研究内容への受け止めは?
編集部
コンコルディア大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
浅川先生
今回のレビュー論文は、ナノプラスチックおよびマイクロプラスチックへの曝露の実態を整理し、現時点で分かっていることと、今後明らかにしていくべき課題を示した点で、意義のある研究だと受け止めています。特に、私たちが日常的に口にしている飲料水や食品を通じて、無意識のうちにこうした物質に接触している可能性があるという視点は、環境問題と健康を考える上で重要だと思います。一方で、医師の立場から見ると、現時点では、食品や飲料から摂取されるナノ・マイクロプラスチックが、ヒトに明確な健康被害を引き起こすと示した臨床的なエビデンスは十分ではありません。多くの報告は動物実験や細胞実験、あるいは環境中での検出データが中心であり、実際にヒトの健康にどの程度影響するのかについては、今後の長期的な研究の蓄積が必要だと考えます。そのため、この研究結果だけをもとに過度に心配する必要はありませんが、プラスチックとの付き合い方や、環境への配慮を改めて考えるきっかけとして受け止めることは大切でしょう。日常生活では、現実的にできる範囲で環境負荷を減らす選択を心がけつつ、今後の研究動向を冷静に見守っていく姿勢が重要だと感じています。
編集部まとめ
今回紹介したレビュー論文では、使い捨てプラスチック製飲料ボトルを含む日常生活の中で、私たちがナノプラスチックやマイクロプラスチックにさらされている可能性があることが示されました。一方で、現時点では食品や飲料中に検出されるレベルが、直ちに健康リスクをもたらすと断定できる科学的根拠は十分ではありません。過度に不安になるのではなく、正しい情報を理解したうえで、環境への配慮や日常の選択を見直すことが大切と言えるでしょう。

