社員が泳ぐ “心地いい水” をつくる

株式会社ほぼ日 代表取締役社長 小泉絢子さん
学生の頃からほぼ日でアルバイトを始め、2001年入社。ほぼ日手帳の開発を担当する。取締役、副社長を経て2025年11月に社長に就任
「今日、総務のことを話せる機会をいただいたのが嬉しくて。皆本当にいい仕事をしているんですよ」。取材の数日前に糸井重里さんからバトンを受け継いだばかりの小泉社長は、自分のこと以上に弾んだ声で、社員の仕事ぶりを話しました。「ほぼ日手帳」をはじめ、多くの人気コンテンツを世に生み出してきた、ほぼ日。今や150名を超える社員が、まだ10名にも満たなかった頃。糸井さんは社員に「椅子だけは、良いものを選ぼう」と言ったそう。
小泉「創業して間もなく、まだ売上もあまりない時期に、高価なオフィスチェアを皆の分揃えようと言ったんです。びっくりしました。でも、今思えば糸井の思いやりでした」
毎日腰を下ろす椅子は、社員の働く環境そのもの。そこに投資をしようと決めた想いは今、「ケアチーム」と呼ばれるほぼ日の総務に、大切に受け継がれています。

社長の小泉絢子さんの両隣は人事総務企画室ケアチームの加納めぐみさん、木村桃子さん。ケアチームは、お客様の受付も担当。オフィスに流れる心地いい雰囲気は、入口で迎える社員の笑顔から始まっています
小泉「日々、ケアチームの仕事に支えられています。夏の暑い日、彼らは誰よりも先に会社に来て、オフィスを冷やしておいてくれるんです。こまめに窓を開け、空気を入れ替えたり、手洗いの石けんを、ちょっといい香りのものに替えてくれたりね」
会社を回すためというよりも、心地よく過ごすための気遣い。それが自然にできるのが、ほぼ日のケアチームなのです。
小泉「会社が水槽なら、大切なのは魚よりも『水』を飼うことだと糸井は話しています。1人ひとりをマネジメントするより、心地いい環境を整えることで、会社はよくなっていくと。ケアチームが思いやりのある仕事をしてくれているから、“いい水”ができているんだと思います」
いい水の中で、思いやりは循環するもの。ケアチームの日々の仕事に目を向け、感謝を伝える社風があるのも、ほぼ日らしさです。

小泉「自分以外の社員の仕事に興味と敬意を持ちなさい、と昔から糸井に言われてきました。今日もオフィスが綺麗なのは、誰かが掃除してくれているから。そこに思いを馳せる想像力は、お客様へコンテンツを届ける仕事においても、とても大切なものだと思っています」
ほぼ日が、なぜ「ほぼ日」なのか。華やかな舞台の裏側を支える総務の仕事には、その答えが詰まっているように感じます。
小泉「何においても、まずは人です。合理的になりすぎず、お客様と社員を大事にしながら、コンテンツをつくっていく。このやり方でも成長できるんだということを、これからも示していきたいと思っています」
心地いい椅子に腰掛け、小泉さんはこれからを力強く語りました。

