掲載されたレビュー論文です。本論文では、ペットボトルなどの使い捨てプラスチック製飲料ボトルに含まれるナノプラスチックおよびマイクロプラスチックが、人の健康や生態系に与える慢性的な影響について包括的に検証しています。著者らは、141件を超える既存の科学論文を精査し、ボトル入り飲料水を通じたNMP曝露の実態とリスクを整理しました。

ナノプラスチックやマイクロプラスチックは体内に取り込まれる可能性が指摘されていますが、多くは消化管を通過し体外に排出されると考えられており、体内にどの程度残留するのかは明確ではありません。ボトル入り飲料水を日常的に飲む人は、水道水を主に飲む人と比べて、最大で約9万個ほどの粒子を摂取している可能性があると報告されています。ただし、これらは粒子数の推計であり、体内への吸収率や健康影響との直接的な関係については不明な点が多いとされています。一方で、文献間ではナノプラスチックおよびマイクロプラスチックの粒子数やサイズに大きなばらつきがあり、粒子の物理的特性に関する情報も十分とは言えない現状が明らかになっています。

この論文によると、ナノプラスチックやマイクロプラスチックは体内に取り込まれる可能性があり、一部の研究では、動物実験や細胞実験の結果から、呼吸器系や生殖機能、神経系への影響、さらには発がんリスクとの関連が指摘されることもありますが、これらが人で同様に起こるかどうかは現時点では明らかではありません。測定手法や評価基準が統一されていないため、健康影響を正確に評価することが難しいという課題も指摘されています。

ペットボトル以外の摂取源はあるのか?

編集部

ペットボトル以外にも、ナノプラスチックやマイクロプラスチックが含まれている可能性のあるものには、どのようなものがあるのでしょうか?

浅川先生

ナノプラスチックやマイクロプラスチックは、ペットボトルに限らず、私たちの身の回りのさまざまなものを通じて食品に含まれる可能性があります。プラスチックは包装材だけでなく、繊維製品や家庭用品、建材など幅広く使われており、環境中に蓄積されたプラスチックが時間とともに細かく分解されることで、土壌や水、大気を汚染します。こうした環境汚染の影響により、食品が栽培・飼育される過程で、食塩や海産物、飲料水、乳製品などに微細なプラスチック粒子が含まれることが報告されています。

一方で、現時点の科学的証拠では、食品中で検出されるレベルが健康リスクをもたらすとは示されていません。過度に不安を抱くのではなく、正確な情報を知り、日常生活では環境への配慮を意識した行動を心がけていきましょう。

配信元: Medical DOC

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