「最近、生理のたびに強い痛みを感じる」「年々、痛みがひどくなってきた気がする」このような症状がある場合、子宮内膜症という病気が関係しているかもしれません。子宮内膜症の悪化には女性ホルモンが関係しており、閉経まで進行し続けることが多い病気です。したがって、症状の悪化を防ぐために、早期に適切な治療を受けることが大切です。この記事では、子宮内膜症の基礎知識をはじめ、主な症状や治療法、治療中に気を付けたいポイントを解説します。

監修医師:
森 亘平(医師)
2019年浜松医科大学医学部医学科卒
[職歴]
2019年4月〜2021年3月仙台厚生病院初期臨床研修医
2021年4月〜12月石巻赤十字病院産婦人科
2022年1月〜2023年6月八戸市立中央市民病院産婦人科
2023年7月〜2024年3月東北大学病院産婦人科
2024年4月〜2025年3月宮城県立こども病院産科
2025年4月〜東北大学病院産婦人科/東北大学大学院医学系研究科博士課程
[資格]
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
厚生労働省指定緊急避妊薬の処方にかかるオンライン診療研修修了
厚生労働省指定オンライン診療研修 修了
JCIMELSベーシックコースインストラクター
[所属学会]
・日本産科婦人科学会
・日本周産期・新生児学会
・日本超音波学会
・日本人類遺伝学会
・日本産科婦人科遺伝診療学会
・日本DOHaD学会
・日本医療安全学会
子宮内膜症とは

子宮内膜症とはどのような病気ですか?
子宮内膜症とは、本来、子宮の内側のみに存在するはずの子宮内膜の組織が、卵巣や腹膜、腸など子宮以外の場所(異所性)に増殖してしまう病気です。異所性にできた子宮内膜組織は、月経の周期によって女性ホルモンの影響を受け増殖・消退を繰り返すことで、さまざまな症状を引き起こします。発症しやすい年代は20~30代の女性です。ピークは30~40代とされ、生殖年齢女性の約10%が罹患するといわれています。
参照:『子宮内膜症』(公益社団法人日本産婦人科学会)
参照:『子宮内膜症』(一般社団法人日本内分泌学会)
子宮内膜症の原因を教えてください
子宮内膜症のはっきりとした原因は、解明されていません。 免疫異常や遺伝的な体質など、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。発症の仕組みについてはいくつかの仮説がありますが、そのなかでも代表的なのが月経血の逆流説です。通常、月経の際には、経血が膣を通って体外に排出されます。その際、約90%の女性において、少量の月経血が卵管を通じて腹腔内(お腹の中)に逆流していることが確認されています。このとき、逆流した月経血の中に含まれる子宮内膜組織が、骨盤内の臓器や腹膜に定着することで、子宮内膜症が発症するのではないかと考えられています。
ほかにも、別の細胞が子宮内膜組織のように変化する説(化生説)や、血液やリンパを通じて子宮内膜組織がほかの場所に運ばれる説(転移説)など、複数の説が提唱されています。
参照:『子宮内膜症』(一般社団法人日本内分泌学会)
子宮内膜症の症状と将来への影響

子宮内膜症の主な症状を教えてください
子宮内膜症の主な症状は、痛みです。子宮内膜症がある方のおよそ90%が、月経時の下腹部痛や腰痛(生理痛)を訴えています。痛みは主に20〜30代で発症し、時間の経過とともに悪化する傾向にあります。痛みの強さは、一般的に閉経後、エストロゲン(女性ホルモン)の分泌の減少に伴って軽減します。
子宮内膜症が悪化すると月経周期によらず、慢性的な骨盤痛が生じることもあります。
参照:『子宮内膜症』(公益社団法人日本産婦人科学会)
子宮内膜症による生理痛と通常の生理痛に違いはありますか?
はい。子宮内膜症による生理痛と通常の生理痛にはいくつかの違いがあります。まず、子宮内膜症による生理痛は、通常の生理痛に比べて痛みの程度が強いといわれています。子宮内膜症の方の約20%は、鎮痛薬を用いても痛みをコントロールできないとの報告があります。痛みの持続時間にも違いがあります。通常の生理痛は月経開始直後から始まって数日で治まります。一方で、子宮内膜症による痛みは、月経開始前から始まり、月経が終わった後も続く場合もあり、強く長い痛みが続きます。もちろん痛みの程度や長さには個人差があります。
参照:『産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2023』(公益社団法人日本産婦人科学会)
子宮内膜症が進行するとどのような症状が現れますか?
子宮内膜症が進行すると、痛みの頻度や範囲が広がります。初期は月経時の下腹部や腰痛などが中心ですが、進行すると腰・肛門など広範囲に痛みが及びます。また、月経期だけでなく、排便時や性交時にも痛みを感じるようになるといわれています。
子宮内膜症を治療しない場合に起こりえる将来への影響を教えてください
まず、大きな影響の一つが痛みの慢性化です。子宮内膜症が進行するにつれて、月経期以外にも下腹部痛や腰痛が生じるようになり、日常生活に支障をきたすほどの強い痛みとなることもあります。次に、不妊のリスクも見逃せません。子宮内膜症を放置すると、卵巣や卵管、子宮の周囲で癒着が進行し、正常な排卵や受精、着床の妨げになり、不妊症の確率が上がります。
さらに病状が進行すると、卵巣にチョコレート嚢胞(のうほう)と呼ばれる古い血液を含んだ腫瘍ができることがあります。チョコレート嚢胞は月経に伴い少しずつ腫大し、破裂や感染を起こすリスクを高めます。加えて、約1%の確率でチョコレート嚢胞ががん化する可能性も報告されています。
参照:『卵巣チョコレート嚢胞とは?』(公益社団法人日本産婦人科学会)

