
玄関に飾るしめ飾りにはじつにさまざまな種類があり、どれを選べばいいか迷ってしまいますよね。「ハデなものを飾るほうが新年らしくて華やか」「いや、飾りすぎないほうが厳かな感じが出るな」など、売り場で悩む人も多いはず。そこで、「現代礼法研究所」主宰の岩下宣子先生に、しめ飾りを選ぶ際のポイントをうかがいました。
シンプルなデザインのほうがお正月らしい神聖さが漂う
古くから、神社では神域を示すためにしめ縄を張り巡らせてきました。昔の家庭でも、家の行事を取り仕切る家長が、正月になると家の入り口にしめ縄を張っていたものです。
やがてその風習は簡略化されるようになり、現在ではしめ縄に縁起物をあしらった「しめ飾り」を、玄関などに飾る形へと変わっています。
「しめ飾りは、清浄な場を好む年神様に『この場所は清らかで神聖です』とお伝えするための印です。ですから、飾りすぎないシンプルなデザインが最適でしょう」と岩下先生は話します。
そうはいっても、しめ飾りにもひとつくらいは彩りを添えたいもの。
それなら“本物の松”がおすすめです!
「松は神様が降りてくる際のアンテナの役割を果たすため、本物の松を使ったものは玄関飾りにぴったりです」
最近は、インテリアとしても映えるおしゃれなしめ飾りも増えているので、お正月を過ぎたあとは室内の壁に飾って楽しむのもいいでしょう。
一方で、新年はお客様も多いし、にぎやかにお祝いしたいから、しめ飾りにも華やかさがほしいという方もいますよね。
そういう場合は、前垂れ(わらの垂れ)をつけたり、裏白・譲り葉・橙といった縁起のよい植物や、扇、海老などの吉兆モチーフをあしらったしめ飾りにするのもOKです。
ちなみに、岩下先生ご自身がよく選ぶのは、伊勢地方に伝わる『蘇民将来(そみんしょうらい)』のしめ飾りだそうです。

「蘇民将来」とは、須佐之男命(スサノオノミコト)を助けたとされる人物に由来する飾りで、年神様をお迎えする意味のほか、邪気払いとか無病息災の願いも込められています。
このため伊勢地方では、一年中このしめ飾りを掲げている家庭も少なくないとか。
こうした地域に代々伝わる伝統的なしめ飾りも素敵ですね!
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現代のしめ飾りは形もデザインも多彩です。よく神棚に飾られる、縄をねじってごぼうのような形にした「ごぼうじめ」、太いしめ縄を輪にして前垂れや縁起物をつけた「玉飾り」など、一般的なスタイルのものだけでなく、モダンな洋風リースタイプも人気です。お正月を前に、あなたはどんなしめ飾りを選びますか?

教えてくれたのは…
▶岩下宣子先生
「現代礼法研究所」主宰。NPOマナー教育サポート協会理事・相談役。30歳からマナーの勉強を始め、全日本作法会の故・内田宗輝氏、小笠原流・故小笠原清信氏のもとでマナーや作法を学ぶ。現在はマナーデザイナーとして、企業、学校、公共団体などで指導や研修、講演会を行う。『40歳までに知らないと恥をかく できる大人のマナー260』(中経の文庫)、『相手のことを思いやるちょっとした心くばり』(三笠書房)など著書多数。近著に『77歳の現役講師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』(主婦の友社)。
文=高梨奈々

