極寒の北極圏をともに生き延びた! 探検家の孤独な船旅を支え、成功に導いた三毛猫

極寒の北極圏をともに生き延びた! 探検家の孤独な船旅を支え、成功に導いた三毛猫

北極への冒険に子猫が同行

フィヨルドを背景にたたずむ三毛猫

画像はイメージです

米国出身のAlvah Simonさんは、1990年代から2000年代にかけて世界各地でさまざまな探検を続けてきた冒険家です。

彼の次の目標は、北極圏の氷に囲まれながら、小型帆船で長い冬を過ごすことでした。2年かかって冒険に最適な全長12メートルの船「Roger Henry号」を見つけたAlvahさんは、1994年6月にパートナーのDiana Whiteさんとともに米国メイン州を出港したのです。

物資の調達のためカナダのハリファックスに立ち寄った2人は、地元の市場で2匹の子猫に出会いました。1匹は穏やかで愛らしく、もう1匹はシャーシャーとまわりを威嚇し人を引っ掻く、小悪魔のような三毛猫でした。彼らは荒々しいほうの猫を、「ベッドで体を温めてくれるペット」かつ「ホッキョクグマを見つけてくれる監視員」として引き取ることにし、Halifaxと名付けました。

しかしこの猫が船上で最初にしたことは、爪で海図を引き裂き、寝床におしっこをすることでした。航海の途中で上陸すると、猫は何度も逃げ出してしまい、そのたび追いかけなければなりませんでした。

あるときは岸へのジャンプに失敗し、氷のように冷たい海の中に落ちてしまったこともあります。引き上げたときには寒さとショックで震えていました。しかもこの猫は「クマ探知機」としてあまり役に立ちませんでした。初めてホッキョクグマが船に近づいたときは、ずっと眠っていたのですから!

孤独なチャレンジを救ったのは猫

ライフジャケットを着て船に乗る猫

画像はイメージです

10月6日、バイロット島の湾に停泊して越冬していたとき、ニュージーランドにいるDiana さんの父親が「末期がんで余命3ヵ月だ」と無線連絡がありました。苦渋の決断を迫られた彼女は、一時帰国することにしたのです。しかしAlvahさんはこのまま冒険を続行することを決めました。こうしてHalifaxが、彼を助ける唯一の一等航海士へと昇進しました。

その後の数ヵ月間、さまざまな危機に直面しました。おまけに11月3日以降は陽が昇らず、まわりは24時間漆黒の闇でした。Alvahさんはときに錯乱状態に陥ることまであったのです。さらに北極に着くまでに予想以上に燃料を消費してしまったため、節約のために灯をつけずに何日も過ごすこともありました。

薄暗い中で読書をしすぎたAlvahさんは、一時的に目が見えなくなる経験もしました。ある朝目が覚めると足が完全に凍りつき、寝袋の中で氷に覆われていたことまであったのです。

暖房のない船室は氷のように冷たかったため、Halifaxは寝袋の中に深く潜り込んだままでした。猫が出てくるのは、Alvahさんが凍ったミルクを解凍する音が聞こえてくるときだけです。たちまちHalifaxは驚くほど痩せ細ってしまいました。用意していた燻製肉を食べようとしなかったからです。そこで彼はパンをバターとツナ缶オイルに浸して与えました。Halifaxはこれが気に入ったようで、体重は少しずつ戻り始めたのです。

一方でHalifaxはAlvahさんと一緒に氷の上を歩くのが大好きで、疲れたり足が冷たくなったりすると、彼の肩によじ登ったり、着ているパーカーの中に潜り込んだりしていました。彼にとって、このかわいい猫がいることで精神的な均衡を保つことができ、厳しい冒険を生き延びる力を維持することができたのです。

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