大腸カメラ検査、苦痛軽減のポイント
編集部
ほかに、大腸カメラの苦痛を軽減する方法はありますか?
伊藤先生
「軸保持短縮法」という内視鏡の挿入方法があります。大腸は、クネクネと曲がりながら動いているため、カメラをそのまま進ませてしまうと腸管の粘膜が内側から押されて苦痛を感じます。こうした問題点を解決するのが軸保持短縮法で、腸管を極力伸ばさないようにカメラを進めていくので、より苦痛なく安全な内視鏡検査が可能です。
編集部
ほかには何かありますか?
伊藤先生
近年注目されている挿入法に「浸水法(サブマリン法)」があります。従来の大腸カメラ検査では、腸内に二酸化炭素などのガスを注入して膨らませながらカメラを進めますが、浸水法では空気の代わりに水を注入することで、腸の伸展が少なく、体への負担も軽減でき、鎮静剤の使用量も少なくて済むと言われています。たとえば当院のように「浸水法」と「軸保持短縮法」を併用し、かつ鎮静剤を使うことで、検査時の苦痛が大きく軽減されると考えられます。
編集部
検査前の処置も大変だと聞きます。
伊藤先生
従来は、検査前には消化管の中をきれいにするために、1〜2Lと大量の下剤を服用しますが、最近は下剤の選択肢も増え、医療機関によっては楽な下剤の服用ができることもあります。
編集部
大腸内視鏡検査を受ける医療機関を選ぶポイントはありますか?
伊藤先生
やはり内視鏡専門医のいる施設がよいと思います。医療機関のHPなどで「内視鏡専門医」がいるかを確認してから受診しましょう。専門医の中でも、内視鏡指導医であればさらに安心です。また、苦痛をできるだけ軽減したい人は、検査に鎮静剤が使えるか、「軸保持短縮法」および「浸水法」での検査ができるか、下剤の選択肢はあるか、などを確認するのもよいでしょう。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあればお願いします。
伊藤先生
大腸カメラは非常に重要な検査で、ごく早期のがんを含めると、約1割の人にがんが見つかったというデータもあります。がんになる前のポリープの段階で発見・切除することが、将来的な予防につながりますし、早期のがんであれば、ポリープと同じように検査中に切除することも可能です。がんが進行してしまうと、お腹を開いて腸を切除・再接合するような大がかりな手術が必要になることもありますので、とくに家族に大腸がんの既往がある人は、自覚症状がなくても定期的に大腸カメラを受けることが大切です。また、大腸は曲がりくねった構造のため、病変の発見には検査をおこなう医師の技術が大きく関わります。検査を受ける際は、医療機関選びにも注意しましょう。
編集部まとめ
大腸カメラは、大腸がんやポリープなどを早期に発見するために非常に有効な検査です。鎮静剤を使用することで、痛みや不安を軽減することができ、検査を受けやすくなります。定期的に検査を受けることで、健康リスクを減らし、早期発見・早期治療につながります。気になる症状がある人や、これまでに一度も大腸カメラを受けたことのない人は、まず医師に相談してみましょう。

