
12月22日に最終回を迎えた「シナントロープ」(テレビ東京系)。水上恒司演じる冴えない大学生・都成剣之介をはじめとする若い男女8人の群像劇であり、考察サスペンスであり、ヒューマンドラマであり、ファンタジーであり、ラブストーリーであり、「ダーウィンが来た!」(NHK)のような野生生物ドキュメンタリーでもあった、とにかく見応えのある素晴らしい連ドラの正しい最終回に称賛の声が続出している。
考察ドラマといえば、同クールには間宮祥太朗と新木優子がW主演した「良いこと悪いこと」(日本テレビ系)があり、こちらのほうが何かと話題になっていたが、「シナントロープ」と比べてしまうと「シンプルでわかりやすい作品」だと思う。それなのに最終回で伏線回収せずに終わったのだから、批判の声があがるのも致し方ないだろう。
「シナントロープ」では、伝説のバンド「キノミとキノミ」でボーカルを務めていた、いつもオレンジ色の目出し帽を被って顔を隠し続けていたクルミが、考察班の考察通りに石崎ひゅーいが演じていたことが最終回前話で判明したことで、最終回の歌声には「得しちゃった感」まで味わえたし、「影の主役」と言われていた「りゅうちゃんときゅうちゃん」ことクロオウチュウのような龍二(遠藤雄弥)とアホウドリのような久太郎(アフロ)の友情には泣かせてもらった。久太郎が死んでも「泣かない」と笑っていた龍二の涙は、折田(染谷将太)に理解することはできないだろう。
キバラオオタイランチョウのように見えていた水町ことみ(山田杏奈)が、実はイエスズメにそっくりな「とんでもない人」だったことには背筋が寒くなったし、ハシビロコウこと志沢匠(萩原護)の観察眼と考察力には度肝を抜かれた。
太い実家を持つカラフトフクロウと水町(山田)に例えられた陰キャの里見奈々(影山優佳)が、ペンネーム「田丸アオバト」としてマンガを描き続けている田丸哲也(望月歩)と交際継続していることは嬉しくなったし、演じている役としてではなく、「中の人」である望月自身が「気に入っていた」との疑惑があると水上が明かしていた、奈々(影山)からポコポコ殴られるシーンは、「最終回直前!徹底深掘りスペシャル」の動画で再視聴させてもらったが、もう1度しっかり視聴してニヤニヤさせてもらいたい。
赤いモヒカンにしていたアンデスイワドリに似た塚田竜馬(高橋侃)は髪を切って就職したから安心したが、水町から「友だち」と言われて涙した、ストレスから自毛を抜くベニコンゴウインコと同じように自傷行為をくり返す室田環那(鳴海唯)が美容師になった姿を見ても、安心することはできなかった。ドラマの中で鳴海が、スタントなしでマンション13階(という設定)からロープで降りていたことを後で知り、あの緊迫感はリアルだからこそだったんだと納得した。
お調子者で楽天家に見えるキバタンこと木場幹太(坂東龍汰)の壮絶な過去を思うと、最終回で見せた不敵な笑みがどうにも気になる。まさか折田(染谷)に代わって裏の代行業を始めていたりしないよね?と誰もが胸をざわめかせているのではないだろうか。
瞬間記憶能力のある都成(水上)が、5歳の時に車のナンバーを覚えていたことで逮捕されたひき逃げ犯が、折田の父・啓三だったことがわかる「新聞記事(キジ)を読むラストシーン」では、都成の記事の隣に、5歳だった水町が、閉じ込められていた家から救出されたという記事が掲載されていることを知った時に受けた衝撃は、おそらく都成と視聴者はほぼ同じだったように思う。
都成が呟く「都成の隣…」の余韻とスズメと思しき鳴き声でドラマの幕は下り、そこに流れるエンディング曲、S.A.R.の「MOON」が心地よくて痺れた。
ドラマ公式サイトには「Blu-ray BOXが2024年4月22日(水)発売決定!」と掲載されている(12月23日17時時点)が、誰か「2026年の間違いだ」と言ってくれ!
(森山いま)
