あの、初著書となる“哲学書”を上梓「読んでほしくないと思うほど大事なことを書けた」

あの、初著書となる“哲学書”を上梓「読んでほしくないと思うほど大事なことを書けた」

初の哲学書『哲学なんていらない哲学』を上梓したあの。
初の哲学書『哲学なんていらない哲学』を上梓したあの。

アーティスト活動5周年を迎え、2025年9月には自身初となる日本武道館公演を開催。音楽活動にとどまらず、ジャンルの垣根を越えて活躍の幅を広げ、エンターテインメントの最前線を走り続ける、あの。クリスマスイブの12月24日(水)に、彼女の頭の中をさらけ出した全編書き下ろしの著書『哲学なんていらない哲学』が発売された。本書に綴られているのは、過去と対峙し、現在を見つめる中で生まれた、前例やルールに縛られないむき出しの言葉たち。なぜ今、あのは筆を執ったのか。そして「哲学書」という形式を選んだ真意とは。唯一無二の感性で時代を駆け抜けるあのが、今この瞬間に踏みしめている“現在地”とその思いを語った。

■「否定」の中にこそ、本質がある

——今回、ご自身の考えや希望で企画が進んだと伺いました。なぜこのタイミングで「哲学書」を書こうと思ったのでしょうか?

あの: きっかけや理由はあまりなくて、ただ純粋に「書きたい」と思って書きました。今まで本を書きたいと明確に意識したことはなかったのですが、初めてそう思えたんです。きっと、その「書きたい」という感情がずっと続くものかはわからない。この本の中でも書いているように、感情というのは一定ではなく、どんどん変わっていくものです。だからこそ、そう思った今の瞬間に書いておこうと思いました。

——『哲学なんていらない哲学』というタイトルは非常に印象的です。ここにはどのような想いが込められているのですか?

あの: そもそも僕も哲学のことなんてあまり知らないし、「〇〇なんて」という、ちょっと否定的な言葉を言われることが僕は多いんです。同時に、僕自身もそう言っちゃっている時がある。ぶっちゃけ「哲学なんてなくても生きていけるでしょ」と思っているし、ずっと思ってきました。

でも、そういう考えで生きている根底にも、やっぱり哲学ってどうしても存在しているんですよね。自分では気づかないうちに、何かしらの哲学の元で生きているという感覚が僕自身の中にあって。

だからこそ、「哲学なんて」って思っている人にこそ読んでほしくて、このタイトルにしました。そういう否定をする場所にも、もう既に哲学があると思っているからです。

——実際に1冊を書き下ろしてみて、今の心境はいかがですか?
あの: 今回は割と、新しいことを書こうとは思っていなかったんです。冒頭で言ったように、当たり前なこととか、周りからしたらどうでもいいようなことを「どうでもよくない」と言いたいために書いた部分もありました。

今まで持っていた考えを記しているつもりだったのですが、やっぱり書いていくうちに「自分はこういう考えなんだな」とか「こういう思いなんだな」というのが結構整理できたり、気づけたりしましたね。そういう意味では救われるというか、思考がどんどん整理されて研ぎ澄まされていく感覚はありました。
【写真】初の哲学書『哲学なんていらない哲学』を上梓したあの。
【写真】初の哲学書『哲学なんていらない哲学』を上梓したあの。

■過去の痛みと向き合い、脳を使い分ける苦しみ
——執筆作業は大変な道のりだったと思います。苦労された点や、逆に楽しかったことはありましたか?

あの: うわー、苦しさと楽しさ……。でも今回は、苦しさの方が大きかったかもしれないです。やっぱり哲学というか、自分の考えや思考を書く上で、過去のことを遡ったり、思い出したくないことも思い出したりするという作業があったので。それに加えて、過去だけじゃなく「今、自分がどう思っているか」も書かなくちゃいけない。

自伝だけだったら、そこからどういう考えを持ったかというところまでは詳しく書かないと思うんですけど、今回は哲学書なのでプラスアルファでそこも必要になる。書いていて「意外と使う脳みそが違うかも」って思いました。

思い出すこともすごく辛かったし、さらに違う脳みそを使うことが結構あって。すごく書きたいことが頭にあっても、言葉にする順番とかが自分の言い方だとぐちゃぐちゃになっちゃうんです。それを自分自身で整頓する作業も大変でしたね。

——今作にはどのような想いを込められたのでしょうか。執筆を通してご自身の変化などはありましたか?

あの: 以前は「ブレない方がいい」と思っていたし、昔はあまりにもブレなさ過ぎたところがありました。でもこの数年で、「自分らしさ」においてブレないことももちろん大事だけど、その自分らしさに縛られないためには、もっと自分を知ることが必要だと気づいて。
気分が変わることすらも受け入れられること、それを知った上が、やっぱり一番自分らしくいられるなって。そう気づけたから、自分の考えのバリエーションが増えたというか、流動的になったなと一番感じました。

ただ、書き終えてみて、なんかあんまり読んでほしくないなとも思っています(笑)。書く前はあんなに書きたいと思ったのに、いざ書き終わってみると、書いたからこそ読まれたくなくなってしまって。でも、そういう気持ちになる予感もすごくしていました。それぐらい大事なことも書けたのかな、と思います。

■教科書ではなく、自分を見つめるきっかけに
——普段の音楽活動における「作詞」と、今回の「執筆」で表現の違いは感じましたか?

あの: そうですね。歌詞や歌はやっぱり結論に至らなくていいというか、割と抽象的に書く部分も多かったりするし、言葉の遊びや面白さもあります。でも今回の本の場合は、すごく自分がどう思ったかというところとか、日常から得て感じたことを結構ストレートに書きました。そこの違いはあったかなと思います。

——次回作を作るとしたら、どんな作品を作りたいですか?

あの: 今書きたいと思ったものを書いたから、次はどうとかはないんですけど……もし書くってなったら、今回は哲学書だったので、次はちゃんと自伝だったりとか、エッセイみたいなジャンルがいいのかなって思っています。最初に哲学書を書いちゃったので、結構まだ書ける題材もたくさんあるので、やったみたいと思ったらやろう……みたい感じです。

——ご自身で物語を作ったり、主人公を作ったりする表現方法についてはいかがでしょう?

あの: 小説ってことですか? ……絵本はめっちゃ描いてみたいですね。

——最後に、この本をどのような人に届けたいですか?

あの: 本とか読まない人や、哲学とか難しいことをあまり理解しない人——僕がそうなんですけど、そういう人が読むきっかけになるといいなと思います。楽しみにしている人へ伝えたいのは、この本を教科書だったり参考書とかにする必要はないということ。ただ、自分なりの哲学を見つめるきっかけになるといいなと思っているので、興味がない人でもぜひ読んでみてほしいです。

あの、初の哲学書『哲学なんていらない哲学』(税込2,420円/KADOKAWA刊)は現在発売中。

あの初の哲学書『哲学なんていらない哲学』書影
あの初の哲学書『哲学なんていらない哲学』書影

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