抗がん剤で髪の毛が抜けない人の特徴とは?メディカルドック監修医が解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「抗がん剤で髪の毛が抜けない人」の特徴はご存知ですか?医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
鎌田 百合(医師)
千葉大学医学部卒業。血液内科を専門とし、貧血から血液悪性腫瘍まで幅広く診療。大学病院をはじめとした県内数多くの病院で多数の研修を積んだ経験を活かし、現在は医療法人鎗田病院に勤務。プライマリケアに注力し、内科・血液内科医として地域に根ざした医療を行っている。血液内科専門医、内科認定医。
「抗がん剤」とは?
抗がん剤とは、がん細胞の増殖を抑える効果が期待できる薬のことを言います。抗がん剤は、細胞障害性抗がん剤(狭義での抗がん剤)、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の3つに分けられます。中でも細胞障害性抗がん剤は、細胞が増殖する仕組みの一部を阻害することで、がん細胞を攻撃する薬です。そのため、がん以外の正常な細胞にも影響が出てしまうことが多いです。副作用として、吐き気や食欲低下、口内炎、下痢、脱毛、しびれなどがみられることがあります。
がんに対して抗がん剤を使用して治療を行う場合、これらの薬剤を組み合わせて治療する場合が多いです。治療に伴い、どのような副作用がみられるかはこの抗がん剤の組み合わせにより異なります。今回は細胞障害性抗がん剤で多くみられる脱毛を解説します。
抗がん剤で髪の毛が抜けない人の特徴
抗がん剤の種類や投与量・方法
抗がん剤の中でも免疫チェックポイント阻害薬単独・分子標的薬単独の使用では、脱毛は比較的起こりにくいです。しかし、細胞障害性抗がん剤治療と組み合わせているときや頭部への放射線治療と組み合わせているときには起こります。
また、細胞障害性抗がん剤の中でも脱毛の副作用が出やすい薬剤があります。例えば、タキサン系薬剤(ドセタキセル・パクリタキセルなど)というグループに属する抗がん剤では80%以上、抗トポイソメラーゼ薬(ドキソルビシンなど)では60~100%、アルキル化薬(シクロホスファミドなど)では60%以上で脱毛を生じやすいです。代謝拮抗薬(フルオロウラシルなど)では10~50%程度です。脱毛を起こしやすい薬剤を組み合わせて治療を行った場合には脱毛を生じる割合は高くなり、症状も重症化します。
総合的には、細胞障害性抗がん剤治療を受けている方の少なくとも65%、分子標的薬治療を受けている方の15%、免疫療法単独では2%未満、頭部放射線治療の患者さんのほぼ100%でこうした脱毛が発生します。
頭皮冷却による治療
頭皮冷却療法は、化学療法の前、治療中、治療後に専用のキャップをかぶり頭皮を冷やします。頭皮を冷却することで頭皮の血流を減少させて毛母細胞への細胞障害性抗がん剤の影響を少なくし、脱毛の抑制効果を期待するものです。「頭部冷却システムDigniCap Delta」
「Paxman Scalp Cooling システムOrbis」の2種類のシステムが製造承認されています。
副作用は、頭痛や寒気による不快感などです。この治療は、現在のところ保険が適応されておらず高額、受けられる施設も限られています。また、頭皮冷却療法の脱毛抑制効果について、蓄積されたエビデンスがありガイドラインで推奨のある疾患は乳がんのみです。
個人差
同じ抗がん剤を使用しても、脱毛の副作用があるかどうかや、その重症度には個人差があります。一般的に脱毛を起こしやすい薬剤を複数組み合わせて治療を行った場合や、そうした薬剤で長く治療を続けた場合には脱毛を生じる割合は高くなり、頭皮への影響も大きくなるといえます。

