17ヵ月におよぶ冒険を終える

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翌年3月、2人のイヌイットがスノーモービルでやって来て、新鮮な肉と手紙を届けてくれました。Diana さんが戻ってくるという知らせです。そして数週間後、彼女は大きなディーゼル缶と、15kg分のキャットフードを持って船に到着しました。
少しずつ氷が溶けてきたため、Halifaxは船外へ出て遊ぶようになりました。毛をふくらませ、不気味な叫び声を上げてホッキョクギツネを追い払い、満足げな表情で喉を鳴らしながら船に戻ってきました。
船が氷におおわれていたとき、猫はトイレを氷の上ですませていたものの、溶けてくると小舟に乗せて連れ出し、近くの浜辺で用を足す必要があります。大声で鳴いてもだれも小舟を出してくれないときは、勝手に流氷に跳び下りてしまうので、そのあと人間たちが小舟で助けに行くことも何度かありました。
そして1995年8月、目的を達成した船は南へと出発しました。彼らは高緯度北極圏の静寂と野生動物とのふれあいを体験することに成功し、約17ヵ月もの冒険を終えたのです。
虹の橋を渡った最愛の猫

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その後も2人と冒険の旅をつづけたHalifax でしたが、2009年6月に虹の橋を渡りました。Alvahさんは次のように記しています。
「最愛の友であり、乗組員であり、冒険仲間だったHalifaxが亡くなりました。これからわたしたちもこの船も、猫のいない空虚な日々に耐えなければなりません。この猫は、わたしがもっとも必要としたときに、頼りになる友として支えてくれました。暗闇と孤独のなかで耐えられなかったとき、この猫がそばにいなかったらどうなっていたことでしょうか…?」
「北極探検のあとの数年間、この猫とわたしたちは何度も長い航海を楽しみました。パナマで巨大なワニに遭遇したことや、夜間に船外へ転落したこともありました。狭い帆船の中でDianaと口喧嘩したときは、猫が仲裁役を務めてくれました。この15年間、わたしたちが外出先から船に戻るたびに、Halifaxはへりに座って待っていました。出かけていたことに抗議する鳴き声を上げたあとは、歓迎でゴロゴロのどを鳴らしていたのを思い出します」
「ことばではいい表せない感謝を捧げます。Halifaxはわたしの命を救ってくれた…いまでもそう信じています」

